メモ帳

自分用のメモです。

ホジキンリンパ腫治療において、中間PET(interim-PET)が陰性でも治療終了後のPET評価を省略することはできない

Hodgkin lymphoma: a negative interim-PET cannot circumvent the need for end-of-treatment-PET evaluation.

Br J Haematol., PMID: 27539639

www.ncbi.nlm.nih.gov

著者らは、interim PET (int-PET)が陰性の場合に治療終了時のPET (end-PET)を省略できるか否かを評価するため、ホジキンリンパ腫 (HL)患者コホートの治療成績について評価した。ABVDで治療された76例が後方視的評価の対象となった。int-PETの結果に基づいて治療内容が変更されたケースはなかった。end-PETにおいて疑わしかった部位は、可能な限り生検での確認が行われた。

フォローアップ期間の中央値は58.9ヶ月だった。Lugano分類に従い、int-PETにおけるuptakeが肝臓よりも高い場合(score 4〜5)を陽性とし、end-PETではscore 3〜5を陽性とした。治療失敗は15例だった。int-PETの感度、特異度、陽性的中率(PPV)、陰性的中率、正確性はそれぞれ46.7%、85.2%、43.8%、86.7%、77.6%だった。end-PETについては、それぞれ80%、93.4%、75%、95%、90.8%だった。int-PETが陰性だった患者のうち8人で治療失敗があった。このうち6人はend-PETで治療反応無しと判断された。int-PET陰性患者の5年無増悪生存率(PFS)は87%、int-PET陽性患者では56%だった。end-PET陰性患者の5年PFSは96%、end-PET陽性患者では23%だった。int-PETから得られるPFSに関する予後予測情報はend-PETから得られるものより低かった(p=0.0048 vs p<0.0001)。Int-PETは治療失敗のうち半分しか予測できなかった。実地臨床においては、int-PET陰性をもってend-PETを不要とすることは出来ない。

リツキシマブ抵抗性indolentリンパ腫患者を対象とした、obinutuzumabとベンダムスチンの併用療法に関する第3相試験

記事名が長く、分かりづらくて申し訳ないです。。。

 

Obinutuzumab plus bendamustine versus bendamustine monotherapy in patients with rituximab-refractory indolent non-Hodgkin lymphoma (GADOLIN): a randomised, controlled, open-label, multicentre, phase 3 trial

Lancet Oncol 2016, http://dx.doi.org/10.1016/S1470-2045(16)30097-3

 

背景

indolent非ホジキンリンパ腫は、リツキシマブベースの治療で病勢を適切にコントロール出来ない場合、治療の選択肢は殆どなく、またその予後は不良である。著者らは、このような症例における、糖鎖改変型タイプIICD20モノクローナル抗体であるobinutuzumab (GA101)とベンダムスチンの併用療法を評価した。

 

方法

今回のオープンラベル無作為化第3相試験(GADOLIN)においては、組織学的に診断された18歳以上のリツキシマブ抵抗性indolent非ホジキンリンパ腫患者がヨーロッパ、アジア、北中米14カ国の83施設で登録された。患者はリンパ腫の亜型、リツキシマブ抵抗性のタイプ、前治療数、地域によって層別化され、hierarchial dynamic randomisation schemeobinutuzumab + ベンダムスチン群とベンダムスチン単剤投与群に割り付けられた。治療は28日毎に6サイクル予定された。obinutuzumab + ベンダムスチン群の用量はobinutuzumab 1000mg (cycle1day1,8,15cycle26day1) + ベンダムスチン 90mg/m^2 (day1,2)、ベンダムスチン単剤投与群の用量は120mg/m^2 (day1,2)とした。obinutuzumab + ベンダムスチン群においてリンパ腫の増悪がみられなかった患者はobinutuzumab 1000mg (2ヶ月毎投与)の維持療法を最長2年間にわたって受けた。primary endpointは無作為割付された全患者の無増悪生存率で、独立したreview committeeによって評価された。安全性はobinutuzumabまたはベンダムスチンを投与された全ての患者において評価された。

