メモ帳

自分用のメモです。

初回シスプラチン投与後の急性腎障害発症リスクの予測モデル

Development and Validation of a Risk Prediction Model for Acute Kidney Injury After the First Course of Cisplatin.
J Clin Oncol. 2018

目的
シスプラチン関連急性腎傷害 Cisplatin-associated acute kidney injury (C-AKI)はよくみられる。著者らは初回のシスプラチン投与後のC-AKI予測モデルの開発と検証を行った。

方法
2施設で2000年から2016年の間にシスプラチンを投与された患者から得られたデータを収集した。シスプラチン投与から14日以内に血清クレアチニンが0.3 mg/dL上昇した場合をC-AKIと定義した。C-AKIを主要評価項目とし、多変量ロジスティック回帰分析を用いてdevelopment cohort (DC)のデータからスコアモデルを作成し、validation cohort (VC)で検証した。

結果
C-AKIはDCの2,118人患者中13.6%、VCの2,363人中11.6%で発生した。C-AKIと有意に関連していたのは年齢(60歳以下と比較)が61歳~70歳(オッズ比 1.64; 95% CI 1.21~2.23; p = 0.001)、71歳~90歳(OR 2.97; 95% CI 2.06~4.28; p < 0.001)、シスプラチンの用量(≦ 100mgと比較)が101~150 mg (OR 1.58; 95% CI 1.14~2.19; p = 0.007)、> 150 mg (OR 3.73; 95% CI 2.68~5.20; p < 0.001)、高血圧の病歴あり(OR 2.10; 95% CI 1.54~2.72; p < 0.001)、血清アルブミン(> 3.5 g/dLと比較)が2.0~3.5 g/dL(OR 2.21; 95% CI 1.62~3.03; p < 0.001)だった。
シスプラチン投与前の推定糸球体濾過量とC-AKIリスクの間に有意な関連はみられなかった。DCとVCのスコアを基にしたモデルのC統計量(c-statistics)は0.72(95% CI 0.69~0.75)と0.70(0.67~0.73)だった。スコアが0、3.5、8.5の場合、C-AKI発生率はそれぞれ0.03(95% CI 0.03~0.05)、0.12(0.11~0.14)、0.51(0.43~0.60)だった。

結論
患者の年齢、シスプラチン用量、高血圧、血清アルブミンを用いたスコアに基づいたモデルはC-AKIを予測した。

未治療の濾胞性リンパ腫患者に対するR-CHOPとCHOP後地固め放射免疫療法の比較試験(SWOG-S0016) 長期成績の報告

Continued Excellent Outcomes in Previously Untreated Patients With Follicular Lymphoma After Treatment With CHOP Plus Rituximab or CHOP Plus 131I-Tositumomab: Long-Term Follow-Up of Phase III Randomized Study SWOG-S0016.
J Clin Oncol. 2018

目的
SWOG S0016試験は未治療の濾胞性リンパ腫患者を対象に、R-CHOPとCHOP-RIT(CHOPの後に131I-tisitumomabによる放射免疫療法で地固めを行う)の安全性と有効性を比較した第3相試験である。
長期成績を理解することで、濾胞性リンパ腫に対する新しい治療レジメンの性能を評価することができる。

患者と方法
2001年から2008年までの間に未治療の濾胞性リンパ腫患者531人を無作為にR-CHOP群(6サイクル実施)とCHOP-RIT群(6サイクル実施)に割り付けた。進行期患者(bulky病変のある2期と、3期または4期)が対象で、病理学的グレード(1,2,3)はグレードに関わらず適格とした。

結果
観察期間中央値は10.3ヶ月で、推定10年無増悪生存率と全生存率はそれぞれ49%と78%だった。CHOP-RIT群はR-CHOP群と比較して10年無増悪生存率が有意に良好(56% vs 42%; p = 0.01)だったが、10年全生存率については2群間で差がみられなかった(75% vs 81%; p = 0.13)。二次発癌(15.1% vs 16.1%; p = 0.81)、骨髄異形性症候群または急性骨髄性白血病(4.9% vs 1.8%; p = 0.058)の発症率については、2群間で差がみられなかった。二次発癌による10年間の推定累積死亡率は2群間で差がみられなかった(7.1% vs 3.2%; p = 0.16)が、骨髄異形成症候群または急性白血病による累積死亡率はCHOP-RITの方がR-CHOPよりも高かった(4% vs 0.9%; p = 0.02)。

結論
これらの優れた結果から、新たな治療法が長期観察で優位性を示すまで、免疫化学療法は依然としてハイリスク濾胞性リンパ腫患者の標準的な導入療法であるべきである。

 

