メモ帳

自分用のメモです。

CNS-IPIにcell of originを組み込むことで,DLBCLのCNS再発予測精度が改善する

最近は中枢神経リンパ腫の論文を目にする機会が多い気がします。

尚,この論文で用いられているCNS-IPIについては,過去記事も参考にしてください。

kusarenaikai.hatenablog.com

 

Integration of cell of origin into the clinical CNS International Prognostic Index improves CNS relapse prediction in DLBCL.

Blood. 2019 Feb 28;133(9):919-926

PMID: 30617197, DOI: 10.1182/blood-2018-07-862862

中枢神経(CNS)再発はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の中でも予後が悪い。CNS-International Prognostic Index (CNS-IPI)リスクモデルにバイオマーカーを組み込むことで,二次性のCNS病変を生じるリスクが高い患者を同定する精度が改善するかもしれない。第3相試験であるGOYA studyにおいてオビヌツズマブまたはリツキシマブとCHOPを併用して治療されたDLBCL患者1,418人を対象に,CNS再発について解析した。

遺伝子発現プロファイルを用いて,cell of origin (COO)を評価した。BCL2とMYCの発現は,免疫組織染色で解析した。CNS-IPI,COO,BCL2/MYCの発現状況がCNS再発に与える影響を,多変量Cox回帰分析モデルで評価した(利用可能なデータは,それぞれ1,418例,933例,688例)。

CNS-IPIがhigh (ハザード比[HR] 4.0; 95%信頼区間[CI] 1.3-12.3; P=0.02),activated B-cell-like (ABC) (HR 5.2; 95%CI 2.1-12.9; P = .0004),unclassified COO subtypes (HR 4.2; 95%CI 1.5-11.7; P = .006)はそれぞれ独立にCNS再発と関連していた。BCL2/MYCの発現状態は,CNS再発リスクに影響していなかった。

CNS-IPIがhighであるかどうかと(and/or),COOがABCまたはunclassifiedに該当するかを基に3つのリスク群が見出された(CNS-IPI-Cモデル)。具体的には,低リスク(リスク因子なし,n=450[48.2%]),中リスク(リスク因子1個,n=408[43.7%]),高リスク(リスク因子2個,n=75[8.0%])である。2年間のCNS再発率は,それぞれのリスク群で0.5%,4.4%,15.2%だった。

CNS-IPIがhighであるかと,COOがABCまたはunclassifiedに該当するかを組み合わせることで,CNS再発の予測精度が改善し,CNS再発を来すリスクが高い患者群を見出された。

The study was registered at www.clinicaltrials.gov as #NCT01287741.

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

骨髄腫における単回移植,タンデム移植,移植後地固め療法の比較試験

Autologous Transplantation, Consolidation, and Maintenance Therapy in Multiple Myeloma: Results of the BMT CTN 0702 Trial.

J Clin Oncol. 2019 Mar 1;37(7):589-597

PMID: 30653422, DOI: 10.1200/JCO.18.00685

 

目的

メルファラン 200 mg/m2の投与と自家造血幹細胞移植(AHCT)を1回行った後,レナリドミド(len)を用いた維持療法を行うことで,移植適応のある骨髄腫患者の無増悪生存(PFS)と全生存(OS)が改善する。

著者らは,さらなる治療介入を行うことでPFSが改善するかを検証するため,AHCT,タンデムAHCT(AHCT/AHCT),AHCT後に4回のRVD(レナリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン, AHCT+RVD),の3つの治療を比較する前向きランダム化第3相試験を行った。尚,3群ともに骨髄腫が増悪するまでlenで維持療法を行った。

患者と方法

症候性骨髄腫で,治療開始から12ヶ月以内かつ骨髄腫が増悪しておらず,年齢が70歳以下の患者をランダムにAHCT/AHCT + len (n=247),AHCT + RVD + len (n = 254),AHCT + len (n = 257)のいずれかの治療に割り付けた。主要評価項目は38ヶ月時点でのPFSとした。

結果

患者年齢の中央値は56歳(range, 20〜70歳)で,24%が高リスク骨髄腫であり,73%が初期治療として3剤併用レジメンでの治療を受けていた。また,18%が参加時点で完全奏功の状態だった。38ヶ月時点でのPFSはAHCT/AHCT群で58.5%(95%信頼区間 51.7%〜64.6%),AHCT+RVD群で57.8%(51.4%〜63.7%),AHCT+len群で53.9% (47.4%〜60%)だった。また,OSはそれぞれ81.8%(76.2%〜86.2%),85.4% (80.4%〜89.3%),83.7% (78.4%〜87.8%)であり,1年時点での完全奏功率はそれぞれ50.5%(n = 192),58.4%(n = 209),and 47.1% (n = 208)だった。毒性プロファイルと二次発癌の状況は群間で明らかな差はみられなかった。