 

結果

2010415日から事前に計画されていた中間解析後の201491日に研究が停止されるまでの間に396人が無作為に割り付けられた(併用群 194人、単剤群 202)。観察期間は併用群で21.9ヶ月、単剤群で20.3ヶ月で、無増悪生存期間は併用群(中央値未到達、95% CI 22.5~推定不能)の方が単剤群(中央値14.9ヶ月、12.816.6)よりも有意に長かった(hazard ratio 0.5595% CI 0.400.74p=0.0001)grade3-5の有害事象は併用群では194例中132(68%)、単剤群では198例中123(62%)でみられた。grade3以上の有害事象で最も多かったのは好中球減少(併用群64[33%] vs 単剤群52[26%])、血小板減少(21[11%] vs 32[16%])、貧血(15[8%] vs 20[10%])infusion-related reaction(21[11%] vs 11[6%])だった。重篤な有害事象は併用群で74(38%)、単剤群で65(33%)にみえあれ、有害事象による死亡は両群12(6%)ずつみられた。有害事象に関連した死亡のうち、併用群での3例と単剤群での5例は治療に関連したものだった。

 

解釈

リツキシマブ抵抗性のindolent非ホジキンリンパ腫において、obinutuzumabとベンダムスチンの併用と、それに引き続くobinutuzumabによる維持治療は、ベンダムスチン単剤と比較して効果を改善し、毒性は管理可能であった。リツキシマブベースの治療後に再発した患者や、反応性が失われたケース患者における新たな治療選択肢である。

進行期ホジキンリンパ腫における、interim PET-CTを用いた治療レジメンの改変

Adapted Treatment Guided by Interim PET-CT Scan in Advanced Hodgkin’s Lymphoma

N Engl J Med 2016;374:2419-2429

背景

進行期ホジキンリンパ腫の治療をガイドすることを目的に、化学療法に対する早期の反応性を評価する方法としてのinterim PET-CTを評価した。

方法

新規に診断された古典的ホジキンリンパ腫患者を対象に、治療開始前にPET-CTを実施した後2サイクルのABVDを行い、interim PET-CTを実施した。画像は5-point scaleを用いてセントラルレビューを行った。ABVD 2サイクル終了後のPETが院生だった患者はABVD群とAVD群(ブレオマイシンを省略)のいずれかに無作為に割り付けられ、それぞれの治療をさらに4サイクル受けた。2サイクル終了後のPETで陽性だった患者はBEACOPPを受けた。interim PET-CTで陰性だった患者には放射線治療は推奨されなかった。主要評価項目はABVD群とAVD群の間の無増悪生存率の差で、非劣性比較を行い5%以上の差を除外した。

結果

1214例が登録され、interim PET-CTを受けた1119例のうち937例が陰性だった。観察期間の中央値は41ヶ月で、3年無増悪生存率と全生存率はABVD群で85.7%(95% CI, 82.1〜88.6)と97.2%(95.1〜98.4)、AVD群で84.4%(80.7〜87.5)と97.6%(95.6〜98.7)だった。3年無増悪生存率の差(ABVD-AVD)は1.6%(-3.2〜5.3)だった。呼吸器系の有害事象はABVD群の方がAVD群よりも多かった。interim PET-CTが陽性だった172例にBEACOPPが実施され、3回目のPET-CTでは74.4%が陰性だった。3年無増悪生存率は67.5%、全生存率は87.8%だった。全体で62例が試験中に死亡し(24例がホジキンリンパ腫により死亡)、3年無増悪生存率は82.6%、全生存率は95.8%だった。

結論

予め設定した非劣性マージンが短かったため非劣性を示せなかったが、interim PET陰性確認後にABVDレジメンからブレオマイシンを省略することでABVDを継続するよりも肺毒性の頻度が低下し、かつ有効性の有意な低下も認められなかった。

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(本文より引用)

