メモ帳

自分用のメモです。

再発・難治性骨髄腫患者に対するポマリドミド、デキサメタゾン、ダラツムマブの併用療法

Daratumumab plus pomalidomide and dexamethasone in relapsed and/or refractory multiple myeloma.
Blood. 2017 Aug 24;130(8):974-981.

www.ncbi.nlm.nih.gov

2種類以上の前治療歴があり、直近の治療が効かなかった再発・難治性の多発性骨髄腫の患者を対象に、ポマリドミドとデキサメタゾンの併用(pom-dex)にダラツムマブを加えたレジメンを評価した。ダラツムマブ16 mg/kgを推奨されたスケジュールで投与し、ポマリドミド 4 mg/日を28日毎に21日間、デキサメタゾン 40 mgを週1回投与した。主要評価項目は安全性とした。全奏功率(ORR)と、次世代シークエンスにより評価した微小残存病変(MRD)を副次評価項目とした。


患者(N=103)の前治療歴の中央値は4(range 1〜13)で、76%は3種類以上の治療を受けていた。ダラツムマブとpom-dexの併用に関する安全性はpom-dexだけで治療した場合と差がなかったが、例外としてダラツムマブに特異的な投与関連反応が50%でみられ、好中球減少の頻度も高かったが感染症の頻度は上昇しなかった。grade 3以上の有害事象で頻度が高かったのは好中球減少(78%)、貧血(28%)、白血球減少(24%)だった。全奏功率は60%で、サブグループ間で差はみられなかった(2剤抵抗性患者における奏功率は58%)。完全奏功以上の治療効果が得られた17人中29%は10^-5の閾値でMRDが陰性であり、治療効果の持続期間は中央値に達しなかった(95%信頼区間 13.6ヶ月〜未到達)。観察期間の中央値は13.1ヶ月で、無増悪期間の中央値は8.8ヶ月(95% CI 4.6〜15.4)、全生存期間の中央値は17.5ヶ月(13.3〜未到達)だった。推定の12ヶ月生存率は66%(55.6〜74.8)だった。


好中球減少を除いて、ダラツムマブとpom-dexの併用の安全性は個々の治療と変わらなかった。複数の治療歴がある患者においても、深く、持続する治療効果が認められた。

腎障害を伴った再発・難治性の多発性骨髄腫患者におけるポマリドミド+低用量デキサメタゾン併用療法

Pomalidomide Plus Low-Dose Dexamethasone in Patients With Relapsed/Refractory Multiple Myeloma and Renal Impairment: Results From a Phase II Trial

J Clin Oncol 2018

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目的
腎障害(renal impairment; RI)は再発・難治性骨髄腫(RRMM)患者における治療の選択肢を制限する。今回、著者らは、中等度から重度のRI(血液透析を受けている患者を含む)があるRRMM患者を対象に、ポマリドミドと低用量デキサメタゾン(LoDEX)の併用療法を前方視的に研究した。

患者と方法
MM-013試験はヨーロッパにおける非比較第2相試験であり、3つの患者コホートを組み入れた: 中等度RI(コホートA; 推定糸球体濾過量 30〜45 mL/min/1.73m^2); 重度RI(コホートB; 推定糸球体濾過量 < 30 mL/min/1.73m^2)、重度RIで血液透析が必要(コホートC)。患者にはポマリドミド(4 mg/日、day1〜21)とLoDEX (20 mgまたは40 mg、週1回)を28日毎に投与した。主要評価項目は全奏功率とした。

結果
登録患者は81人(コホートA 33人、B 34人、C 14人)で、13人はデータ登録終了時点(2017年1月28日)でまだ治療を受けていた。全奏功率は順に39.4%、32.4%、14.3%で、効果の持続期間は14.7ヶ月、4.6ヶ月、コホートCは推定不能だった。重要なこととして、それぞれ100%、79.4%、78.6%の患者で骨髄腫のコントロールができた。観察期間の中央値は8.6ヶ月で、全生存期間の中央値は16.4ヶ月、11.8ヶ月、5.2ヶ月だった。complete renal responseはコホートAの18.2%においてのみ確認され、コホートCの患者は全て透析から離脱できなかった。grade 3または4の血液学的な治療関連有害事象と、治療関連有害事象によるポマリドミド投与中止の発生頻度はコホートCが高かった。ポマリドミドの薬物動態について、3つのコホート間で有意な差はみられなかった。

