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自分用のメモです。

同種造血幹細胞移植における,強度減弱前処置と骨髄破壊的前処置の比較。長期フォローアップの結果。

Long-term efficacy of reduced-intensity versus myeloablative conditioning before allogeneic haemopoietic cell transplantation in patients with acute myeloid leukaemia in first complete remission: retrospective follow-up of an open-label, randomised phase 3 trial.

Lancet Haematol. 2018 Apr;5(4):e161-e169. doi: 10.1016/S2352-3026(18)30022-X.

 

背景

同種造血幹細胞移植(HCT)の前処置の強度がもたらす影響を調べるため,第1寛解期の骨髄性白血病患者を対象に,強度を減弱した前処置と骨髄破壊的前処置を比較する第3相試験を実施した。元々の試験はフォローアップ期間が短かっため,強度を減弱した前処置が骨髄破壊的前処置と比較して晩期再発のリスクが高まるか否かについては不明だった。この疑問に取り組むため,著者らはこの試験の10年間の後方視的フォローアップを行い,晩期再発に焦点を当てた。

 

方法

オリジナルのランダム化第3相試験は,18歳から60歳までの,中間リスクまたは高リスクに該当する急性骨髄性白血病患者のうち,適切な臓器機能が保たれ,HLAが9/10以上合致した同胞または非血縁ドナーから移植可能な患者を対象とした。

患者はランダムに1:1の割合で,フルダラビン 120 mg/m2+TBI 2 Gy x 4 (強度減弱前処置)またはシクロフォスファミド 120 mg/kg + TBI 2Gy x 6 (骨髄破壊的前処置)のいずれかのレジメンに割り付けられた。この研究のprimary efficacy endpoint,secondary efficacy endpointは既に論文化されている。

今回の後方視的長期フォローアップでは,各参加施設からのmedical reportと,医師,患者へのインタビューからデータを集めた。今回の解析におけるendpointは,累積再発率,全生存率,無病生存率,非再発死亡率とし,オリジナルの研究参加者全体についての解析と,HCT後12ヶ月時点で再発なく生存していた患者を対象としたランドマーク解析を行った。イベント発生率はintention-to-treat populationに基づいて計算し,Gray testで比較した。この試験はClinicalTrials.gov, number NCT00150878.に登録された。

 

結果

オリジナルの研究では,195人の患者がランダムに強度減弱前処置(n = 99)または骨髄破壊的前処置(n = 96)のいずれかに割り付けられた。今回の後方視的解析では,データは完全なフォローアップに近い形で収集できた(completeness index 99%)。生存患者のフォローアップ期間中央値は9.9年(IQR[四分位範囲] 8.5-11.4)で,研究を完遂できた集団における累積再発率は両群で一致していた(強度減弱前処置群 30% [95% CI 20〜39] vs 骨髄破壊的前処置 30% [21〜40]; Gray test p = 0.99)。再発までの期間の中央値は強度減弱前処置群で5.0ヶ月(IQR 3.0〜8.8)だったのに対して,骨髄破壊的前処置群では9.5ヶ月(4.5〜20.5)だった。10年時点での無病生存率は強度減弱前処置群で55%(45〜66),骨髄破壊的前処置群で43%(34〜55),ハザード比(HR)は0.76(0.51〜1.14; p = 0.19)だった。また,非再発死亡率は16%(8〜24)と26%(17〜36)で,subdistribution HRは0.60(0.32〜1.11; Gray test p = 0.10)だった。TBIに関連した長期毒性は同等で,二次発癌が強度減弱前処置94人中6人(6%)と骨髄破壊的前処置90人中5人(6%)でみられた(p = 1.00)。

 

考察

強度減弱前処置が骨髄破壊的前処置比べて晩期再発のリスクを増やすというエビデンスはない。オリジナルの研究において,強度減弱前処置群が早期死亡や毒性の低さと関連していたことを考慮すると,適度にTBIを減弱した強度減弱前処置は,60歳未満で第1寛解期に移植を受ける急性骨髄性白血病患者に対する好ましい前処置戦略である可能性がある。

 

FUNDING:
None.

 

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未治療の進行期濾胞性リンパ腫に対するリツキシマブとレナリドミドの併用療法

Rituximab plus Lenalidomide in Advanced Untreated Follicular Lymphoma.

N Engl J Med. 2018 Sep 6;379(10):934-947.