考察

移植適応の骨髄腫患者に対して,AHCT後に2回目のAHCTまたはRVDによる地固めをアップフロントで行ってもPFSやOSは改善しなかった。このような患者に対しては,1回のAHCTとlenによる維持療法を標準的なアプローチとすべきである。

www.ncbi.nlm.nih.gov

未治療進行期のindolent非ホジキンリンパ腫に対するペントスタチン,シクロフォスファミド,リツキシマブの併用レジメン

Long‐term overall‐ and progression‐free survival after pentostatin, cyclophosphamide and rituximab therapy for indolent non‐Hodgkin lymphoma

https://doi.org/10.1111/bjh.15814

治療歴のない進行期のindolent非ホジキンリンパ腫(iNHL)患者を対象とした前向き第2相試験において,ペントスタチン,シクロフォスファミド,リツキシマブの併用(PCR)が強い効果をもたらし,忍容性も良好だった。

中央値108ヶ月を超えるフォローアップ期間の後,83人のintent-to-treat解析を行った。108ヶ月時点での無増悪生存率(PFS)は,濾胞性リンパ腫(FL)で71%,辺縁帯リンパ腫(MZL)で67%,小リンパ球性リンパ腫(SLL)で15%であり,臨床病理的な特徴に影響されていた。10年PFSは,治療開始前のβ2ミクログロブリンが2.2 mg/L未満の患者は71%,2.2 mg/L以上の患者は21%だった。骨髄浸潤のない患者の10年PFSは72%だったのに対して,骨髄浸潤があった患者では29%だった。解析時点で,全生存期間は中央値に到達していなかった。10年時点での全生存率は64%で,病理組織型によって有意な差がみられた: FLで94%,MZLで66%,SLLで39%。長期毒性としては二次発癌が18例(21.7%)あり,追加の化学療法を受けた後に骨髄異形成症候群を発症した症例が2例(2.4%)あった。

10年間のフォローアップ解析の結果,PCRはiNHLに確かな効果があり,忍容性良好なレジメンであることが確かめられた。

移植非適応の未治療骨髄腫に対するカルフィルゾミブまたはボルテゾミブとメルファラン,プレドニゾロンの第3相試験

Randomized phase 3 study of carfilzomib or bortezomib with melphalan-prednisone for transplant-ineligible, NDMM patients

doi: 10.1182/blood-2018-09-874396

 

第3相試験であるCLARION試験は,移植非適応の未治療多発性骨髄腫患者を対象とし,カルフィルゾミブ+メルファラン+プレドニゾン(KMP)とボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾン(VMP)を比較した。

患者はランダムに1:1の比でKMPまたはVMPのいずれかに割り付けられ,42日サイクルで9サイクルの治療を受けた。カルフィルゾミブはday 1,2,8,9,22,23,29,30(1サイクル目のday 1のみ20 mg/m2,その後は36 mg/m2),ボルテゾミブはday 1,4,8,11,22,25,29,32(1.3 mg/m2。5〜9サイクルのday 4,11,25,32はスキップ)にそれぞれ投与した。これに加えて,メルファラン(9 mg/m2)とプレドニゾン(60 mg/m2)をday 1〜4に投与した。プライマリエンドポイントは無増悪生存(PFS)とした。

955人の患者がランダムに割り付けられた(intention-to-treat [ITT] population: KMP, n=478; VMP, n=477)。PFSの中央値はKMPで22.3ヶ月,VMPで22.1ヶ月,ハザード比(HR)は0.906 (95%信頼区間[CI], 0.746-1.101; P = 0.159)だった。全生存期間の中央値に有意な差はなく,両群とも未到達だった(HR, 1.08; 95% CI, 0.82-1.43)。全奏功率はKMP群で84.3%,VMP群で78.8%だった。完全奏功率はKMP群で25.9%,VMP群で23.1%だった。微小残存病変が陰性となったのはKMP群で15.7%,VMP群で15.5%だった。有害事象(全グレード)のうちKMPの方が発生頻度が5%以上高かったのは急性腎不全(13.9%[KMP] vs 6.2%[VMP])と心不全(10.8% vs 4.3%)だった。grade 3以上の有害事象はKMPの74.7%,VMPの76.2%でみられた。grade 2以上の末梢神経障害はKMPの方がVMPよりも少なかった(2.5% vs 35.1%)。CLARION試験において,KMPでの治療はVMPと比較して,PFSの統計学的な有意差を示せなかった。

Registered at www.clinicaltrials.gov #NCT01818752.