結論
ポマリドミド 4 mg/日と低用量デキサメタゾンの併用は中等度から重度のRIがあるRRMM患者に対して有効であり、RIがより重度で血液透析が必要な患者にも有効だった。安全性は3コホートいずれにおいても許容可能で、新しい安全シグナルはみられなかった。

未治療の骨髄腫患者に対するダラツムマブ、ボルテゾミブ、メルファラン、プレドニゾンの併用療法 (第3相試験)

ダラツムマブdaratumumab(ダラザレックス®)は、日本では2017年9月に承認されたばかりの新薬で、今のところ再発・難治性の多発性骨髄腫に適応があります。

 

Daratumumab plus Bortezomib, Melphalan, and Prednisone for Untreated Myeloma
N Engl J Med 2018;378:518-528

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背景
ボルテゾミブ、メルファラン、プレドニゾンの併用療法は自家幹細胞移植の適応が無い未治療の多発性骨髄腫患者における標準的な治療法である。ダラツムマブは、再発または治療抵抗性の多発性骨髄腫患者における標準的な治療レジメンとの併用で有効性が示されている。

方法
今回の第3相試験において、著者らは新たに多発性骨髄腫と診断され幹細胞移植の適応が無い患者706人をボルテゾミブ、メルファラン、プレドニゾンだけの治療(対照群)とダラツムマブを併用した治療(ダラツムマブ群)に無作為に割り付け、骨髄腫が増悪するまで治療を継続した。主要評価項目は無増悪生存率とした。

結果
事前に計画されていた中間解析の時点における観察期間の中央値は16.5ヶ月で、18ヶ月時点での無増悪生存率はダラツムマブ群で71.6%(95%信頼区間[CI] 65.5〜76.8)、対照群で50.2%(43.2〜56.7)だった(骨髄腫増悪または死亡に関するハザード比 0.50; 95% CI 0.38〜0.65; p < 0.001)。全生存率はダラツムマブ群で90.9%、対照群で73.9%(p < 0.001)で、完全奏功以上の効果がみられた率は42.6%と24.4%だった(p < 0.001)。ダラツムマブ群の22.3%では微笑残存病変(基準は白血球105個あたり腫瘍細胞が1個)が陰性で、対して対照群で陰性だったのは6.2%だった(p<0.001)。grade3または4の有害事象のうち頻度が高かったのは血液学的なもので、好中球減少(ダラツムマブ群39.9%、対照群38.7%)、血小板減少(34.4%、37.6%)、貧血(15.9%、19.8%)があった。grade 3または4の感染症はダラツムマブ群で23.1%、対照群で14.7%でみられた。各群の0.9%、1.4%で感染症のため治療が中止された。ダラツムマブに関連した投与関連反応は27.7%で発生した。

結論
新たに多発性骨髄腫と診断され幹細胞移植の適応が無い患者において、ダラツムマブとボルテゾミブ、メルファラン、プレドニゾンの併用療法はダラツムマブを併用しない治療と比較して骨髄腫の増悪または死亡のリスクを減らした。ダラツムマブを併用したレジメンはgrade 3または4の感染症と関連していた。

 

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再発または治療抵抗性のマントル細胞リンパ腫患者に対するacalabrutinibのシングルアーム、多施設共同第2相臨床試験

Acalabrutinib in relapsed or refractory mantle cell lymphoma (ACE-LY-004): a single-arm, multicentre, phase 2 trial

Lancet 2017

 

背景
ブルトン型チロシンキナーゼはマントル細胞リンパ腫の臨床的に妥当な治療ターゲットである。acalabrutinib (ACP-196)は高い選択性を持つブルトン型キナーゼ阻害剤であり、他の分子に対する活性を最小化するように開発された。

方法
今回のオープンラベル第2相試験では、再発または治療抵抗性のマントル細胞リンパ腫患者に経口のacalabrutinib(100 mg,1日2回)を投与し、リンパ腫が増悪するか許容できない毒性が出現するまで投与を継続した。主要評価項目はルガノ分類に基づいた全奏功率し、全参加者について安全性の解析も行った。