背景

リツキシマブと化学療法の併用は,治療歴が無い進行期の濾胞性リンパ腫に有効であることが示されている。それにもかかわらず,ほとんどの患者が再発してしまう。レナリドミドとリツキシマブの併用は低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫患者に対して有望な効果を示した。

方法

著者らは,多施設共同国際第3相試験を実施し,治療歴の無い濾胞性リンパ腫患者を対象に,リツキシマブとレナリドミドの併用療法の,リツキシマブと化学療法に対する優越性を評価した。患者は2つのレジメンのいずれかに無作為に割り付けられ,引き続きリツキシマブ単剤による維持療法を受けた。リツキシマブとレナリドミドによる治療はこの2剤で18サイクル行われ,引き続きリツキシマブによる維持療法が8週間毎に12サイクル(6サイクルの追加投与)行われた。リツキシマブと化学療法の併用治療は,3種類のリツキシマブ併用レジメンから参加研究者が選択したものを実施し,その後で引き続きリツキシマブ単剤による維持療法を8週間毎に12サイクル行った。プライマリーエンドポイントは120週時点での完全奏功(confirmedまたはunconfirmed)と無増悪生存とした。

結果

合計1,030人の患者が,リツキシマブ+レナリドミド(513人)またはリツキシマブ+化学療法(517人)のいずれかにランダムに割り付けられた。120週時点での完全奏効率は両群で差がみられなかった: リツキシマブ+レナリドミド群 48% (95%信頼区間[CI],44 - 53),リツキシマブ+化学療法群 53%(49 - 57) (P=0.13)。3年時点での無増悪生存率は77%(95% CI 72 - 80),78%(74 - 82)だった。有害事象のうち,リツキシマブ+化学療法群で頻度が高かったのはgrade 3または4の好中球減少(32% vs 50%)と全gradeの発熱性好中球減少症(2% vs 7%)で,リツキシマブ+レナリドミド群で頻度が高かったのはgrade 3または4の皮膚反応(7% vs 1%)だった。

結論

治療歴のない濾胞性リンパ腫患者において,リツキシマブとレナリドミドの併用は,リツキシマブと化学療法の併用と類似した効果を示した。安全性プロファイルは両群で違いがみられた。

(Funded by Celgene; RELEVANCE ClinicalTrials.gov numbers, NCT01476787 and NCT01650701 , and EudraCT number, 2011-002792-42 .).

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小児の急性ITPに対する免疫グロブリン静注と経過観察の比較試験

Intravenous immunoglobulin vs observation in childhood immune thrombocytopenia: a randomized controlled trial

(Blood. 2018;132:883-891)

PMID: 29945954, doi: 10.1182/blood-2018-02-830844

免疫性血小板減少症immune thrombocytopenia (ITP)と診断した小児の対応には,注意深い経過観察か,免疫調整療法immunomodulatory treatmentがある。観察研究の結果,免疫グロブリンを静注投与(IVIg)した小児では慢性ITPのリスクが低くなることが示唆されている。

今回の多施設共同試験では,新たにITPと診断された小児(生後3ヶ月から16歳まで)のうち,血小板数が2.0万/μLで,出血の程度が軽度から中等度までの患児をランダムに2群に割り付け,一方の群には0.8 g/kgの免疫グロブリンを静注で単回投与し,もう一方の群は慎重に経過観察した。プライマリアウトカムは慢性ITPへの移行とし,6ヶ月後以降も血小板数が15万/μLの状態を慢性ITPと定義した。

206人がIVIg群(n = 102)または慎重経過観察群(n = 104)に割り付けられた。慢性ITPはIVIg群の18.6%,経過観察群の28.9%でみられた(relative risk [RR], 0.64; 95% 信頼区間 [CI], 0.38-1.08)。12ヶ月時点で血小板数が10万/μL未満(現在の慢性ITPの定義)だったケースはIVIg群の10%,経過観察群の12%でみられた(RR, 0.83; 95% CI, 0.38-1.84)。3ヶ月以内の完全奏功率はIVIg群の方が有意に高かった。両群ともに,IgGのFc受容体IIbの遺伝子変異が早期の完全奏功と関連していた。グレード4または5の出血は経過観察群で9%,IVIg群で1%にみられた。

 

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リツキシマブと濾胞性リンパ腫の形質転換リスクとの関係

Rituximab and the risk of transformation of follicular lymphoma: a retrospective pooled analysis.

