メモ帳

自分用のメモです。

MCLに対するR-CHOPとR-CHOP/R-DHAPの比較試験

R-CHOP/R-DHAP Compared to R-CHOP Induction Followed by High Dose Therapy with Autologous Stem Cell Transplantation Induces Higher Rates of Molecular Remission In MCL: Results of the MCL Younger Intergroup Trial of the European MCL Network
(Blood 2010;116:Abstract 965)

[背景・方法] European MCL NetworkのMCL younger試験において、65歳までのII〜IV期のマントル細胞リンパ腫(MCL)患者が「3週毎6サイクルのR-CHOP→DexaBEAMで幹細胞採取→12 GyのTBIと2x60 mg/kgのcyclophosphamideで骨髄破壊的前処置→自家幹細胞移植」群(Arm A)と、「R-CHOPとR-DHAPを交互に合計6サイクル→10 GyのTBIと1.5 mg/m^2のAra-Cと140 mg/m^2のmelpahalanで骨髄破壊的前処置→自家幹細胞移植」群(Arm B)の2群に無作為に割り付けられた。いずれの群においても、臨床的な奏功の評価に加えて、RQ-PCRを用いて微小残存病変(MRD)を分子レベルで前向きにモニターした。MRDのサンプルは診断時、寛解導入療法4サイクル終了後、寛解導入療法6サイクル終了後と、自家移植後臨床的にリンパ腫が増悪するまで3か月間隔で採取された。MRDの結果はESG criteria (van der Velden, Leukemia 2007)に従って評価し、臨床的な奏功と治療成績と比較した。RQ-PCRは感度が10^(-5)に達する様デザインし、10^(-4)以上の感度で陰性であった場合をMRD陰性と定義した。分子生物学的奏功(MR)は、いずれの時点においても、末梢血液±骨髄でMRD陰性の場合と定義した。
[結果] 2010年5月までに、422例中307例でMRDサンプルが利用可能だった(R-CHOP arm 158例、R-CHOP/R-DHAP arm 158例)。全部で2374のサンプル(末梢血 1639、骨髄 735)がMRDの評価を受けた。両群間で臨床病期、LDH上昇、骨髄浸潤、MIPIといった臨床パラメータの分布に差はみられなかった。治療中(寛解導入療法4サイクル、6サイクル終了時)のサンプルが利用出来た173例(56%)の患者については、MRD陰性患者の割合がarm Bで36/84 (43%)、arm Aで12/89 (13%)と、MRD除去率はarm Bの方が有意に高かった(p < 0.0001)。この違いは、末梢血液(50/80 (63%) vs 18/84 (21%); p < 0.0001)、骨髄(31/71 (44%) vs 12/75 (16%); p = 0.0003)のいずれにおいても確認された。
寛解導入療法終了後、arm Aでは90%、arm Bでは94%で臨床的効果を認め、それぞれ26%、39%で完全奏功に達していた。MRを達成した割合はarm Bで有意に高かった(60/82 (73%) vs 29/92 (32%); p < 0.0001)。骨髄におけるリンパ腫細胞除去率はarm Aの方がarm Bよりも劣っていた(17/71 (24%) vs 39/57 (68%))。これに一致して、末梢血のMRD陰性率もarm Aの40/86 (47%)に対してarm Bが63/79 (80%)だった。骨髄におけるMR達成は寛解持続率を有意に改善した(24か月時点 89% vs 74%, p = 0.0017)。自家移植を併用した大量化学療法は腫瘍量の減量に大きなインパクトを示し、骨髄のMR達成率を50%から75%まで増加させた(p = 0.0001)。この増加はarm A (29% → 65%; p = 0.0023)の方がarm B (76% → 88%; p = 0.18)よりも顕著だった。両群ともに、自家移植後最初の1年間末梢血のMRが持続することが、予後に影響していた(arm A 92% vs 67%; p = 0.0224, arm B 96% vs 53%; p = 0.0016)。
[結論] RQ-PCRは異なる治療内容が腫瘍の除去に与えるインパクトを測定する優れたツールであり、早期に大量Ara-Cを含む化学療法を行う治療が優れていることを示した。さらに、MCLにおける自家移植での地固めが重要であることが強調された。それゆえに、MRDは臨床的、形態的な完全奏功の評価よりも予後に関連しているように思われ、早い段階でMCLの予後を早い段階で予測する信頼性できる因子であることが確認された。