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限局期、予後不良群のホジキンリンパ腫治療では、PETガイドにより放射線治療を省略できるかもしれない (GHSG HD17 trial)

PET-guided omission of radiotherapy in early-stage unfavourable Hodgkin lymphoma (GHSG HD17): a multicentre, open-label, randomised, phase 3 trial
Lancet Oncol. 2021 Feb;22(2):223-234. doi: 10.1016/S1470-2045(20)30601-X.
PMID: 33539742 DOI: 10.1016/S1470-2045(20)30601-X

背景
化学療法と放射線治療からなる集学的治療は、限局期予後不良群のホジキンリンパ腫における標準的な治療である。しかし、放射線治療は長期の合併症をもたらす可能性があり、この点は特に懸念される。というのも、ホジキンリンパ腫は診断時年齢が約30歳と若年者に多いからである。著者らはGerman Hodgkin Study Group HD17 trialにおいて、eBEACOPP 2コース +ABVD 2コース (2+2)が終了した後にcomplete metabolic responseを達成した患者は有効性を損なうことなく放射線治療を省略できるかを調べた。

方法
今回の試験は多施設共同・オープンラベル・ランダム化第3相試験であり、ドイツ、スイス、オーストリア、オランダの224の病院と個人開業医が参加した。新たに限局期予後不良群のホジキンリンパ腫(全ての組織型)と診断された患者(年齢18〜60歳)を登録した。対象患者は2+2レジメンの後に30 Gyのinvolved-field radiotherapyを行う群(標準的集学的治療群)、または2+2レジメン終了後のPETが陽性だった場合にのみ30 Gyのinvolved-field radiotherapyを追加する群(PET4ガイド治療群)のいずれかに1:1の割合でランダムに割り付けられた。ランダム化は、センターでminimisation methodを用いて行い、7つの因子で層別化した(施設、年齢、性別、臨床症状、病変の局在、アルブミン濃度、バルキー病変)。また、患者と担当医師はPET4のcentral reviewが完了するまで治療の割当を伏せられた。
今回提示する最終解析の第一の目的は、PET4ガイド戦略がper-protocol解析で主要評価項目である無増悪生存の非劣勢を示すことである。著者らは、非劣勢を2群間の5年推定無増悪生存率の差(絶対値)が8%と定義した。安全性解析は、intention-to-treat populationで実施した。この試験はClinicalTrials.govに登録されている(NCT01356680)。

結果
2012年1月13日から2017年3月21日までの間に、著者らは1,100人の患者を登録し、標準的集学的治療群(n=548)またはPET4ガイド治療群(n=552)のいずれかにランダムに割り付けた; 各群2人がランダム化に不適格と判明した。
フォローアップ期間の中央値は46.2ヶ月(IQR 32.7〜61.2)で、5年無増悪生存率は標準的集学的治療群で97.3% (95% CI 94.5〜98.7)、PET4ガイド治療群で95.1% (92.0〜97.0)だった(ハザード比 0.523 [95% CI 0.226〜1.211])。両群間の差は2.2% (95% CI -0.9〜5.3)であり、非劣勢マージンの8%を除外した。
grade 3〜4の急性の血液学的有害事象で頻度が高かったものは白血球減少(標準的集学的治療群 528人中436人 [83%] vs PET4ガイド治療群 529人中443人 [84%])と血小板減少(139人 [26%] vs 176人[33%])だった。また、急性の非血液学的毒性で頻度が高かったものは感染症(32人 [6%] vs 40人 [8%])と悪心・嘔吐 (38人 [7%] vs 29人 [6%])だった。放射線治療に関連した急性の有害事象で頻度が高かったものは嚥下障害(26人 [6%] vs 3人 [2%])と粘膜炎 (9人 [2%] vs 0人)だった。重篤な有害事象は、集学的治療群では546人中161人 (29%)で合計229件発生し、PET4ガイド治療群では550人中164人 (30%)で合計235件発生した。PET4ガイド治療群において、想定されていなかった重篤な有害事象(感染症)が疑われる死亡例が1例あった。

考察
新たに診断された限局期予後不良群のホジキンリンパ腫患者においては、2+2レジメンの化学療法終了後のPETで陰性だった場合には、地固めの放射線治療を省略しても臨床的な有効性を損なうことはなく許容される。そのため、PET4ガイド治療は、放射線治療の晩期障害リスクに曝される患者を減らす可能性がある。

Funding: Deutsche Krebshilfe.