結果
2015年3月12日から2016年1月5日までの間に124人の再発または難治性マントルリンパ腫患者が登録され、全ての患者が治療を受けた。年齢の中央値は68歳だった。前治療歴の中央値は2(IQR 1-2)だった。観察期間の中央値は15.2ヶ月で、治療が奏功した患者は100人(81%)で、完全奏功を達成した患者は49人(40%)だった。カプランマイヤー法による奏功持続期間、無増悪生存期間、全生存期間の推定値はいずれも中央値に達しなかった。12ヶ月時点での奏功持続率、無増悪生存率、全生存率はそれぞれ72%(95% CI 62〜80)、67%(58〜75)、87%(79〜92)だった。有害事象で頻度の高かったものは主にgrade 1または2で、頭痛(47人[38%])、下痢(38人[31%])、倦怠感(34人[27%])、筋痛(26人[21%])だった。頻度の高いgrade 3以上の有害事象は好中球減少(13人[10%])、貧血(11人[9%])、肺炎(6人[5%])だった。心房細動がみられた症例はなく、grade 3以上の出血が1例でみられた。治療継続期間の中央値は13.8ヶ月だった。治療を中止したのは54人(44%)だった。中止した主な理由はリンパ腫の増悪(39人[31%])と有害事象(7人[6%])だった。

考察
acalabrutinibによる治療は再発または難治性のマントル細胞リンパ腫患者において持続的な治療が高率で可能であり、安全性は良好だった。これらの結果から、acalabrutinibが再発または難治性マントルリンパ腫患者の治療においてacalabrutinibが重要な役割を果たすことが示唆される。

Funding
Acerta Pharma, a member of the AstraZeneca Group.

 

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選択的な核外搬出阻害薬であるselinexorの再発・治療抵抗性骨髄腫に対する第2相試験

Selective Inhibition of Nuclear Export With Oral Selinexor for Treatment of Relapsed or Refractory Multiple Myeloma.

J Clin Oncol 2018, doi: 10.1200/JCO.2017.75.5207.

 

目的
selinexorは画期的な新薬で、exportin 1 (XPO1)を選択的に阻害し、腫瘍蛋白のmRNAの翻訳を抑制するだけでなく核の腫瘍抑制蛋白とグルココルチコイド受容体を保持して腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する。著者らは、ほとんどの利用可能な薬剤に治療抵抗性の多発性骨髄腫患者を対象に、selinexorと低用量のデキサメタゾンの併用を研究した。

患者と方法
今回の第2相試験ではボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、レナリドミド、ポマリドミドに抵抗性(4剤抵抗性)と、さらに抗CD38抗体に抵抗性(5剤抵抗性)の骨髄腫患者を対象に、selinexor 80 mgとデキサメタゾン 20 mg (どちらも週2回内服)を評価した。主要評価項目は全奏功率(ORR)とした。

結果
79人の患者のうち、48人が4剤抵抗性で31人が5剤抵抗性の骨髄腫だった。前治療レジメン数の中央値は7種類だった。ORRは21%で、4剤抵抗性と5剤抵抗性で差が無かった(21%、20%)。t(4;14)、t(14;16)、del(17p)を含む高リスク核型を持つ患者では、ORRは35%(6/17)だった。治療効果の持続期間の中央値は5ヶ月で、治療に反応した患者の65%が12ヶ月時点で生存していた。grade 3以上の有害事象で頻度が高かったものは血小板減少(59%)、貧血(28%)、好中球減少(23%)、低ナトリウム血症(22%)、白血球減少(15%)、倦怠感(15%)だった。41人(52%)で有害事象が治療に影響し、29人(37%)が薬剤を減量し、14人(18%)が治療を中止した。

結論
selinexorとデキサメタゾンの併用は過去に多くの治療歴があり治療選択肢が限られている治療抵抗性の骨髄腫患者において21%の全奏功率を示した。

 

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治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫に対する、Axicabtagene Ciloleucelを用いたCAR T細胞療法

Axicabtagene Ciloleucel CAR T-Cell Therapy in Refractory Large B-Cell Lymphoma.
N Engl J Med. 2017;377:2531-2544.

背景
第1相試験において、自家抗CD19キメラ抗原受容体T細胞療法であるaxicabtagene ciloleucel (axi-cel)は従来の治療が効かない治療抵抗性の大細胞型B細胞リンパ腫に効果を示した。

方法
今回の多施設共同第2相試験に著者らは、推奨される前治療を行ったにもかかわらず治療抵抗性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔原発B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫から移行したリンパ腫の患者111人を登録した。患者は低用量のシクロフォスファミドとフルダラビンによる前処置を受けた後、目標量である体重1kgあたり2 x 10^6の抗CD19 CAR T細胞が投与された。主要評価項目は奏効率(完全奏効率と部分奏効率の合計)とした。副次評価項目は全生存率、安全性、バイオマーカーの評価とした。

