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自家幹細胞移植を予定していない新規診断骨髄腫患者を対象とした、KRdとVRdの比較第3相試験(ENDURANCE trial)

Carfilzomib or bortezomib in combination with lenalidomide and dexamethasone for patients with newly diagnosed multiple myeloma without intention for immediate autologous stem-cell transplantation (ENDURANCE): a multicentre, open-label, phase 3, randomised, controlled trial
Lancet Oncol. 2020 Oct;21(10):1317-1330. doi: 10.1016/S1470-2045(20)30452-6. Epub 2020 Aug 28.
PMID: 32866432 PMCID: PMC7591827 (available on 2021-10-01) DOI: 10.1016/S1470-2045(20)30452-6

背景
ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンの併用 (VRd)は、新規に診断された多発性骨髄腫の標準治療である。次世代プロテアソーム阻害薬であるカルフィルゾミブと、レナリドミド、デキサメタゾンの併用 (KRd)は、第2相試験において期待の持てる有効性を示し、VRdと比較して治療成績を改善させる可能性がある。著者らは、新規に診断された多発性骨髄腫患者のうち、直ちに自家幹細胞移植 (ASCT)を行うことが検討されていない患者において、KRdレジメンがVRdレジメンよりも優れているかを評価することを目的とした。

方法
今回の試験(ENDURANCE trial; E1A11)は多施設共同・オープンラベル・第3相のランダム化比較試験であり、新規に多発性骨髄腫と診断された18歳以上の患者で、近日中のASCTの適応がないか、または予定されていない患者を募った。参加者の募集は、米国の地域のがん治療施設または大学医療センター、合計272施設で行った。
重要な選定基準は、高リスクの多発性骨髄腫ではないこと、ECOG-PSが0~2であることだった。参加患者は、置換ブロック法を用いて、一元的にVRdまたはKRdを用いた導入療法(36週間)のいずれかにランダムに1:1の比で割り当てられた。導入療法を完遂した患者は、2回目のランダム化でレナリドミドを用いた無期限の維持療法または2年間の維持療法のいずれかに1:1の比でランダムに割り付けられた。
1回目のランダム化においては、骨髄腫が増悪した際にASCTを行う意向があるかで層別化し、2回目のランダム化の際には導入療法により層別化した。治療割当は、治験担当者と患者のいずれに対してもマスクされなかった。
VRd群の患者は、以下の内容の治療を3週間サイクルで12サイクル受けた。

  • ボルテゾミブ 1.3 mg/m2 皮下注または静注 day 1, 4, 8, 11 (1~8サイクル目)、day 1, 8 (9~12サイクル目)
  • レナリドミド 25 mg 内服 day 1~14
  • デキサメタゾン 20 mg 内服 day 1, 2, 4, 5, 8, 9, 11, 12

KRd群の患者は、以下の内容の治療を4週間サイクルで9サイクル受けた。

  • カルフィルゾミブ 36 mg/m2 静注 day 1, 2, 8, 9, 15, 16
  • レナリドミド 25 mg 内服 day 1~21
  • デキサメタゾン 40 mg 内服 day 1, 8, 15, 22

主要評価項目は導入期における無増悪生存と、維持期における全生存とした。主要な解析はintention-to-treat populationで行い、安全性については割り付けられた治療を1回以上行った患者を対照に評価した。この試験はClinicalTrials.govに登録されている(NCT01863550)。参加者募集は完了し、維持期のフォローアップは現在も実施中である。

結果
2013年12月6日から2019年2月6日までの間に、1087人が登録し、VRdレジメン(n=542)またはKRdレジメン(n=545)のいずれかにランダムに割り付けられた。計画された2回目の中間解析では、フォローアップ期間中央値は9ヶ月(IQR 5~23)で、無増悪生存期間の中央値はKRd群が34.6ヶ月(95% CI 28.8~37.8)、VRd群が34.4ヶ月(30.1~推定不能)だった(ハザード比 [HR] 1.04, 95% CI 0.83~1.31; p=0.74)。全生存期間の中央値は、両群ともに到達しなかった。
grade 3-4の治療関連・非血液有害事象で頻度が高かったものとしては倦怠感 (VRd群 34/527 [6%] vs KRd群 29/526 [6%])、高血糖 (23 [4%] vs 34 6%])、下痢 (23 [5%] vs 16 [3%])、末梢神経障害 (44 [8%] vs 4 [<1%])、呼吸困難 (9 [2%] vs 38 [7%])、血栓症 (11 [2%] vs 26 [5%])があった。治療関連死亡はVRd群で2例 (<1%。心毒性1例、二次発癌1例)、KRd群で11例 (2%。心毒性4例、急性腎不全2例、肝毒性1例、呼吸不全2例、血栓症1例、突然死1例)あった。

考察
KRdレジメンは、VRdレジメンと比較して新規に診断された多発性骨髄腫患者の無増悪生存を改善せず、毒性が多かった。3剤併用のVRdレジメンは依然として標準または中等度リスク患者の導入療法における標準であり、4剤併用療法を開発する上での適切な治療バックボーンである。

Funding: US National Institutes of Health, National Cancer Institute, and Amgen.