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リツキシマブと濾胞性リンパ腫の形質転換リスクとの関係

Rituximab and the risk of transformation of follicular lymphoma: a retrospective pooled analysis.

(Lancet Haematol. 2018 Aug;5(8):e359-e367.)

PMID: 30078408 DOI: 10.1016/S2352-3026(18)30090-5

 

背景

濾胞性リンパ腫からアグレッシブリンパ腫への形質転換は,患者の予後に重大な影響を及ぼす深刻なイベントである。Aristotle studyの目的は,リツキシマブが形質転換とその予後に及ぼす影響を評価することである。

方法

ヨーロッパの11の共同グループや施設が今回の研究にデータを提供した。1997年1月2日から2013年12月20日までの間に濾胞性リンパ腫(grade 1, 2, 3a)と診断された18歳以上の患者を適格とした。first lineの治療後に起きた最初のイベントが生検によるアグレッシブリンパ腫との診断だった場合を,形質転換と定義した。主要評価項目は形質転換の累積ハザードと転換後の生存とした。

結果

濾胞性リンパ腫患者10,001人について情報が利用可能であり,このうち8,116人が解析可能だった。509件の形質転換が報告された。追跡期間の中央値は87ヶ月(range 1–221; 2.5–97.5th percentile 5–160)で,形質転換の10年間累積ハザードは7.7% (95% CI 6.9–8.5)だった。リツキシマブを投与された患者における10年間累積ハザードは5.2% (95% CI 4.5–6.2)で,投与されていない患者では8.7% (7.2–10.6),ハザード比は0.73(95% CI 0.58–0.90; p=0.004)だった。また,導入療法でのみリツキシマブを投与された患者では5.9%(95% CI 5.0–7.0),導入療法と維持療法でリツキシマブを投与された患者では3.6%(95% CI 2.3–5.5),ハザード比は0.55(95% CI 0.37–0.81; p=0.003)だった。この結果は多変量解析でも確認された(P=0.016)。形質転換した509人中287人の死亡が記録されており,形質転換後の10年生存率は32%(95%CI 26-38)だった。形質転換後の生存に関して,リツキシマブを投与されなかった患者,導入療法でのみ投与された患者(HR 0.94, 95% CI 0.69–1.28; p=0.70),導入療法と維持療法で投与された患者(0.96, 0.58–1.61; p=0.88)の間に差はみられなかった。

考察

リツキシマブを使うことで,最初のイベントとしての形質転換のリスクを減らせる可能性がある。今回の結果は,現在リツキシマブを使っている患者に対して,リツキシマブ導入前と比較して形質転換のリスクが低くなっていることを伝える必要があるということを支持する。

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