 

www.bloodjournal.org

急性骨髄性白血病の寛解導入療法とエルトロンボパグの併用:第2相試験

Eltrombopag treatment during induction chemotherapy for acute myeloid leukaemia: a randomised, double-blind, phase 2 study.

Lancet Haematol. 2019 Jan 28

PMID: 30704923, DOI: 10.1016/S2352-3026(18)30231-X

 背景

急性骨髄性白血病患者は,寛解導入療法中に血小板減少を呈することが多い。経口のトロンボポエチン受容体アゴニストであるエルトロンボパグは,内因性のトロンボポエチント同じような機序で血小板産生を刺激する。今回の研究では,急性骨髄性白血病患者を対象に,アントラサイクリンをベースとした治療におけるエルトロンボパグの有効性と安全性を,プラセボと比較して調べた。
方法

この研究は二重盲検ランダム化第2相試験で,10カ国(オーストラリア,ベルギー,カナダ,ギリシャ,ハンガリー,イスラエル,韓国,ポーランド,ロシア,アメリカ)の臨床施設から治療歴のない患者を集めた。M3とM7以外の急性骨髄性白血病患者を対象とし,白血病の前に悪性の血液疾患がなかったか(yes or no),年齢(18〜60歳 or >60歳)で層別化し,automated interactive voice-response system randomisation scheduleを用いて1:1の比でランダムに割り付けた。研究担当者と患者に試験治療の内容は知らされなかった。患者は標準的な寛解導入療法*1を受け,これに加えてday4からエルトロンボパグ 200 mg (東アジアでは100 mg)またはプラセボを,血小板数が200 x 10^9/L以上に回復するか,寛解するか,寛解導入療法開始から42日後のいずれかの時点まで1日1回内服した。この研究の第一の目的は,有害事象,左室駆出率(LVEF),臨床検査のパラメータを用いて評価した安全性と耐用性とした。

This study has been completed and is registered with ClinicalTrials.gov, number NCT01890746.

結果

2013年9月7日から2015年1月30日までの間に,149人が適格性を評価され,このうち148人がランダムにエルトロンボパグ群(n=74)またはプラセボ群(n=74)に割り付けられた。両群は,平均年齢(エルトロンボパグ群 56.7歳[標準偏差12.3] vs プラセボ群 56.6歳[11.6]),最初の平均血小板数(59.5x10^9/L [43.3] vs 63.7x10^9/L [48.0]),高リスク核型(両群とも74人中16人[22%])において差がなかった。grade 3または4の有害事象で頻度が高かったもの(両群で10%以上)は,発熱性好中球減少症(31人[42%] vs 28人[39%]),白血球減少(8人[11%] vs 5人[7%]),(3人 [4%] vs 9人 [13%]),低リン血症(3 [4%] vs 9 [13%])だった。重篤な有害事象はエルトロンボパグ群の24人(32%)とプラセボ群の14人(20%)でみられた。エルトロンボパグ群の39人(53%),プラセボ群の29人(41%)が死亡した。血栓塞栓イベントは5人(7%)と4人(6%)でみられ,LVEFの平均変化量は-2.5%(7.8)と-4.3%(8.5)でいずれも明らかな差はなかった。

考察

今回の研究から得られたデータは,急性骨髄性白血病患者の寛解導入療法にエルトロンボパグを併用することを支持しない。

FUNDING:
Novartis Pharma AG.

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

*1:daunorubicin bolus intravenous infusion on days 1-3 [90 mg/m2 for patients aged 18-60 years or 60 mg/m2 for patients aged >60 years], plus cytarabine continuous intravenous infusion on days 1-7 [100 mg/m2]

骨髄腫患者における同種幹細胞移植の治療成績

Allogeneic transplantation of multiple myeloma patients may allow long-term survival in carefully selected patients with acceptable toxicity and preserved quality of life.

