メモ帳

自分用のメモです。

同種造血幹細胞移植における,強度減弱前処置と骨髄破壊的前処置の比較。長期フォローアップの結果。

Long-term efficacy of reduced-intensity versus myeloablative conditioning before allogeneic haemopoietic cell transplantation in patients with acute myeloid leukaemia in first complete remission: retrospective follow-up of an open-label, randomised phase 3 trial.

Lancet Haematol. 2018 Apr;5(4):e161-e169. doi: 10.1016/S2352-3026(18)30022-X.

 

背景

同種造血幹細胞移植(HCT)の前処置の強度がもたらす影響を調べるため,第1寛解期の骨髄性白血病患者を対象に,強度を減弱した前処置と骨髄破壊的前処置を比較する第3相試験を実施した。元々の試験はフォローアップ期間が短かっため,強度を減弱した前処置が骨髄破壊的前処置と比較して晩期再発のリスクが高まるか否かについては不明だった。この疑問に取り組むため,著者らはこの試験の10年間の後方視的フォローアップを行い,晩期再発に焦点を当てた。

 

方法

オリジナルのランダム化第3相試験は,18歳から60歳までの,中間リスクまたは高リスクに該当する急性骨髄性白血病患者のうち,適切な臓器機能が保たれ,HLAが9/10以上合致した同胞または非血縁ドナーから移植可能な患者を対象とした。

患者はランダムに1:1の割合で,フルダラビン 120 mg/m2+TBI 2 Gy x 4 (強度減弱前処置)またはシクロフォスファミド 120 mg/kg + TBI 2Gy x 6 (骨髄破壊的前処置)のいずれかのレジメンに割り付けられた。この研究のprimary efficacy endpoint,secondary efficacy endpointは既に論文化されている。

今回の後方視的長期フォローアップでは,各参加施設からのmedical reportと,医師,患者へのインタビューからデータを集めた。今回の解析におけるendpointは,累積再発率,全生存率,無病生存率,非再発死亡率とし,オリジナルの研究参加者全体についての解析と,HCT後12ヶ月時点で再発なく生存していた患者を対象としたランドマーク解析を行った。イベント発生率はintention-to-treat populationに基づいて計算し,Gray testで比較した。この試験はClinicalTrials.gov, number NCT00150878.に登録された。

 

結果

オリジナルの研究では,195人の患者がランダムに強度減弱前処置(n = 99)または骨髄破壊的前処置(n = 96)のいずれかに割り付けられた。今回の後方視的解析では,データは完全なフォローアップに近い形で収集できた(completeness index 99%)。生存患者のフォローアップ期間中央値は9.9年(IQR[四分位範囲] 8.5-11.4)で,研究を完遂できた集団における累積再発率は両群で一致していた(強度減弱前処置群 30% [95% CI 20〜39] vs 骨髄破壊的前処置 30% [21〜40]; Gray test p = 0.99)。再発までの期間の中央値は強度減弱前処置群で5.0ヶ月(IQR 3.0〜8.8)だったのに対して,骨髄破壊的前処置群では9.5ヶ月(4.5〜20.5)だった。10年時点での無病生存率は強度減弱前処置群で55%(45〜66),骨髄破壊的前処置群で43%(34〜55),ハザード比(HR)は0.76(0.51〜1.14; p = 0.19)だった。また,非再発死亡率は16%(8〜24)と26%(17〜36)で,subdistribution HRは0.60(0.32〜1.11; Gray test p = 0.10)だった。TBIに関連した長期毒性は同等で,二次発癌が強度減弱前処置94人中6人(6%)と骨髄破壊的前処置90人中5人(6%)でみられた(p = 1.00)。

 

考察

強度減弱前処置が骨髄破壊的前処置比べて晩期再発のリスクを増やすというエビデンスはない。オリジナルの研究において,強度減弱前処置群が早期死亡や毒性の低さと関連していたことを考慮すると,適度にTBIを減弱した強度減弱前処置は,60歳未満で第1寛解期に移植を受ける急性骨髄性白血病患者に対する好ましい前処置戦略である可能性がある。

 

FUNDING:
None.

 

この研究はこちら

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

オリジナルの研究はこちら

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

オリジナルの研究に関する当ブログの記事はこちら

kusarenaikai.hatenablog.com