(Lancet Haematol. 2018 Aug;5(8):e359-e367.)

PMID: 30078408 DOI: 10.1016/S2352-3026(18)30090-5

 

背景

濾胞性リンパ腫からアグレッシブリンパ腫への形質転換は,患者の予後に重大な影響を及ぼす深刻なイベントである。Aristotle studyの目的は,リツキシマブが形質転換とその予後に及ぼす影響を評価することである。

方法

ヨーロッパの11の共同グループや施設が今回の研究にデータを提供した。1997年1月2日から2013年12月20日までの間に濾胞性リンパ腫(grade 1, 2, 3a)と診断された18歳以上の患者を適格とした。first lineの治療後に起きた最初のイベントが生検によるアグレッシブリンパ腫との診断だった場合を,形質転換と定義した。主要評価項目は形質転換の累積ハザードと転換後の生存とした。

結果

濾胞性リンパ腫患者10,001人について情報が利用可能であり,このうち8,116人が解析可能だった。509件の形質転換が報告された。追跡期間の中央値は87ヶ月(range 1–221; 2.5–97.5th percentile 5–160)で,形質転換の10年間累積ハザードは7.7% (95% CI 6.9–8.5)だった。リツキシマブを投与された患者における10年間累積ハザードは5.2% (95% CI 4.5–6.2)で,投与されていない患者では8.7% (7.2–10.6),ハザード比は0.73(95% CI 0.58–0.90; p=0.004)だった。また,導入療法でのみリツキシマブを投与された患者では5.9%(95% CI 5.0–7.0),導入療法と維持療法でリツキシマブを投与された患者では3.6%(95% CI 2.3–5.5),ハザード比は0.55(95% CI 0.37–0.81; p=0.003)だった。この結果は多変量解析でも確認された(P=0.016)。形質転換した509人中287人の死亡が記録されており,形質転換後の10年生存率は32%(95%CI 26-38)だった。形質転換後の生存に関して,リツキシマブを投与されなかった患者,導入療法でのみ投与された患者(HR 0.94, 95% CI 0.69–1.28; p=0.70),導入療法と維持療法で投与された患者(0.96, 0.58–1.61; p=0.88)の間に差はみられなかった。

考察

リツキシマブを使うことで,最初のイベントとしての形質転換のリスクを減らせる可能性がある。今回の結果は,現在リツキシマブを使っている患者に対して,リツキシマブ導入前と比較して形質転換のリスクが低くなっていることを伝える必要があるということを支持する。

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PETの結果に基づいたアグレッシブ非ホジキンリンパ腫の治療に関する第3相試験

Positron Emission Tomography–Guided Therapy of Aggressive Non-Hodgkin Lymphomas (PETAL): A Multicenter, Randomized Phase III Trial

PMID: 29750632, DOI: 10.1200/JCO.2017.76.8093

目的

[18F]fluorodeoxyglucoseをトレーサーに用いたinterim positron emission tomography (PET)は,アグレッシブ非ホジキンリンパ腫患者の治療結果を予測できる可能性がある。著者らは,PETがCHOPで治療される患者の治療方針をガイドできるかどうかを評価した。

患者と方法

新たにCD20陽性リンパ腫と診断され,R-CHOPを2サイクル受けた患者にPETを行い,ΔSUVmax法で評価した。PET陽性患者は,6サイクルのR-CHOPを追加する群または強力なバーキットリンパ腫プロトコールを6ブロック受ける群のいずれかにランダムに割り付けられた。PET陰性のCD20陽性リンパ腫患者は,R-CHOPを4サイクル追加する群またはR-CHOPを4サイクル追加しさらにリツキシマブを2回追加投与する群のいずれかにランダムに割り付けられるか割り当てられた。主要評価項目は無イベント生存で,ログランク検定で評価した。