PMID: 30237266, PMCID: PMC6355495, DOI: 10.3324/haematol.2018.200881

骨髄腫と診断された患者の生存率と治療奏功率は大きく改善したが,依然として治癒が難しく予後が悪い疾患であり,特に高リスク群では顕著である。同種幹細胞移植は治癒する可能性のある選択肢であるが,少なからぬ治療関連毒性があるために意見が分かれている。

著者らは,2000年から2016年までの間にFreiburg University Medical Centerで強度減弱前処置による同種移植を受けた109人の骨髄腫患者を解析した。ほとんどの患者は高リスク群で多くの前治療歴があったが,全奏功率は70%と高く,全生存期間と無増悪生存期間の中央値はそれぞれ39.2ヶ月*1と14.2ヶ月だった。観察期間の中央値は71.5ヶ月だった。過去に行った治療に反応した患者の方が,骨髄腫が悪化した患者よりも生存期間が長かった(全生存期間中央値 65ヶ月vs 11.5ヶ月, p=0.003, 無増悪生存期間中央値 18.4ヶ月 vs 5.1ヶ月, p=0.001)。さらに,ファーストラインの治療として移植を受けた患者は,再発・治療抵抗性の患者と比べて生存期間が有意に長かった(全生存期間中央値 未到達 vs 21.6ヶ月, p<0.001; 無増悪生存期間中央値 47.7ヶ月 vs 9.6ヶ月, p<0.001)。非再発死亡率は10年間の累積で12.4ヶ月と低かった。grade II〜IVの急性GVHDが25%でみられ,中等度〜重度の慢性GVHDは24%でみられた。revised Myeloma Comorbidity Indexを用いて移植前後にQoLを評価したところ,変化はみられなかった。

著者らのデータから,骨髄腫患者の高リスク群を慎重に選べば,新しい免疫療法という文脈での同種移植は,毒性が許容可能でかつQoLが維持され,長期生存を可能にし,治癒すら可能にするかもしれないことが示唆される。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

*1:アブストラクトの原文は39.2%となっていますが,誤りと思われます

同種造血幹細胞移植後に脳脊髄液からウイルスが検出されると,予後が悪い

Virus detection in the cerebrospinal fluid of hematopoietic stem cell transplant recipients is associated with poor patient outcomes: a CIBMTR contemporary longitudinal study.

PMID: 30696997 DOI: 10.1038/s41409-019-0457-9

同種造血幹細胞移植(HCT)レシピエントの中枢神経ウイルス(CNS-V)の特性に関するデータは限られている。2007年から2015年までの間に,HCTを実施した27,532人の情報がCenter for International Blood and Marrow Transplant Research (CIBMTR)へ送られた。これらのうち,HCT実施後6ヶ月以内に脳脊髄液からCNS-Vが検出されたという報告があったHCTレシピエントは165人だった。CNSウイルスはhuman herpes virus 6 (HHV-6)が73%と大半を占めており,Epstein-Barrウイルス(10%),サイトメガロウイルス(3%),水痘帯状疱疹ウイルス(3%),単純ヘルペスウイルス(3%),アデノウイルス(3%)が続いた。CNSからウイルスが検出されたタイミングの中央値はHCT後31日で,HHV-6が検出された患者は検出タイミングが早かった。患者の52%では同時にウイルス血症もみられた。臍帯血移植(CBT)レシピエントがCNS-Vの過半数(53%)を占めていた。骨髄破壊的前処置(65%),フルダラビンの使用(63%),抗胸腺グロブリンの使用(61%)も多かった。CNS-V検出から6ヶ月時点での全生存率は50%で,5年時点では30%だった。感染症が上位の死因だった(32%)。

CBTレシピエントがCNS-V検出者の過半を占めていた。CNS-V検出後の予後は不良であり,最初の6ヶ月は特に死亡率が高かった。

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

 

原発性体腔液リンパ腫のウイルス学的,免疫学的,臨床的特徴

Viral, immunologic, and clinical features of primary effusion lymphoma.