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成人の未治療ITPに対するプレドニゾロン内服開始前にメチニルプレドニゾロン静注を行っても治療成績は改善しない

Pre-treatment with standard-dose intravenous methylprednisolone does not improve outcomes in newly diagnosed immune thrombocytopenia (ITP).
Eur J Haematol. 2018

目的
成人の免疫性血小板減少症 immune thrombocytopenia (ITP)に対するステロイド治療について、従来の用法用量(メチルプレドニゾロン 1 mg/kg/日)で治療を開始することの有益性と有害性を評価する。

方法
患者は多施設共同の前向き登録であるCARMEN registryから集め、新たにITPと診断され入院した血小板数 30 x 10^9 /L未満の患者を対象とした。
従来の用量のメチルプレドニゾロンconventional-dose methylprednisolone (CDMP)で治療を開始し、プレドニゾンの内服に移行した患者と、従来の用量のプレドニゾン内服conventional-dose oral prednisone (CDOP)だけで治療した患者を比較した。
主要評価項目は治療に反応するまでの時間とした。副次評価項目は完全奏功を達成するまでの時間、奏効率、完全奏効率、入院期間、有害反応の出現とした。プロペンシティスコアと静注免疫グロブリン投与で調整した上で解析した。

結果
対象となったのは87人で、治療に反応がみられるまでの時間の中央値はCDMP群で3日、CDOP群で4日だった(調整ハザード比 [aHR]: 1.35; 95% CI: 0.76~2.41)。CDMP群は完全奏功達成までの時間が短かった(aHR 2.29; 95% CI: 1.20~4.36)。副次評価項目については、2群間で差はみられなかった。

結論

成人のITPにおいて、従来量のメチルプレドニゾロンで治療を開始しても、プレドニゾン内服のみでの治療と比較して有意な有益性は得られなかった。

 

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移植適応のない未治療多発性骨髄腫を対象とした、レナリドミド+低用量デキサメタゾンの第3相試験

Final analysis of survival outcomes in the phase 3 FIRST trial of up-front treatment for multiple myeloma
Blood 2018;131:301-310

今回のFIRST試験の最終解析では、新規に診断された多発性骨髄腫(NDMM)患者で移植の適応が無く、レナリドミドと低用量デキサメタゾン(Rd)で骨髄腫が進行するまで治療された患者(Rd continuous)、Rdで72週間治療された患者(18サイクル; Rd18)、メルファラン、プレドニゾン、サリドマイドで治療された患者(MPT; 72週間)を対象に、生存成績を検討した。

主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)とした。全生存期間(OS)は重要な副次評価項目である(最終解析は追跡期間60ヶ月以上と予め規定されていた)。
患者は無作為にRd continuous (n = 525)、Rd18 (n = 541)、MPT (n = 547)に割り付けられた。観察期間の中央値は67ヶ月で、PFSはRd continuousの方がMPTよりも有意に長かった(ハザード比[HR] 0.69; 95%信頼区間[CI]0.59~0.79; p < 0.00001)。また、Rd18と比較しても同様にPFSが長かった。OSの中央値はRd continuousの方がMPTよりも10ヶ月長く(59.1ヶ月 vs 49.1ヶ月; HR 0.78; 95% CI 0.67~0.92; p = 0.0023)、Rd18との間には有意な差がなかった(62.3ヶ月)。完全奏功またはvery good partial responseを達成した患者において、Rd continousはRd18と比較して次の治療までの期間が中央値で30ヶ月以上長かった(69.5ヶ月 vs 39.9ヶ月)。セカンドラインの治療を受けた患者の半数以上がボルテゾミブベースの治療を受けた。セカンドライン治療の結果は、Rd continuousまたはRd18の後にボルテゾミブを投与された患者の方がMPTよりも良好だった。二次発癌を含めて、新たな安全上の懸念事項はみられなかった。

Rd continuousによる治療はMPTと比較して生存成績を有意に改善し、この結果は移植適応の無いNDMM患者においてRd continuousが標準治療となることを支持している。

 

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移植適応のない未治療多発性骨髄腫を対象とした、レナリドミド+低用量デキサメタゾンの第3相試験

Final analysis of survival outcomes in the phase 3 FIRST trial of up-front treatment for multiple myeloma
(Blood 2018;131:301-310)

今回のFIRST試験の最終解析では、新規に診断された多発性骨髄腫(NDMM)患者で移植の適応が無く、レナリドミドと低用量デキサメタゾン(Rd)で骨髄腫が進行するまで治療された患者(Rd continuous)、Rdで72週間治療された患者(18サイクル; Rd18)、メルファラン、プレドニゾン、サリドマイドで治療された患者(MPT; 72週間)を対象に、生存成績を検討した。
主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)とした。全生存期間(OS)は重要な副次評価項目である(最終解析は追跡期間60ヶ月以上と予め規定されていた)。

