後天性血栓性血小板減少性紫斑病に対するCaplacizumabのプラセボ対照ランダム化比較試験
Caplacizumab Treatment for Acquired Thrombotic Thrombocytopenic Purpura.
N Engl J Med. 2019 Jan 24;380(4):335-346.
PMID: 30625070, DOI: 10.1056/NEJMoa1806311
背景
後天性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,von Willebrand因子を切断するプロテアーゼであるADAMTS13が免疫学的機序により欠乏する結果,von Willebrand因子の血小板や微小血栓への接着が制御できず,血小板減少,溶血性貧血,組織虚血に至る。Caplacizumabはヒト化抗von Willebrand因子抗体であり,2価の単一可変ドメイン免疫グロブリン断片で,von Willebrandマルチマーと血小板の相互作用を抑制する。
方法
今回の研究は二重盲検化比較試験であり,著者らはTTP患者145人をランダムに2群に割り付け,血漿交換中とその後30日間の期間にcaplacizumab(ローディングとして10 mgを経静脈的にボーラス投与,その後1日10 mgを皮下投与)またはプラセボのいずれかを投与した。プライマリアウトカムは血小板数が正常化(かつ5日以内に血漿交換を中止)するまでの期間とした。主要なセカンダリアウトカムはTTP関連死亡,TTP再発,または試験治療期間中の血小板血栓イベントの複合,試験期間中のTTP再発,治療抵抗性TTP,臓器傷害マーカーの正常化とした。
結果
血小板数が正常化するまでの期間はcaplacizumab群の方がプラセボ群よりも有意に短く(2.69日[95%信頼区間 1.89〜2.83] vs 2.88日[2.68〜3.56],P=0.01),caplacizumabを投与された患者は血小板数が正常化した割合がプラセボの1.55倍だった。複合イベントのいずれかがみられた患者の割合はcaplacizumab群の方がプラセボ群よりも74%低かった(12% vs 49%,P<0.001)。試験期間中にTTPが再発した患者の割合は,caplacizumab群の方が67%低かった(12% vs 38%,P<0.001)。治療抵抗性となった患者は,caplacizumabではおらず,プラセボ群で3人だった。caplacizumab群ではプラセボ群と比較して血漿交換の回数が少なく,入院期間が短かった。最も多かった有害事象は皮膚粘膜の出血で,caplacizumab群では65%,プラセボ群では48%で報告された。試験の治療期間中に,プラセボ群の3人が死亡した。治療期間が終わった後,caplacizumab群の1人が脳虚血で死亡した。
結論
TTP患者において,caplacizumabを使って治療することで血小板数が正常化するまでの期間が短縮された。また,プラセボと比較して治療期間中のTTP関連死亡・TTP再発・血栓塞栓イベントの頻度が低く,試験期間中のTTP再発率が低かった。
(Funded by Ablynx; HERCULES ClinicalTrials.gov number, NCT02553317)