PMID: 30782610,  DOI: 10.1182/blood-2019-01-893339

原発性体腔液リンパ腫(primary effusion lymphoma, PEL)はHIVに関連したアグレッシブリンパ腫であり,効果的なHIV治療が可能になった時代においても予後は比較的不良である。カポジ肉腫ヘルペスウイルス(Kaposi sarcoma herpesvirus, KSHV)が病原体であり,腫瘍の約80%はEBVにも同時感染している。KSHVに関連した免疫の調節不全がPELの自然経過にどのように関連しているか,理解を深めることが治療成績の改善に寄与する。

著者らは2000年から2013年までの間にPELと診断された患者を20人見つけ出し,そのうち20人はmodified EPOCHで治療されていた。この20人と,HIV関連DLBCL(HIV-DLBCL)患者20人,症候性の(IL-6が関連する)KSHV関連多中心性キャッスルマン病(KSHV-MCD)患者19人を,臨床的,ウイルス学的,免疫学的な特徴について比較した

さらに著者らは治療を受けたPEL患者の生存時間分析を行い,予後因子と腫瘍特異的死亡の特定を試みた。

HIV-DLBCLと比較して,PELは低アルブミン血症(p<0.0027),血小板減少(p=0.0045),IL-10上昇(p<0.0001)と有意な関連がみられた。PELとKSHV-MCDの間には,これらのパラメータに有意な違いはみられなかった。治療を受けたPEL患者の全生存期間の中央値は22ヶ月で,2年を超えたところで生存曲線がプラトーになった。3年時点での腫瘍特異的生存率は47%だった。腫瘍がEBV陽性であることは,生存率の改善と有意に関連しており(ハザード比 0.27; p=0.038),IL-6の上昇は生存率の低下と有意に関連していた(ハザード比 6.1; p=0.024)。

著者らの解析では,IL-6とIL-10がPELの自然経過に寄与していた。炎症性サイトカインと腫瘍のEBV感染状態が最も強力な予後因子だった。PELの全生存率を改善するため,発病機序を指向したファーストラインレジメンが必要である。

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未治療のCD30陽性末梢性T細胞リンパ腫を対象とした,ブレンツキシマブ・ベドチン併用化学療法の第3相試験

Brentuximab vedotin with chemotherapy for CD30-positive peripheral T-cell lymphoma (ECHELON-2): a global, double-blind, randomised, phase 3 trial.
Lancet. 2019 Jan 19;393(10168):229-240
PMID: 30522922, doi: 10.1016/S0140-6736(18)32984-2

背景
第1相試験で観察された心強い活性と管理可能な安全性に基づき,CD30陽性の末梢性T細胞リンパ腫に対する治療としてのA+CHPとCHOPの有効性と安全性を比較するECHELON-2試験が開始された。
A+CHP: ブレンツキシマブ・ベドチン,シクロフォスファミド,ドキソルビシン,プレドニゾロン

 

方法
ECHELON-2は二重盲検,ダブルダミー,プラセボ対照ランダム化第3相試験である。(ECHELON-2 is a double-blind, double-dummy, randomised, placebo-controlled, active-comparator phase 3 study.) 治療歴のなく,適格条件を満たしている成人のCD30陽性の末梢性T細胞リンパ腫患者(75%が全身性の未分化大細胞リンパ腫であることを目標とした)が対象で,17カ国の132施設が参加した。対象患者はランダムに1:1の比でA+CHPまたはCHOPのいずれかの治療に割り付けられ,それぞれの治療を21日毎に6回ないしは8回受けた。ランダム化は,それぞれの地域で行われた病理学的評価による組織亜型と,IPIスコアによって層別化を行った上で行われた。
全ての患者が各サイクルのday1にシクロフォスファミド750 mg/m2とドキソルビシン 50 mg/m2を経静脈的に投与され,day1からday5までプレドニゾロン100 mgを内服した。これに加えて,A+CHP群ではブレンツキシマブ・ベドチン1.8 mg/kgとビンクリスチンのプラセボを,CHOP群ではビンクリスチン 1.4 mg/m2とブレンツキシマブ・ベドチンのプラセボを,それぞれ各サイクルのday1に投与された。
主要評価項目は,割り付けを伏せた上で独立に一元的にレビューされた無増悪生存とし,intention-to-treatで解析した。
This trial is registered with ClinicalTrials.gov, number NCT01777152.