患者は無作為にRd continuous (n = 525)、Rd18 (n = 541)、MPT (n = 547)に割り付けられた。観察期間の中央値は67ヶ月で、PFSはRd continuousの方がMPTよりも有意に長かった(ハザード比[HR] 0.69; 95%信頼区間[CI] 0.59〜0.79; p < 0.00001)。また、Rd18と比較しても同様にPFSが長かった。OSの中央値はRd continuousの方がMPTよりも10ヶ月長く(59.1ヶ月 vs 49.1ヶ月; HR 0.78; 95% CI 0.67〜0.92; p = 0.0023)、Rd18との間には有意な差がなかった(62.3ヶ月)。完全奏功またはvery good partial responseを達成した患者において、Rd continousはRd18と比較して次の治療までの期間が中央値で30ヶ月以上長かった(69.5ヶ月 vs 39.9ヶ月)。セカンドラインの治療を受けた患者の半数以上がボルテゾミブベースの治療を受けた。セカンドライン治療の結果は、Rd continuousまたはRd18の後にボルテゾミブを投与された患者の方がMPTよりも良好だった。二次発癌を含めて、新たな安全上の懸念事項はみられなかった。

Rd continuousによる治療はMPTと比較して生存成績を有意に改善し、この結果は移植適応の無いNDMM患者においてRd continuousが標準治療となることを支持している。

 

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既成のウイルス特異的T細胞を用いた、同種造血幹細胞移植後にBKV、HHV-6、CMV、AdV、EBV感染症を合併したレシピエントの治療

Off-the-Shelf Virus-Specific T Cells to Treat BK Virus, Human Herpesvirus 6, Cytomegalovirus, Epstein-Barr Virus, and Adenovirus Infections After Allogeneic Hematopoietic Stem-Cell Transplantation

(J Clin Oncol 2017;35:3547-3557)

 

目的
同種造血幹細胞移植(HSCT)で治療された患者の治癒率が向上するのに伴って、重篤なウイルス感染症による治療関連死亡を減らす努力が必要である。条件を満たした第三者のドナーから作られたウイルス特異的なT細胞(VSTs)を輸注することで、HSCTのレシピエントに、すぐに使える既製品としての広域な抗ウイルス防御をもたらすことができるかもしれない。

 

方法
著者らは、頻度の高い5種類のウイルスに特異的なVSTsのバンクを作成した(Epstein-Barr Virus [EBV]、adenovirus [AdV]、cytomegalovirus [CMV]、BK virus [BKV]、human herpesvirus 6 [HHV-6])。今回の第2相試験において、のべ45の感染を合併した患者38人にVSTsが投与された。

 

結果
1回の輸注で、完全奏功または部分奏功の累積率は92%(95% CI 78.1%〜98.3%)だった。ウイルスの種類別では、BKV(n = 16)が100%、CMV(n = 17)が94%、AdV(n = 7)が71%、EBV(n = 2)が100%、HHV-6 (n = 3)が67%だった。臨床的なベネフィットは感染症を1つ合併していた患者31人、複数の感染症を合併していた7人で得られた。BKV関連の出血性膀胱炎を治療された14人のうち13人で、6週間後までに多量の血尿が完全に消失した。輸注は安全で、grade 1のGVHDが2人でみられた。epitope profilingによるVSTの追跡調査で、最長12週間にわたって第三者由来の機能的なVSTsが残っていることが示された。

 

結論
事前に作成したVSTsの使用は耐用性良好で安全であり、HSCT後の重症かつ薬剤抵抗性の感染症に対して有効で、2種類のウイルス(BKVとHHV-6)による感染にも有効だった。これらの感染症は、これまで既製品のターゲットとなっていなかった。さらに、VSTsが複数の特異性を持つことは抗ウイルス作用の範囲を広げ、結果として複数の感染症を合併した患者の治療を行いやすくなる。

未治療の慢性期慢性骨髄性白血病患者に対する、ボスチニブとイマチニブの第3相試験

Bosutinib Versus Imatinib for Newly Diagnosed Chronic Myeloid Leukemia: Results From the Randomized BFORE Trial
(J Clin Oncol 2018;36:231-237)

目的
ボスチニブはSRC/ABLキナーゼの両者を強力に阻害する薬剤であり、前治療に抵抗性または耐えられない、成人のフィラデルフィア染色体陽性の慢性骨髄性白血病 chronic myeloid leukemia (CML)に適応がある。著者らは、慢性期CMLのファーストライン治療としてのボスチニブとイマチニブの有効性と安全性を比較評価した。