初回化学療法が奏功した後histologic transformationを来した濾胞性リンパ腫症例の予後

Risk Factors and Outcomes for Patients With Follicular Lymphoma Who Had Histologic Transformation After Response to First-Line Immunochemotherapy in the PRIMA Trial.
J Clin Oncol. 2016 Jun 13. pii: JCO657163. [Epub ahead of print], PMID 27298402

 

目的

免疫化学療法が奏功した濾胞性リンパ腫 (follicular lymphoma, FL)患者を対象とした大規模な前向きコホート試験における、histologic transformation (HT)の予後を調べた。

患者と方法

PRIMA trialから無作為に割り当てられた1,018例を中央値で6年間にわたって観察したところ、463例で疾患の増悪がみられ、そのうち194例で組織学的な根拠があった。

結果

40例がHTとして矛盾せず、154例はtransformしていないFLだった。再燃までの期間は、それぞれ9.6ヶ月と22.8ヶ月だった(p=0.018)。経過観察期間の最初の1年間に実施された生検の37%がHTの58%に該当していた。診断時点でのperformance statusの変化、貧血、高LDH血症、B症状、histologic grade 3a、Follicular lymphoma International Prognostic Index高値、がHTのリスク因子と同定された。免疫化学療法やリツキシマブ維持療法に対する反応性の違い(完全奏功 vs 部分奏功)はHTのリスクに影響していなかった。救援療法の後、HTがみられた症例ではみられなかった症例と比較して完全奏効率が低く(50.3% vs 67.4%; p=0.03)、増悪率が高かった(28.2% vs 9.6%; p<0.001)。HT群の推定全生存期間は非HT群よりも短かった(中央値 3.8年 vs 6.4年、hazard ratio 3.9; 95% CI, 2.2-6.9)。自家幹細胞移植はHT群の予後を改善させたが(全生存期間中央値 未到達 vs 1.7年)、非HT群では改善させなかった。

結論

免疫化学療法が奏功したFLにおけるHTは早期のイベントであり、予後の悪さと関連していた。この予後の悪さを考えると、自家幹細胞移植を併用した強力な救援療法を実施した方が良いかもしれない。これらのデータから、FLの初回再燃時における生検の必要性が強調される。

再発濾胞性リンパ腫に対するレナリドマイド・リツキシマブ併用療法とレナリドマイド単独療法の比較試験(CALGB 50401 trial)

Randomized Trial of Lenalidomide Alone Versus Lenalidomide Plus Rituximab in Patients With Recurrent Follicular Lymphoma: CALGB 50401 (Alliance)

[JCO 2015;33:3635-3640]

目的 レナリドマイドとリツキシマブの併用(LR)は濾胞性リンパ腫(FL)に効果がある。この併用レジメンは、これまでに無作為化試験で評価されたことはない。

患者・方法 Cancer and Leukemia Group B (Alliance) 50401試験はリツキシマブ単独(375mg/m2 週1回投与を4週間)、レナリドマイド単独(1サイクル目は15mg/日 day1-21、day22-28は休薬。2〜12サイクル目は20mg/日 day1-21、day22-28は休薬)、リツキシマブ+レナリドマイド(LR)を比較した無作為化第2相試験である。ただしリツキシマブ単独群は症例集積不良(poor accrual)のため中止された。リツキシマブ投与歴のある再発濾胞性リンパ腫で、最後の投与から病勢増悪まで6ヶ月以上経過しているものが適格条件とされた。血栓症のリスクが高い患者では、アスピリンまたはヘパリンが推奨された。