 

結果
2013年1月24日から2016年11月7日までの間に,601人が適格性を評価され,このうち452人が参加し,A+CHP群とCHOP群のいずれかに各群226人ずつランダムに割り付けられた。無増悪生存期間の中央値はA+CHP群が48.2ヶ月(95% CI 35.2〜評価不能),CHOP群が20.8ヶ月(12.7〜47.6)で,ハザード比は0.71(0.54-0.93, p=0.0110)だった。有害事象は発熱性好中球減少症(A+CHP群 41件[18%],CHOP群 33件[15%]),末梢神経障害(117件[52%],124件[55%])の頻度と重症度を含めて両群で類似していた。致死的な有害事象はA+CHP群で7件(3%),CHOP群で9件(4%)みられた。

 

考察
CD30陽性の末梢性T細胞リンパ腫において,A+CHPを用いたフロントライン治療は,無増悪生存と全生存のいずれをも改善し,かつ安全性は管理可能であり,CHOPよりも優れていた。

 

FUNDING:
Seattle Genetics Inc, Millennium Pharmaceuticals Inc, a wholly owned subsidiary of Takeda Pharmacuetical Company Limited, and National Institutes of Health National Cancer Institute Cancer Center.

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

kusarenaikai.hatenablog.com

中枢神経原発DLBCLの診断と管理に関するガイドライン

Guidelines for the diagnosis and management of primary central nervous system diffuse large B-cell lymphoma

Br J Haematol. 2019 Feb;184(3):348-363.

PMID: 30467845, doi: 10.1111/bjh.15661.

 

中枢神経原発リンパ腫(primary CNS lymphoma, PCNSL)の診断と治療に関するガイドラインです。対象は中枢神経(脳,脊髄,脳神経,眼,髄膜)原発のDLBCLで,二次性CNSリンパ腫(secondary CNS lymphoma),免疫不全関連リンパ腫,DLBCL以外の組織型は本ガイドラインの対象外です。

 

診断と画像検査 Diagnosis and imaging

1. PCNSLが疑われる患者については,遅れを最小限にするために早い段階で専門家とディスカッションを行うべきである。(1C)

 

2. PCNSLの確定診断には組織診または細胞診が必要である; MRIの所見のみでは不十分である。診断は,専門家が血液病理学的検討により確認するべきである。(1B)

 

3. 生検前に副腎皮質ステロイドを投与することは避けるべきである。(1A)

 a. 既にステロイドが投与されていて尚も造影される病変が残っている場合には,診断内容を改善するために,緊急生検の前にステロイドを中止するべきである。(1B)

 b. PCNSLを疑われていた病変がステロイドで消えた場合には,病変が再増大している場合に緊急の生検を行うため,短い間隔を置いてからMRI検査を再度行うべきである。(1B)

 

4. 組織診を行う場合のアプローチとして脳の定位生検が推奨される。不必要な外科的切除を避けるため,細胞診と凍結切片を用いた術中迅速診断が推奨される。(1B)

 

5. 眼内原発リンパ腫(primary intraocular lymphoma, PIOL)の診断を確定させるため,理想的には硝子体生検と,網膜下吸引subretinal aspirationまたは脈絡網膜生検を組み合わせるべきである。(1B)

 

6. 生検ができない状況では,MRIの特徴的な所見と臨床徴候に加えて(AND),マルチパラメータフローサイトメトリーと(and/or)PCRによるIGHV遺伝子再構成の検出により脳脊髄液または硝子体液中にクローナルなB細胞が多数存在することを示すことで,PCNSLの診断を支持し得る。(1B)

 

7. 治療前,治療効果の評価に用いる画像検査としては,造影MRI(diffusion seqenceを含む)が推奨される。専門のneuroradiologistがneuroaxis imaging(脳と全脊髄)をレビューするべきである。(1B)

 

8. 眼内病変を除外するため,全ての患者に細隙灯検査を含む綿密な眼科的評価を行うべきである。(1B)

 

9. 全身病変を除外するため,全ての患者に横断的画像診断cross-sectional imagingを行うべきである。(1A)

 a. FDG PET-CTが推奨される。PET-CTが実施できない場合には,頚部,胸部,腹部,骨盤の造影CTを行うべきである。(1B)

 b. 男性には精巣の超音波検査を行うべきである。(1B)

 

10. 診断が確定したPCNSLの症例は全て,MDT(multidisciplinary team)においてディスカッションされるべきである。患者は可能な限り速やかに,理想的には診断から14日以内に,PCNSLに関する複数領域の専門家が集まる施設において治療(definitive treatment)を受けるべきである。(1B)

 

中枢神経原発リンパ腫の治療 Treatment of primary CNS lymphoma

寛解導入療法 Remission induction

1. 化学療法の適格性は,実際の年齢よりも身体的な状態により決定されるべきである。(1A)

 

2. 可能であれば,随時臨床試験に参加するべきである。(1A)

 