結果
登録された111人のうち、axi-celの作製に成功したのは110人(99%)で、投与されたのは101人(91%)だった。奏効率は82%で、完全奏効率は54%だった。観察期間の中央値は15.4ヶ月で、患者の42%は効果が持続し、40%は完全奏功の状態が持続した。18ヶ月時点における全生存率は52%だった。治療中に生じたgrade 3以上の有害事象のうち最も頻度が高かったものは好中球減少(78%)で、貧血(43%)、血小板減少(38%)が続いた。grade 3以上のサイトカイン放出症候群と神経学的イベントはそれぞれ13%、28%で生じた。患者のうち3人が治療中に死亡した。血液中のCAR T細胞レベルの高さと治療への奏功に関連がみられた。

結論
今回の多施設共同試験において、axi-celによるCAR T細胞療法を受けた治療抵抗性の大細胞型B細胞リンパ腫の患者では高い率で持続的な効果がみられ、安全性プロファイルとしては骨髄抑制、サイトカイン放出症候群、神経学的イベントがみられた。

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未治療の進行期ホジキンリンパ腫に対するブレンツキシマブ・ベドチン併用化学療法の第3相試験

Brentuximab Vedotin with Chemotherapy for Stage III or IV Hodgkin’s Lymphoma

N Engl J Med 2018;378:331-344


背景
ブレンツキシマブ・ベドチンは抗CD30抗体と薬剤の結合物であり、再発または難治性のホジキンリンパ腫に適応がある。


方法
著者らは、オープンラベルの多施設参加、無作為化第3相試験を実施し、治療歴のないstage 3または4の古典的ホジキンリンパ腫664人をブレンツキシマブ・ベドチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ダカルバジン(A+AVD)群、670人をドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン(ABVD)群にそれぞれ割り付けた。主要評価項目は改変した無増悪生存率(リンパ腫増悪、死亡、または不完全な奏功と次の抗腫瘍治療までの時間)とし、独立した評価委員会から判定を受けた。主な副次評価項目は全生存率とした。

結果
観察期間の中央値は24.6ヶ月で、2年時点の改変無増悪生存率はA+AVD群で82.1%(95%信頼区間[CI] 78.8〜85.0)、ABVD群で77.2%(73.7〜80.4)、差は4.9%だった(リンパ腫増悪、死亡、改変した増悪のハザード比 0.77; 95% CI 0.60〜0.98; p = 0.04)。A+AVD群で28例、ABVD群では39例がそれぞれ死亡した(暫定的な全死亡のハザード比 0.73; 95% CI 0.45〜1.18; p = 0.20)。全ての副次評価項目において、A+AVD群の方が優れている傾向がみられた。好中球減少はA+AVD群の58%、ABVD群の45%でみられ、A+AVD群における発熱性好中球減少症の発生率は予防的G-CSF投与を受けた83人の方が受けなかった患者より低かった(11% vs 21%)。末梢神経障害はA+AVD群の67%とABVD群の43%でみられ、A+AVD群で末梢神経障害がみられた患者の67%は最後のフォローアップ受診時点で症状の消失または改善がみられた。grade 3以上の肺毒性はA+AVD群では1%未満、ABVD群では3%でみられた。治療中の死亡の中で、A+AVD群の9例中7例は好中球減少と関連しており、ABVDの13例中11例は肺毒性と関連していた。

結論
A+AVDは進行期のホジキンリンパ腫患者の治療においてABVDと比較して、リンパ腫の増悪、死亡、または不完全な奏功と次の抗腫瘍治療を複合したリスクを2年時点で4.9%ポイント低下させ、優越性を示した。

 

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急性リンパ性白血病におけるCD19 CAR T細胞治療の長期フォロー結果

Long-Term Follow-up of CD19 CAR Therapy in Acute Lymphoblastic Leukemia

N Engl J Med 2018;378:449-459

 

背景
再発したB細胞性の急性リンパ性白血病(B-ALL)患者において、CD19特異的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は高い奏効率を示し、一部のグループでは長期にわたり寛解を得た。

方法
著者らはMemorial Sloan Kettering Cancer Center (MSKCC)において、B-ALLが再発した成人患者を対象に、19-28z CARを発現した自家T細胞を輸注する第1相試験を実施した。安全性と長期の治療成績を評価し、患者の臨床的、あるいは疾患の背景との関連も評価した。

結果
MSKCCで作製した19-28z CAR T細胞を輸注した患者は合計で53人だった。輸注後、重篤なサイトカイン放出症候群が53人中14人(26%; 95%信頼区間 15〜40)でみられ、1人が死亡した。