方法
この試験は現在も実施中の多国間第3相臨床試験で、新たに慢性期CMLと診断された536人の患者を1:1の比でイマチニブ群(400 mg、1日1回。n = 268)とボスチニブ群(400 mg、1日1回。n = 268)に無作為に割り付けた。プロトコール毎に、典型的な転写産物(e13a2またはe14a2)によりフィラデルフィア染色体が確認された患者を対照として有効性を評価した。フィラデルフィア染色体陰性/BCR-ABL1陽性、フィラデルフィア染色体不明/非定型BCR-ABL1転写タイプはこの対象から除外した。

結果
主要評価項目である12ヶ月時点での分子遺伝学的大奏功major molecular response (MMR)達成率はボスチニブ群がイマチニブ群よりも有意に高く(47.2% vs 36.9%; P = 0.02)、12ヶ月時点での細胞遺伝学的完全奏功complete cytogenetic response (CCyR)達成率も同様だった(77.2% vs 66.4%; P = 0.0075)。累積頻度もボスチニブ群の方が良好で、治療の効果が出るのも早かった(MMR: ハザード比 1.34; P = 0.0137; CCyR: ハザード比 1.38; P < 0.001)。ボスチニブ群の4人(1.6%)とイマチニブ群の6人(2.5%)で移行期または急性期への進行がみられた。ボスチニブ群の22.0%とイマチニブ群の26.8%で治療が中止され、原因として最も多かったのは薬剤関連毒性だった(12.7% vs 8.7%)。grade 3以上の下痢(7.8% vs 0.8%)、ALTの上昇(19.0% vs 1.5%)、ASTの上昇(9.7% vs 1.9%)がボスチニブ群でより多く認められた。心血管毒性は多くなかった。

結論
ボスチニブで治療された患者はイマチニブを投与された患者と比べてMMRとCCyRの達成率が有意に高く、治療への反応が早かった。ボスチニブの方が消化器イベントとトランスアミナーゼ上昇が多く、これは既知の安全性プロファイルと一致していた。今回の結果から、ボスチニブが慢性期CMLのファーストライン治療として有効な可能性が示された。

 

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オビヌツズマブを用いた、濾胞性リンパ腫に対するファーストライン治療

Obinutuzumab for the First-Line Treatment of Follicular Lymphoma.

(N Engl J Med 2017; 377:1331-1344)

 

背景
リツキシマブをベースとした免疫化学療法は、濾胞性リンパ腫の治療成績を改善した。オビヌツズマブは糖鎖改変型タイプII抗CD20モノクローナル抗体である。著者らは、未治療の進行期濾胞性リンパ腫患者を対象に、リツキシマブをベースとした化学療法とオビヌツズマブをベースとした化学療法を比較した。

 

方法
患者はオビヌツズマブベースまたはリツキシマブベースの導入化学療法に無作為に割り付けられた。治療効果があった患者には、導入療法で投与されたものと同じ種類の抗体による維持療法が最長2年間行われた。主要評価項目は、責任医師により評価された無増悪生存率とした。

 

結果
合計1,202人の濾胞性リンパ腫患者が無作為割付された(各群601人ずつ)。観察期間の中央値は34.5ヶ月(range 0〜54.5)で、予定された中間解析でオビヌツズマブ群の方がリツキシマブ群よりも有意にリンパ腫増悪、再発、死亡のリスクが低いことが示された(推定3年無増悪生存率 80.0 % vs 73.3%。ハザード比 0.66; 95%信頼区間[CI] 0.51〜0.85; p=0.001)。独立にレビューされた無増悪生存率とtime-to-event end pointでも同様の結果が示された。奏功率は2群間で差がなかった(オビヌツズマブ群 88.5%、リツキシマブ群 86.9%)。grade 3〜5の有害事象はオビヌツズマブ群の方がリツキシマブ群よりも多く(74.6% vs 67.8%)、重篤な有害事象についても同様だった(46.1% vs 39.9%)。死亡に至った有害事象の割合は、2群間で有意な差がなかった(4.0% vs 3.4%)。最も多かった有害事象は投与関連反応で、責任医師によって大半はオビヌツズマブまたはリツキシマブによるものと判断された。(オビヌツズマブ 353/595[59.3%]; 95% CI 55.3〜63.2。リツキシマブ 292/597[48.9%]; 95% CI 44.9〜52.9; p<0.001)。悪心と好中球減少も多くみられた。オビヌツズマブ群の35人(5.8%)、リツキシマブ群の46人(7.7%)が死亡した。