結果

治療を受けた患者862人のうち,interim PETが陽性の患者は108人(12.5%),陰性の患者は754人(87.5%)で,無イベント生存と全生存に統計学的有意差があった。PET陽性患者のうち,52人はR-CHOP群に,56人はバーキットプロトコール群に無作為に割り付けられ,2年時点での無イベント生存率はそれぞれ42.0% (95% CI, 28.2% to 55.2%)と31.6% (95% CI, 19.3% to 44.6%),ハザード比は1.501 (95% CI, 0.896 to 2.514); P = .1229だった。バーキットプロトコール群では毒性が有意に多かった。PET陰性患者754人のうち,255人がランダムに割り付けられた(R-CHOP群に129人,R-CHOPとリツキシマブ追加群に126人)。無イベント生存率は76.4% (95% CI, 68.0% to 82.8%)と73.5% (95% CI, 64.8% to 80.4%)で,ハザード比は1.048 (95% CI, 0.684 to 1.606); P = .8305だった。PETによる予後予測は,International Prognostic Indexと独立していた。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫における結果は,全体の結果と類似していた。

結論

interim PETはR-CHOPで治療されたアグレッシブリンパ腫患者の予後を予測していた。PETに基づいた治療強化は結果を改善しなかった。

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再発・難治性骨髄腫患者に対するポマリドミド、デキサメタゾン、ダラツムマブの併用療法

Daratumumab plus pomalidomide and dexamethasone in relapsed and/or refractory multiple myeloma.
Blood. 2017 Aug 24;130(8):974-981.

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2種類以上の前治療歴があり、直近の治療が効かなかった再発・難治性の多発性骨髄腫の患者を対象に、ポマリドミドとデキサメタゾンの併用(pom-dex)にダラツムマブを加えたレジメンを評価した。ダラツムマブ16 mg/kgを推奨されたスケジュールで投与し、ポマリドミド 4 mg/日を28日毎に21日間、デキサメタゾン 40 mgを週1回投与した。主要評価項目は安全性とした。全奏功率(ORR)と、次世代シークエンスにより評価した微小残存病変(MRD)を副次評価項目とした。


患者(N=103)の前治療歴の中央値は4(range 1〜13)で、76%は3種類以上の治療を受けていた。ダラツムマブとpom-dexの併用に関する安全性はpom-dexだけで治療した場合と差がなかったが、例外としてダラツムマブに特異的な投与関連反応が50%でみられ、好中球減少の頻度も高かったが感染症の頻度は上昇しなかった。grade 3以上の有害事象で頻度が高かったのは好中球減少(78%)、貧血(28%)、白血球減少(24%)だった。全奏功率は60%で、サブグループ間で差はみられなかった(2剤抵抗性患者における奏功率は58%)。完全奏功以上の治療効果が得られた17人中29%は10^-5の閾値でMRDが陰性であり、治療効果の持続期間は中央値に達しなかった(95%信頼区間 13.6ヶ月〜未到達)。観察期間の中央値は13.1ヶ月で、無増悪期間の中央値は8.8ヶ月(95% CI 4.6〜15.4)、全生存期間の中央値は17.5ヶ月(13.3〜未到達)だった。推定の12ヶ月生存率は66%(55.6〜74.8)だった。


好中球減少を除いて、ダラツムマブとpom-dexの併用の安全性は個々の治療と変わらなかった。複数の治療歴がある患者においても、深く、持続する治療効果が認められた。

腎障害を伴った再発・難治性の多発性骨髄腫患者におけるポマリドミド+低用量デキサメタゾン併用療法

Pomalidomide Plus Low-Dose Dexamethasone in Patients With Relapsed/Refractory Multiple Myeloma and Renal Impairment: Results From a Phase II Trial

J Clin Oncol 2018

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目的
腎障害(renal impairment; RI)は再発・難治性骨髄腫(RRMM)患者における治療の選択肢を制限する。今回、著者らは、中等度から重度のRI(血液透析を受けている患者を含む)があるRRMM患者を対象に、ポマリドミドと低用量デキサメタゾン(LoDEX)の併用療法を前方視的に研究した。

患者と方法
MM-013試験はヨーロッパにおける非比較第2相試験であり、3つの患者コホートを組み入れた: 中等度RI(コホートA; 推定糸球体濾過量 30〜45 mL/min/1.73m^2); 重度RI(コホートB; 推定糸球体濾過量 < 30 mL/min/1.73m^2)、重度RIで血液透析が必要(コホートC)。患者にはポマリドミド(4 mg/日、day1〜21)とLoDEX (20 mgまたは40 mg、週1回)を28日毎に投与した。主要評価項目は全奏功率とした。