結果 91例(レナリドマイド単独45例、LR 46例)が治療を受けた。年齢の中央値は63歳(34-89歳)で、58%がFLIPIのintermediateかhigh risk群に該当した。grade3/4の有害事象はレナリドマイド(L)群で58%、LR群で53%に発生し、grade4の有害事象は9%、11%でそれぞれみられた。grade3/4の有害事象には好中球減少(L群16% vs LR群20%)、疲労感(9% vs 13%)、血栓症(16% vs 4%, p=0.157)などがみられた。L群では36%、LR群では63で12サイクルの治療が完遂された。L単独は治療失敗と関連しており、22%が有害事象のために治療を中止した。両群とも、80%で治療強度が過剰だった。前奏効率は53%(CR 20%)、76%(CR 39%)だった(p=0.029)。中央値2.5年のフォローアップで、病勢増悪までの期間の中央値はL群が1.1年、LR群が2年だった(p=0.0023)。

結論 再発濾胞性リンパ腫において、LRはL単独よりも高い効果を示し毒性に差はみられなかった。

 

同種造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルス活性化は、急性骨髄性白血病再発リスクの低下と関連している。

Cytomegalovirus Reactivation after Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation is Associated with a Reduced Risk of Relapse in Patients with Acute Myeloid Leukemia Who Survived to Day 100 after Transplantation: The Japan Society for Hematopoietic Cell Transplantation Transplantation-related Complication Working Group.

(Biol Blood Marrow Transplant. 2015 Nov;21(11):2008-16.)

 

サイトメガロウイルス cytomegalovirus (CMV)感染症は同種造血幹細胞移植 allogeneic hematopoietic cell transplantation (allo-HSCT)後に合併する主要な感染症の一つである。近年、CMVの再活性化が急性骨髄性白血病 acute myeloid leukemia (AML)患者における再発リスクの低下と関連していると報告された。今回の研究の目的は、大規模な患者コホートを対象に、早期のCMV再活性化がallo-HSCT後の疾患再発の頻度に与える影響を評価することである。
著者らは、日本造血細胞移植学会の移植登録一元管理プログラムに登録されたデータベースを後方視的に調査した。2000年から2009年までの間にHLAが一致した血縁または非血縁ドナーから初めてのallo-HSCTを受けた患者で、かつ移植後100日まで再発なく生存した患者を対象とした。疾患の内訳は、AMLが1836人、急性リンパ性白血病 acute lymphoblastic leukemia (ALL)が911人、慢性骨髄性白血病 chronic myeloid leukemia (CML)が223人、骨髄異形成症候群 myelodysplastic syndrome (MDS)が569人だった。臍帯血移植を受けた患者は含まれていない。
生着時点からpp65アンチゲネミアを用いてモニターし、先制攻撃的治療preemptive therapyの開始をCMV再活性化と定義した。再発、非再発、全死亡に関するリスク因子の評価にはコックス比例ハザードモデルを用いた。CMV再活性化と急性または慢性GVHDは時間依存性の共変量として評価した。
CMV再活性化はAML患者において再発率低下と関連していた(20.3% vs 26.4%, P = 0.027)が、ALL、CML、MDS患者では関連がみられなかった。AML患者1836人の中で、CMV再活性化は795人(43.3%)でみられ、allo-HSCTから再活性化までの日数の中央値は42日だった。また、436人(23.7%)でAMLが再発し、再発までの日数の中央値は221日だった。grade II〜IVの急性GVHDは630人(34.3%)でみられた。その他のリスク因子も考慮した多変量解析で、3つの因子がAML再発リスクの低下と有意に関連しており、1つの因子が再発リスクの増加と関連していた。CMV再活性化(ハザード比[HR] 0.77; 95%信頼区間[CI] 0.59〜0.99)、非血縁ドナーからの移植(0.59; 0.42〜0.84)、慢性GVHD(0.77; 0.60〜0.99)が再発リスクの低下と関連しており、より進行した病状が再発リスクの増加と関連していた(HR 1.99; 95% CI 1.56〜2.52)。しかし、CMV再活性化は非再発死亡(HR 1.60; 95% CI 1.18〜2.17)、全死亡(1.37; 1.11〜1.69)の増加と関連していた。
原疾患の再発に対するCMV再活性化の有益な効果はAML患者で観察されたが、他の血液腫瘍患者では確認されなかった。しかし、この有益性は非再発死亡の増加により打ち消された。機序については不明であるが、CMV再活性化に対する免疫の活性化がこの関連において重要な役割を果たしている。それゆえに、ワクチンやT細胞の輸注など、免疫を増強するような治療が、非再発死亡率を最小化しつつCMV再活性化の効果を利用するのに役立つかもしれない。