完全寛解を達成した患者は83%だった。観察期間の中央値は29ヶ月(range 1〜65)で、無イベント生存期間と全生存期間の中央値はそれぞれ6.1ヶ月(95% CI 5.0〜11.5)と12.9ヶ月(8.7〜23.4)だった。治療前の腫瘍量が少ない(骨髄中の芽球が5%未満)患者は寛解の持続区間と生存期間が著明に長く、無イベント生存期間と全生存期間の中央値はそれぞれ10.6ヶ月(5.9〜未到達)と20.1ヶ月(8.7〜未到達)だった。腫瘍量の多い患者(骨髄中の芽球が5%以上、または髄外病変がある)は、腫瘍量の少ない患者と比較してサイトカイン放出症候群と神経学的イベントの頻度が有意に高く、生存期間が短かった。

結論

コホート全体では、全生存期間の中央値は12.9ヶ月だった。腫瘍量の少ない患者では、全生存期間の中央値は20.1ヶ月で、19-28z T細胞投与後のサイトカイン放出症候群や神経学的イベントが腫瘍量の多い患者よりも少なかった。

 

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B細胞急性リンパ性白血病の小児、若年成人患者に対するtisagenlecleucelの第2相試験

Tisagenlecleucel in Children and Young Adults with B-Cell Lymphoblastic Leukemia.

N Engl J Med. 2018;378:439-448.

 

背景

単施設の第1-2a相試験において、抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞 tisagenlecleucelによる治療は、小児と若年成人の再発・難治性B細胞性急性リンパ性白血病(ALL)において高い完全寛解率を達成し、重篤な毒性と関連していたが毒性の大半は可逆性だった。

 

方法

著者らはCD19陽性の再発または難治性のB細胞ALLの小児または若年成人を対象に、tisagenlecleucelの25施設参加国際共同試験を実施した。主要評価項目は3ヶ月以内の全寛解率(完全寛解または血液学的回復が不完全な完全寛解)とした。

 

結果

今回の事前に計画された解析で、tisagenlecleucelを投与され、有効性の評価が可能だったのは75人だった。3ヶ月以内の全寛解率は81%だったが、治療に反応した全ての患者でフローサイトメトリーで評価した微小残存病変が陰性だった。無イベント生存率と全生存率は6ヶ月時点で73%(95%信頼区間[CI] 60〜82)と90%(81〜95)、12ヶ月時点で50%(35〜64)と76%(63〜86)だった。寛解の持続期間は中央値に達しなかった。20ヶ月時点においても、tisagenlecleucelが血液中に確認された。tisagenlecleucelと関連していると疑われたgrade 3または4の有害事象は患者の73%で起きた。サイトカイン放出症候群は患者の77%で起き、48%はトシリズマブを投与された。神経学的イベントは患者の40%で起き、対症療法で対処された。脳浮腫は報告されなかった。

 

結論

今回のCAR T細胞療法の国際共同試験で、tisagenlecleucelの単回投与は小児または若年成人の再発・難治性B細胞ALLに対して持続的な寛解をもたらし、重篤な毒性は一過性のものだった。

 

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マントル細胞リンパ腫に対する骨髄非破壊的移植の長期成績

Long-term outcome analysis of reduced-intensity allogeneic stem cell transplantation in patients with mantle cell lymphoma: a retrospective study from the EBMT Lymphoma Working Party

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マントル細胞リンパ腫(MCL)患者において、骨髄非破壊的移植 reduced-intensity allogeneic stem cell transplantation (RIST)は自家幹細胞移植後に再発した際のために温存される。しかし、RISTの長期的な有効性と治癒の可能性は明らかではない。著者らは、EBMTに報告されたRISTを受けたMCL患者の長期成績を検討した。
対象となった患者数は324人で、年齢の中央値は57歳(range 31〜70)、2000年から2008年までの間にRISTを受け、43%は3種類以上の前治療歴があり、46%は自家幹細胞移植を受けていた。非再発死亡率 non-relapse mortality (NRM)は100日時点で10%、1年時点で24%で、抗胸腺グロブリン ATG/ALGを投与された患者の方が低かった(RR 0.59; p = 0.046)。観察期間の中央値は72ヶ月(range 3〜159)で、118人が再発し、RISTから再発までの期間の中央値は8ヶ月(1〜117)だった。累積再発率は1年時点で25%、5年時点で40%で、化学療法抵抗性(HR 0.49; p = 0.01)、CAMPATHの使用(HR 2.59; p = 0.0002)と関連していた。4年無増悪生存率と全生存率はそれぞれ31%、40%だった。
RISTの長期無増悪生存率は約30%で、自家幹細胞移植後に再発した患者も含まれていた。