結果
登録患者は81人(コホートA 33人、B 34人、C 14人)で、13人はデータ登録終了時点(2017年1月28日)でまだ治療を受けていた。全奏功率は順に39.4%、32.4%、14.3%で、効果の持続期間は14.7ヶ月、4.6ヶ月、コホートCは推定不能だった。重要なこととして、それぞれ100%、79.4%、78.6%の患者で骨髄腫のコントロールができた。観察期間の中央値は8.6ヶ月で、全生存期間の中央値は16.4ヶ月、11.8ヶ月、5.2ヶ月だった。complete renal responseはコホートAの18.2%においてのみ確認され、コホートCの患者は全て透析から離脱できなかった。grade 3または4の血液学的な治療関連有害事象と、治療関連有害事象によるポマリドミド投与中止の発生頻度はコホートCが高かった。ポマリドミドの薬物動態について、3つのコホート間で有意な差はみられなかった。

結論
ポマリドミド 4 mg/日と低用量デキサメタゾンの併用は中等度から重度のRIがあるRRMM患者に対して有効であり、RIがより重度で血液透析が必要な患者にも有効だった。安全性は3コホートいずれにおいても許容可能で、新しい安全シグナルはみられなかった。

未治療の骨髄腫患者に対するダラツムマブ、ボルテゾミブ、メルファラン、プレドニゾンの併用療法 (第3相試験)

ダラツムマブdaratumumab(ダラザレックス®)は、日本では2017年9月に承認されたばかりの新薬で、今のところ再発・難治性の多発性骨髄腫に適応があります。

 

Daratumumab plus Bortezomib, Melphalan, and Prednisone for Untreated Myeloma
N Engl J Med 2018;378:518-528

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背景
ボルテゾミブ、メルファラン、プレドニゾンの併用療法は自家幹細胞移植の適応が無い未治療の多発性骨髄腫患者における標準的な治療法である。ダラツムマブは、再発または治療抵抗性の多発性骨髄腫患者における標準的な治療レジメンとの併用で有効性が示されている。

方法
今回の第3相試験において、著者らは新たに多発性骨髄腫と診断され幹細胞移植の適応が無い患者706人をボルテゾミブ、メルファラン、プレドニゾンだけの治療(対照群)とダラツムマブを併用した治療(ダラツムマブ群)に無作為に割り付け、骨髄腫が増悪するまで治療を継続した。主要評価項目は無増悪生存率とした。

結果
事前に計画されていた中間解析の時点における観察期間の中央値は16.5ヶ月で、18ヶ月時点での無増悪生存率はダラツムマブ群で71.6%(95%信頼区間[CI] 65.5〜76.8)、対照群で50.2%(43.2〜56.7)だった(骨髄腫増悪または死亡に関するハザード比 0.50; 95% CI 0.38〜0.65; p < 0.001)。全生存率はダラツムマブ群で90.9%、対照群で73.9%(p < 0.001)で、完全奏功以上の効果がみられた率は42.6%と24.4%だった(p < 0.001)。ダラツムマブ群の22.3%では微笑残存病変(基準は白血球105個あたり腫瘍細胞が1個)が陰性で、対して対照群で陰性だったのは6.2%だった(p<0.001)。grade3または4の有害事象のうち頻度が高かったのは血液学的なもので、好中球減少(ダラツムマブ群39.9%、対照群38.7%)、血小板減少(34.4%、37.6%)、貧血(15.9%、19.8%)があった。grade 3または4の感染症はダラツムマブ群で23.1%、対照群で14.7%でみられた。各群の0.9%、1.4%で感染症のため治療が中止された。ダラツムマブに関連した投与関連反応は27.7%で発生した。

結論
新たに多発性骨髄腫と診断され幹細胞移植の適応が無い患者において、ダラツムマブとボルテゾミブ、メルファラン、プレドニゾンの併用療法はダラツムマブを併用しない治療と比較して骨髄腫の増悪または死亡のリスクを減らした。ダラツムマブを併用したレジメンはgrade 3または4の感染症と関連していた。

 

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再発または治療抵抗性のマントル細胞リンパ腫患者に対するacalabrutinibのシングルアーム、多施設共同第2相臨床試験

Acalabrutinib in relapsed or refractory mantle cell lymphoma (ACE-LY-004): a single-arm, multicentre, phase 2 trial

Lancet 2017

 

背景
ブルトン型チロシンキナーゼはマントル細胞リンパ腫の臨床的に妥当な治療ターゲットである。acalabrutinib (ACP-196)は高い選択性を持つブルトン型キナーゼ阻害剤であり、他の分子に対する活性を最小化するように開発された。