3. 大量メトトレキサート(HD-MTX)を組み込んだレジメンに適応がある患者について:

 a. 強力な治療への適格性があれば,4サイクルのMATRix(HD-MTX,シタラビン,チオテパ,リツキシマブ)を提示する。(1A)

  i. 初診時にパフォーマンスステータスが損なわれている場合,並存疾患がある場合,過去にMATRixによる重大な毒性が生じた場合には減量を考慮するべきである。(2C)

  ii. G-CSFや日和見感染症予防を行うべきである。(2C)

  iii. 自家幹細胞移植を併用した大量化学療法(HDT-ASCT)を計画している患者においては,実施可能であれば2サイクル目の後に末梢血幹細胞(PBSC)採取を試みるべきである。(1B)

 b. 強力な化学療法が適応とならない場合,HD-MTX,リツキシマブ,経口アルキル化剤を用いた確立したレジメンを提示する(e.g. R-MP[リツキシマブ,メトトレキサート,プロカルバジン])。(1B)

 c. HD-MTXは少なくとも3 g/m2を2〜4時間かけて投与し,これを2〜3週間毎に4サイクル以上繰り返すべきである。(1B)

 d. リツキシマブは375 mg/m2を8サイクル投与する(MATRixレジメンでは1サイクルで2回投与する)。(1A)

 

4. HD-MTXの適応が無い患者については,以下のいずれか1つ,または2つ以上を組み合わせた治療を考慮する。(2C)

 a. 経口化学療法(テモゾロミドなど)。

 b. 全脳照射(WBRT; 1回線量1.8〜4 Gy,合計20〜30 Gy。パフォーマンスステータスに応,治療目的,生命予後に応じて調整する)と,眼病変がある場合には眼窩への照射。

 c. 副腎皮質ステロイド(デキサメタゾンがよく用いられる)。

 

5. 抗癌剤の髄腔内投与は,中枢神経の治療を意図した全身化学療法との併用は推奨しない(1A)が,全身治療の適応がない患者において軟膜病変の症状をコントロールする場合には考慮しても良い。(2C)

 

6. 治療効果の評価は,造影MRIで行うべきである。

 a. PBSC採取のタイミングを伝えるために,1サイクル終了時点で考慮する。(2C)

 b. HD-MTXベースの化学療法においては,2サイクル毎と,寛解導入療法終了時に実施する。(1B)

 

地固め療法 Consolidation treatment

1. 地固め療法は,導入療法後にリンパ腫が増悪していない患者全てで考慮するべきである。実施するかは並存症,パフォーマンスステータス,認知機能,患者の希望を踏まえて判断するべきである。(1B)

 

2. 適応のある患者全てで,大量チオテパをベースとしたASCT併用化学療法を地固め療法の1st lineとして考慮するべきである。(1B)

 a. HD-MTXベースの1st line化学療法を行なった後にstable disease以上の状態のCNS原発リンパ腫患者はASCT併用大量化学療法(HDT-ASCT)を考慮するべきである。(1B)

 b. CNS原発リンパ腫におけるHDT-ASCTの前処置として,BEAM(carmustine,エトポシド,シタラビン,メルファラン)を用いるべきではない。(1A)

 

3. 以下の場合には地固め全脳照射(WBRT) +/- ブーストを考慮するべきである

 a. 導入免疫化学療法後に残存病変があるが,HDT-ASCTが不適格な患者。(1B)

 b. チオテパベースのASCT後に残存病変がある患者。(1B)

 

4. 眼病変が並存している患者については,HDT-ASCTが不適格な場合,あるいはチオテパベースのASCT後に完全奏効(CR)が得られない場合には両眼窩への放射線治療も検討するべきである。(2B)

 

5. HD-MTXレジメンでCRが得られ,HDT-ASCTが不適格な患者については,地固めWBRTは議論の余地がある。

 a. 各患者毎に,無増悪生存を改善する可能性と,認知機能についての毒性リスクとを慎重に天秤に掛けるべきである。(1B)

 b. HD-MTXで寛解が得られた60歳以上の患者については,認知機能への毒性のリスクがより高いことを踏まえて,WBRTを省略するべきか,あるいはより低線量の地固めWBRTを考慮しても良い。(2B)

 

6. WBRTを行う場合,用量とスケジュールは年齢,並存症,導入療法に応じて推奨される。

 a. 36 Gyを20分割。(1B)

 b. 神経毒性のリスクが高い場合には23.4 Gy (1回線量1.8または2 Gy)に減量する。(2C)

 c. WBRTを行う時点で残存している造影病変に対しては1〜2 cmのマージンで9 Gyのブースト照射を考慮する(total 45 Gy/25分割)。

 d. 30 Gy照射した後は眼窩を遮蔽する(眼病変があった症例では36 Gy照射後)。

 