 

結論
オビヌツズマブベースの免疫化学療法と維持療法は、リツキシマブベースの治療よりも無増悪生存期間が長かった。高gradeの有害事象はオビヌツズマブベースの化学療法において多くみられた。

 

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造血幹細胞移植患者を対象とした、letermovirによるCMV感染症予防の第3相試験

Letermovir Prophylaxis for Cytomegalovirus in Hematopoietic-Cell Transplantation
(N Engl J Med 2017; 377:2433-2444)

背景
サイトメガロウイルス cytomegalovirus(CMV)感染は、依然として同種造血幹細胞移植後によくみられる合併症である。letermovirはCMV-terminase complexを阻害する抗ウイルス薬である。

方法
今回の二重盲検化第3相試験で、著者らは18歳以上でCMV抗体陽性の移植レシピエントをletermovir群とプラセボ群に2:1の比で無作為に割り付けた。薬剤は経口または経静脈的に移植後14週間投与され、患者は移植施設とCMV再活性化リスクで層別された上で2群に割り付けられた。letermovirは480 mg/日(シクロスポリンを投与されている患者は240 mg/日)投与された。有意なCMV感染症(顕性感染症、あるいは先制攻撃的治療に至るようなCMVウイルス血症)を発症した患者は試験レジメンを打ち切られ、抗CMV治療を受けた。
主要評価項目は、無作為化の時点でCMV DNAが検出されなかった患者のうち、移植後24週間以内に臨床的に有意なCMV感染症を合併した患者の割合とした。試験から脱落した患者や、24週時点で評価項目に関するデータが得られなかった患者は主要評価項目のイベントが発生したものとして扱った。患者は移植後48週間追跡した。

結果
2014年6月から2016年3月までの間に、合計565人が無作為化され、中央値で移植9日後からletermovirまたはプラセボを投与された。無作為化の時点でCMV DNAが検出されなかった495人の中で、臨床的に有意なCMV感染症を合併した、または移植後24週後までに合併したと取り扱われた患者の数はletermovir群の方がプラセボ群よりも有意に少なかった(122/325[37.5%] vs 103/170[60.6%]、P<0.001)。
有害事象の頻度と重症度は、2群で明らかな差はみられなかった。嘔吐がletermovir群の18.5%、プラセボ群の13.5%でみられ、浮腫が14.5%、9.4%、心房細動または心房粗動が4.6%、1.0%みられた。骨髄毒性と腎毒性はletermovir群とプラセボ群で有意な差がなかった。移植後48週時点での死亡率はletermovir群で20.9%、プラセボ群で25.5%だった。

結論
letermovirの予防投与は、プラセボと比較して臨床的に有意なCMV感染症のリスクを有意に低下させた。letermovirの有害事象は、gradeの低いものが多かった。

 

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MGUS患者の長期追跡結果

Long-Term Follow-up of Monoclonal Gammopathy of Undetermined Significance

(N Engl J Med 2018; 378:241-249)

背景
Monoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS)は、50歳以上の人の約3%でみられる。

方法
著者らは、1960年から1994年までの間にMayo ClinicでMGUSと診断されたsoutheastern Minnesotaに住む1,384人の患者について検討した。観察期間の中央値は34.1年(range 0.0〜43.6)だった。主要評価項目は、多発性骨髄腫やその他の形質細胞異常、リンパ球系異常への進行とした。

結果
14,130人年の観察期間中、147人(11%)でMGUSが進行し、この割合は対照集団と比較して6.5倍(95%信頼区間[CI] 5.5〜7.7)高かった。他の原因による死亡を除外した進行率は10年で10%、20年で18%、30年で28%、35年で36%だった。IgM MGUSの患者においては、血清中のfree light-chain比(κ鎖とλ鎖の比)の異常と血清中のM蛋白高値(≥1.5 g/dL)の2つのリスク因子が進行と関連しており、進行率はリスク因子が2つあると20年で55、1つでは41%、どちらのリスク因子もない患者では19%だった。
non-IgM MGUSでは、リスク因子2が2つある患者では進行率は20年で30%、1つでは20%、1つもない患者では7%だった。MGUS患者の生存率は、年齢と性別をマッチさせたMinnesota住民からなる対照集団と比較して、生存期間が短かった(中央値 8.1年 vs 12.4年、p < 0.001)。

結論
IgM MGUSとnon-IgM MGUSの間で、疾患進行リスクに有意な差がみられた。MGUS患者では、年齢と性別をマッチさせた対照集団と比較して全生存期間が短かった。

 

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