方法
今回のオープンラベル第2相試験では、再発または治療抵抗性のマントル細胞リンパ腫患者に経口のacalabrutinib(100 mg,1日2回)を投与し、リンパ腫が増悪するか許容できない毒性が出現するまで投与を継続した。主要評価項目はルガノ分類に基づいた全奏功率し、全参加者について安全性の解析も行った。

結果
2015年3月12日から2016年1月5日までの間に124人の再発または難治性マントルリンパ腫患者が登録され、全ての患者が治療を受けた。年齢の中央値は68歳だった。前治療歴の中央値は2(IQR 1-2)だった。観察期間の中央値は15.2ヶ月で、治療が奏功した患者は100人(81%)で、完全奏功を達成した患者は49人(40%)だった。カプランマイヤー法による奏功持続期間、無増悪生存期間、全生存期間の推定値はいずれも中央値に達しなかった。12ヶ月時点での奏功持続率、無増悪生存率、全生存率はそれぞれ72%(95% CI 62〜80)、67%(58〜75)、87%(79〜92)だった。有害事象で頻度の高かったものは主にgrade 1または2で、頭痛(47人[38%])、下痢(38人[31%])、倦怠感(34人[27%])、筋痛(26人[21%])だった。頻度の高いgrade 3以上の有害事象は好中球減少(13人[10%])、貧血(11人[9%])、肺炎(6人[5%])だった。心房細動がみられた症例はなく、grade 3以上の出血が1例でみられた。治療継続期間の中央値は13.8ヶ月だった。治療を中止したのは54人(44%)だった。中止した主な理由はリンパ腫の増悪(39人[31%])と有害事象(7人[6%])だった。

考察
acalabrutinibによる治療は再発または難治性のマントル細胞リンパ腫患者において持続的な治療が高率で可能であり、安全性は良好だった。これらの結果から、acalabrutinibが再発または難治性マントルリンパ腫患者の治療においてacalabrutinibが重要な役割を果たすことが示唆される。

Funding
Acerta Pharma, a member of the AstraZeneca Group.

 

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選択的な核外搬出阻害薬であるselinexorの再発・治療抵抗性骨髄腫に対する第2相試験

Selective Inhibition of Nuclear Export With Oral Selinexor for Treatment of Relapsed or Refractory Multiple Myeloma.

J Clin Oncol 2018, doi: 10.1200/JCO.2017.75.5207.

 

目的
selinexorは画期的な新薬で、exportin 1 (XPO1)を選択的に阻害し、腫瘍蛋白のmRNAの翻訳を抑制するだけでなく核の腫瘍抑制蛋白とグルココルチコイド受容体を保持して腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する。著者らは、ほとんどの利用可能な薬剤に治療抵抗性の多発性骨髄腫患者を対象に、selinexorと低用量のデキサメタゾンの併用を研究した。

患者と方法
今回の第2相試験ではボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、レナリドミド、ポマリドミドに抵抗性(4剤抵抗性)と、さらに抗CD38抗体に抵抗性(5剤抵抗性)の骨髄腫患者を対象に、selinexor 80 mgとデキサメタゾン 20 mg (どちらも週2回内服)を評価した。主要評価項目は全奏功率(ORR)とした。

結果
79人の患者のうち、48人が4剤抵抗性で31人が5剤抵抗性の骨髄腫だった。前治療レジメン数の中央値は7種類だった。ORRは21%で、4剤抵抗性と5剤抵抗性で差が無かった(21%、20%)。t(4;14)、t(14;16)、del(17p)を含む高リスク核型を持つ患者では、ORRは35%(6/17)だった。治療効果の持続期間の中央値は5ヶ月で、治療に反応した患者の65%が12ヶ月時点で生存していた。grade 3以上の有害事象で頻度が高かったものは血小板減少(59%)、貧血(28%)、好中球減少(23%)、低ナトリウム血症(22%)、白血球減少(15%)、倦怠感(15%)だった。41人(52%)で有害事象が治療に影響し、29人(37%)が薬剤を減量し、14人(18%)が治療を中止した。

結論
selinexorとデキサメタゾンの併用は過去に多くの治療歴があり治療選択肢が限られている治療抵抗性の骨髄腫患者において21%の全奏功率を示した。

 

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