 

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血清ビタミンD低値は濾胞性リンパ腫の予後不良因子かもしれない

Low Serum Vitamin D Levels Are Associated With Inferior Survival in Follicular Lymphoma: A Prospective Evaluation in SWOG and LYSA Studies

(JCO 2015;33:1482-1490)

目的 近年、ビタミンD高値がリンパ腫の予後を改善する可能性が報告されている。著者らは治療開始前のビタミンD濃度が濾胞性リンパ腫(FL)の予後に与える影響を評価した。

 

患者・方法 一つ目のコホートはSWOGコホートで、1998年から2008年までの間にSWOGの臨床試験(S9800、S9911、S0016)に参加した未治療のFL症例を対象とした。これらの臨床試験では、CHOPと抗CD20抗体(リツキシマブ、またはiodine-131 tositumomab)を併用した治療が行われた。もう一つのコホートはLYSAコホートで、2004年から2007年までの間にLYSA PRIMA試験に登録された未治療のFL患者が対象となった。これはリツキシマブを併用した化学療法の試験で、無作為にリツキシマブ維持療法群と無治療観察群への割付が行われた。ゴールドスタンダードの液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法を用いて、25-hydroxyvitamin Dを測定した。測定には、治療前に保存しておいた血清を使用した。主要評価項目は無増悪生存率(PFS)とした。

結果 SWOGコホートにおける観察期間の中央値は5.4年で、ビタミンD欠乏群(<20 ng/mL、コホート全体の15%)と比較した調整PFSと全生存率のハザード比は、1.97 (95%CI, 1.10-3.53)と4.16 (1.66-10.44)だった。LYSAコホートにおける観察期間の中央値は6.6年で、調整PFSと全生存率はビタミンD欠乏群(<10 ng/mL、コホート全体の25%)と比較してそれぞれ1.50 (0.93-2.42)と1.92 (0.72-5.13)だった。

結論 LYSAコホートでは統計学的有意差がみられなかったが、ビタミンD低値とFLの予後の関連が2つの独立したコホートで矛盾なく推定されたことにより、、血清ビタミンDがFLの生存率に関連する初めての調整可能な因子である可能性が示唆された。このようなセッティングでビタミン補充に効果があるかどうかを決定するためには、さらなる研究が必要である。

 

表在静脈血栓症患者における深部静脈・動脈血栓症リスクの検討

Risk of venous and arterial thrombotic events in patients diagnosed with superficial vein thrombosis: a nationwide cohort study

(Blood 2015;125:229-235)

近年、表在静脈血栓症(superficial vein thrombosis; SVT)は重篤な合併症であるかもしれないことが明らかとなってきた。しかし、深部静脈あるいは動脈血栓症が続発するリスクの大きさについては明らかでなかった。著者らはこの点について、SVTがルーチンに抗凝固薬で治療されていなかった時期を対象としたpopulation-based studyを行った。

デンマークの全ての病院をカバーしているDanish National Registry of Patientsを用いて、1980年から2012年までに初めてSVTと診断された患者10973例を同定した。年齢、性別、暦年の一致した515067人からなる対照コホートがデンマークの一般人口から選ばれた。深部静脈血栓塞栓症、急性心筋梗塞、脳梗塞、死亡をoutcomeとした。

観察期間の中央値は7年で、深部静脈血栓塞栓症の頻度は18.0/1000人・年(95% CI, 17.2-18.9)だった。最初の3ヶ月が最もリスクが高かった(3.4%; 95% CI, 3.0-3.7)。一般人口と比較すると、この期間のhazard ratioは71.4 (95% CI, 60.2-84.7)で、その後は減少し続けSVT発症から5年後には5.1(4.6-5.5)だった。急性心筋梗塞、脳梗塞、死亡のhazard ratioはそれぞれ1.2 (1.1-1.3)、1.3 (1.2-1.4)、1.3 (1.2-1.3)で、SVT発症後早期が最も高かった。これらのデータはSVTが予後に重大な影響を与えることを示しており、抗凝固療法に関する臨床判断の基礎を形作るかもしれない。

多発性骨髄腫の同種造血幹細胞移植後に生じる二次性MGUSについての検討

Secondary monoclonal gammopathy of undetermined significance after allogeneic stem cell transplantation in multiple myeloma

(Haematologica 2014;99:1846-1853)

多発性骨髄腫の経過において、初発時と異なるM蛋白のバンド:二次性のMGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)が生じるかもしれない。この単施設後ろ向き解析で、著者らは同種造血幹細胞移植後の二次性MGUS(移植後MGUS)の発生と 臨床的な関連について記述した。この研究には138例が登録され、延べ139回の同種造血細胞移植が実施された(39.6%がupfrontで、 60.4%が再発後に実施された)。

67例(48.2%)で二次性MGUSがみられ、発生までの期間中央値は6.9ヶ月だった。二次性MGUSの発生率は、同種移植後にvery good partial response以上の奏功がみられた症例の方が、partial response以下の症例よりも有意に高かった(54.8% vs 26.5%; p=0.005)。また、upfrontに移植を実施した場合の方が再発時に実施した場合よりも発生率が高く、血縁者ドナーから移植された症例の方が非血縁者ドナーの場合よりも 二次性MGUSの発生率が高かったが、T細胞除去を行った症例では発生率が低かった。移植後MGUSが発生した症例では無増悪生存期間、全生存期間が有意に優れていた(無増悪生存期間中央値 37.5ヶ月 vs 6.3ヶ月, p<0.001; 全生存期間中央値 115.3ヶ月 vs 31.0ヶ月; p=0.004)。

臨床医は、この現象が持つ良性の性質について知っておくべきであり、二次性MGUSは疾患の再発や増悪と混同されてはならない。

IPIスコアと胸水・心嚢液の有無が縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の予後に影響している可能性がある

Prognostic significance of pleural or pericardial effusion and the implication of optimal treatment in primary mediastinal large B-cell lymphoma: a multicenter retrospective study in Japan

(Haematologica 2014;99:1817-1825)

近年、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(mediastinal large B-cell lymphoma; PMLBCL)の予後は改善されてきた。しかし、放射線治療を含めて最適な治療戦略は未だ明らかではない。著者らは日本において新規にPMLBCLと診断された345例の臨床成績を後ろ向きに解析した。

観察期間の中央値は48ヶ月で、4年時点の全生存率はR-CHOP(n=187)、CHOP(n=44)、DA-EPOCH-R(n=9)、第2あるいは第3世代化学療法(n=45)、自家幹細胞移植併用化学療法(n=57)で治療された群でそれぞれ90%、67%、100%、91%、92%だった。R-CHOPで治療された群についてみると、IPIスコアが高いことと、胸水あるいは心嚢液貯留があることが、地固放射線療法を行わずR-CHOPのみで治療された症例の全生存率について予後不良因子であることが同定された(IPI: HR 4.23, 95% CI 1.48-12.13, p=0.007; 胸水・心嚢液: HR 4.93, 95% CI 1.37-17.69, p=0.015)。放射線治療を行わずR-CHOPのみで治療された症例をIPIスコアと胸水・心嚢液の有無を組み合わせて層別化すると、IPIスコアが低く胸水・心嚢液貯留がない症例が約半数で、治癒可能群と同定された(4年全生存率95%)。DA-EPOCH-Rレジメンはこれらの予後不良因子を克服するかもしれない。

IPIスコアと胸水・心嚢液貯留の存在というシンプルな予後予測因子がPMLBCLを層別化し、治療法選択の助けとなる可能性がある。