フォローアップ Follow-up

1. 地固め療法が終了してから1〜2ヶ月後に,造影MRIで治療効果を評価する。(1B)

 

2. 治療後最初の2年間,救援療法の適応がある患者については造影MRIでのフォローアップを検討しても良い。治療終了から2年間,3〜4ヶ月毎に検査を行うのが一案である。それ以上のMRIでの監視は,個々の症例毎に判断する。(2B)

 

眼内原発リンパ腫 Primary intraocular lymphoma (PIOL)

1. PIOLはHD-MTXをベースとした化学療法とリツキシマブを併用して治療する。適応のある患者に対しては,MATRixレジメンのような,エビデンスに基づいたPCNSLの導入プロトコルを用いることを検討する。(1C)

 

2. MTXの硝子体内投与(習熟した眼科医によって行う)は,高齢で全身化学療法の適応がない孤発性PIOL患者に対して考慮しても良い。

 

3. HD-MTXレジメンで全身化学療法を受ける患者に対する硝子体内治療の併用は,ルーチンには推奨されない。(2C)

 

4. 強力な全身化学療法が奏功したPIOL患者については,以下の地固め療法のオプションを検討する。

 a. 適応のある患者については,大量チオテパをベースとした化学療法とASCT。

 b. 両眼窩への放射線治療(最大36 Gyを1.8〜2 Gyに分割)。WBRT(23.4〜30 Gyを1.8〜2 Gyに分割)の同時併用も検討するが,認知機能への毒性のリスクを患者毎に慎重に天秤に掛けるべきである。(2B)

 

再発・難治性PCNSL Relapsed and refractory PCNSL

1. PCNSLの再発が疑われる患者は全て,地域のMDT会議で直ちに再検討する。最初に治療を行った血液-腫瘍チームに適切な情報提供を行う。(1C)

 

2. MRIの所見が非典型的な場合や,前回の治療から2年以上経過した後に新たな病変が見られた場合には,再生検が推奨される。強力な救援療法が計画されている場合には,特に推奨される。(2C)

 

3. PCNSLの再発が確定した患者は,さらに治療を行う計画がある場合には再ステージングを行う。1st lineの治療に抵抗性の場合,再ステージングは通常必要ではない。

 

4. 可能な時は随時,臨床試験への参加を提示する。

 

5. 臨床試験以外では,以下の項目を考慮した上で,可能性のある治療オプションを個別化して実施する。(1C)

 a. 身体的な健康状態,パフォーマンスステータス,認知機能

 b. これまでに行った治療と奏功期間

 c. 患者自身の選択

 

6. 強力な治療の適応がある患者の場合

 a. 治療抵抗性,あるいはMTXベースの免疫化学療法を行った後早期に再発した場合は特に,イホスファミドベースの免疫化学療法を検討する。(2B)

 b. HD-MTXベースの治療を行なって最初の寛解が得られてから2年を超えた後に再発した場合には,HD-MTXベースの免疫化学療法を検討する。(2B)

 

7. 救援化学療法後の地固め療法

 a. 過去にHDT-ASCTを行なっていない患者については,2回目以降の奏功がみられた際にチオテパベースのHDT-ASCTを検討する。

 b. HDT-ASCTの適応がないか,あるいは過去に行なったことがあり,かつ過去にWBRTを行なっていない患者については,WBRTを単独で行うか,あるいは救援化学療法後に行うことを検討する(23.4〜36 Gyを1.8〜2 Gyに分割)。

 

 8. 強力な治療に適応がない患者の場合

 a. 緩和的な治療を提示する。WBRT(23.4〜36 Gyを1.8〜2 Gyに分割),副腎皮質ステロイドと(and/or)経口テモゾロミドなど。(2C)

 b. ベストサポーティブケアを行い適切な場面で緩和ケアも取り入れる。(1B)

 

神経心理学的評価 neuropsychological assessments

1. PCNSL患者においては,長期のモニタリングで治療前後の認知機能とQOLに関するアウトカムを評価する。

2. PCNSLの治療を受けた患者は,治療の前後で最低でも認知ドメインcongnitive domains,処理速度,運動速度,実行機能,記憶を評価する。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov