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バルキー病変の無い限局期DLBCL患者に対するR-CHOP単独での治療と放射線治療併用の比較試験

R-CHOP 14 with or without radiotherapy in nonbulky limited-stage diffuse large B-cell lymphoma
(Blood. 2018 Jan 11;131(2):174-181.)

限局期のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)における、化学療法後の放射線治療(RT)のベネフィットについては結論が出ていない。著者らは、バルキー病変のない限局期DLBCL患者を対象に無作為化試験を実施し、R-CHOPを行った後のRTのベネフィットについて評価した。
患者はLDH、ECOGパフォーマンスステータス、年齢、病期に基づくmodified IPI (International Prognostic Index)に従って分類された。
患者は4または6サイクルのR-CHOPを2週間毎に受け、(放射線治療に割り付けられた患者は)最後のR-CHOPが終了してから4週間後に合計40Gyの放射線治療を受けた。全ての患者はFDG-PETを用いて治療前、4サイクル目のR-CHOP終了後、治療終了後に評価を受けた。主要評価項目は無作為割付後の無イベント生存とした。
この試験では165人がR-CHOP群、169人がR-CHOP + RT群に割り付けられた。観察期間中央値64ヶ月のintention-to-treat解析の結果、2群間で5年無イベント生存率に統計学的有意差は認められなかった。それぞれの5年無イベント生存率は、R-CHOP群で89% ± 2.9%、R-CHOP + RT群で92% ± 2.4%だった(ハザード比 0.61、95%信頼区間 0.3〜1.2、p = 0.18)。全生存率についても2群間で差はみられず、R-CHOP群で92%(95%信頼区間 89.5〜94.5)、R-CHOP + RT群で96%(94.3〜97.7)だった(p値:有意差なし)。
バルキー病変の無い限局期のDLBCLにおいて、R-CHOP単独による治療の成績はR-CHOPと放射線治療の併用と比較して劣っていなかった。

 

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CD19特異的キメラ抗原受容体発現T細胞を投与された後の重症サイトカイン放出症候群の動態とバイオマーカー

Kinetics and biomarkers of severe cytokine release syndrome after CD19 chimeric antigen receptor-modified T-cell therapy.
(Blood. 2017 Nov 23;130(21):2295-2306.)

CD19特異的なキメラ抗原受容体発現T細胞(chimeric antigen receptor-modified (CAR) T cells)を投与した後にリンパ球を枯渇させるような化学療法を行うと、難治性のCD19陽性B細胞腫瘍の患者に顕著な抗腫瘍効果をもたらす。しかし、この治療はサイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome [CRS])と関連することがある。
CRSの理解は進んでおり、毒性を軽減するための戦略を評価するために、CRSの動態を明らかにして重症度を予測するような臨床的、あるいは検査上の指標が必要とされている。
著者らは、臨床所見とCD19 CAR T細胞を投与された成人患者133人における重症CRSの臨床所見とバイオマーカーの同定を報告する。対象患者の70%でCRSがみられ、grade 1〜3が62.5%(grade 1が26%、grade 2が32%、grade 3が4.5%)、grade 4と5がそれぞれ3.8%ずつだった。grade 4以上のCRSを発症したCRS症例の大半はCAR T細胞の用量を探索している際に起きた。
治療前患者背景の多変量解析では骨髄中の腫瘍量が多い、シクロフォスファミドとフルダラビンを用いたリンパ球枯渇、CAR T細胞の量が多い、リンパ球枯渇前の血小板減少、CD8+ central memory T細胞を選択しないCAR T細胞作製、がCRSの独立した予測因子と同定された。
重症のCRSは血行動態の不安定さ、毛細血管からの漏出、消耗性の凝固異常が特徴的だった。血管内皮活性化のバイオマーカーであるangiopoietin-2とvon Willebrand因子は重症CRSにおいて増加し、CRSを生じた患者ではリンパ球枯渇の前にも増加していた。
著者らは、重症CRSのリスクが高い患者においてCAR T細胞を投与した後早期に介入する研究をガイドするための分類アルゴリズムをこの論文で示している。
これらのデータは、効果的なCD19 CAR T細胞をより安全に円滑に適用するための介入試験のための枠組みを提供する。

 

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難治性B細胞リンパ腫に対するCART療法

Chimeric Antigen Receptor T Cells in Refractory B-Cell Lymphomas
(N Engl J Med. 2017 Dec 28;377(26):2545-2554.)


背景
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と濾胞性リンパ腫は免疫化学療法に抵抗性または治療後に再発し、移植の予後は不良である。CD19をターゲットにしたchimeric antigen receptor (CAR)で改変したT細胞を用いた治療はB細胞腫瘍で高い奏効率が報告されているが、B細胞リンパ腫に関するデータは限られている。

方法
著者らは、CD19をターゲットにしたCARを発現した自家T細胞(CTL019)を用いて、再発または治療抵抗性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と濾胞性リンパ腫の患者を治療した。治療への反応、治療の毒性、体内におけるCTL019の広がりと持続性、免疫の回復をモニターした。

結果
合計28人がCTL019による治療を受け、28人中18人で治療に反応がみられた(64%、95%信頼区間[CI] 44〜81)。完全奏功を達成したのはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫14人のうち6人(43%, 95% CI 18〜71)と、濾胞性リンパ腫14人のうち10人(71%, 95% CI 42〜92)だった。CTL019は患者の体内で増殖し、治療の奏功の有無に関わらず患者の血液と骨髄から検出された。持続的な寛解が達成され、観察期間中(中央値 28.6ヶ月)、治療が奏功したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者の86%(95% CI 33〜98)と、奏功した濾胞性リンパ腫患者の89%(95% CI 43〜89)で治療効果が持続した。重篤なサイトカイン放出症候群が5人(18%)でみられた。また、重篤な脳症が3人(11%)でみられ、このうち2人は自然に改善し、1人は致死的だった。6ヶ月以内に完全寛解を達成した患者全員が治療開始後7.7〜37.9ヶ月(中央値 29.3ヶ月)にわたって寛解を維持し、16人中8人で6ヶ月後以降にB細胞が再び出現し、10人中4人でIgGの、10人中6人でIgMのレベルがそれぞれ改善、10人中3人で18ヶ月後以降にIgAレベルが改善した。

結論
CTL019は再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と濾胞性リンパ腫の治療において有効である可能性がある。寛解が持続する割合が高く、一部の患者ではB細胞と免疫グロブリンの回復もみられた。約3分の1で一過性の脳症がみられ、5分の1で重篤なサイトカイン放出症候群がみられた。

 

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非ホジキンリンパ腫サバイバーにおいて、リンパ腫診断時点での心臓・血管の状態は治療後の心不全リスクと関連している

Preexisting Cardiovascular Risk and Subsequent Heart Failure Among Non-Hodgkin Lymphoma Survivors
(J Clin Oncol 2017;35:3837-3843)


目的
アントラサイクリンを用いた化学療法は、非ホジキンリンパ腫(NHL)サバイバーにおける心不全と関連している。著者らは、NHLサバイバーを対象に、診断時点で存在していた心血管リスクの心不全リスクへの寄与を理解することを目的とした。

方法
デンマークの登録データを用いて、2000年から2010年までにアグレッシブリンパ腫と診断された成人を選び出し、さらに性別と年齢を一致させた一般人口コントロールを選び出した。著者らは診断後9ヶ月経過後から2012年まで心不全を評価した。Cox回帰分析を用いて、NHLサバイバーと一般人口の間での心不全リスクの違いを評価した。NHLサバイバーにおいてのみ、診断時に存在していた心血管リスク(高血圧、脂質異常、糖尿病)と心血管疾患を確認した。多変量Cox回帰分析を用いて診断時の心臓・血管の状態とその後の心不全の関連のモデルを構築した。

結果
2,508人のNHLサバイバーと7,399人のコントロールが対象となり、NHLサバイバーでは心不全のリスクが一般人口コントロールと比較して42%高かった(ハザード比 1.42; 95%信頼区間 1.07 - 1.88)。NHLサバイバー(診断時の年齢中央値 62歳、56%が男性)において、115人が追跡中に心不全と診断された(追跡期間中央値 2.5年)。NHLと診断される前に、39%が1つ以上の心血管リスク因子を持っていて、NHLサバイバーの92%がアントラサイクリンを含むレジメンで治療されていた。多変量解析において、リンパ腫と診断される前に存在していた心疾患が心不全のリスク増大と関連しており(ハザード比 2.71、95%信頼区間 1.15 - 6.36)、一方で血管疾患は心不全と関連していなかった(p > 0.05)。心血管リスクを有していたNHLサバイバーはリスクの無かったサバイバーと比較して心不全のリスクが高くかった(リスク因子数 1 vs 0: ハザード比 1.63、95%信頼区間 1.07 - 2.47。2 vs 0: 2.86、1.56 - 5.23。joint P < 0.01)。

結論
一般人口を対照とした大規模なNHLコホート研究で、診断時点における心臓と血管の状態は心不全のリスク増大と関連していた。予防的なアプローチは、ベースラインの心臓・血管の状態を考慮に入れる必要がある。

 

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末梢性T細胞リンパ腫における、診断後24ヶ月時点の無イベント生存とその後の生存率との関連

International Assessment of Event-Free Survival at 24 Months and Subsequent Survival in Peripheral T-Cell Lymphoma
(J Clin Oncol 2018;35:4019-4026)

目的
末梢性T細胞リンパ腫(Peripheral T-cell lymphomas; PTCLs)は臨床的にはアグレッシブリンパ腫に分類される。著者らは以前に24ヶ月時点での無イベント生存(EFS24)がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫のエンドポイントとして臨床的に有用性であることを示した。今回著者らは、大規模な多施設コホートを対象にEFS24とその後の全生存率(subsequent OS)を評価した。

患者と方法
2000年から2012年までの間に新たにPTCLsと診断され、治癒を目的とした治療を受けた患者を対象とした。米国とスウェーデンの患者をinitial cohort、カナダの患者をreplication cohortとした。無イベント生存(EFS)は診断日から最初の治療を受けた後リンパ腫が増悪するまで、再治療、または死亡するまでの時間と定義した。subsequent OSはEFS24を達成してから、または24ヶ月以内にリンパ腫が増悪した場合はリンパ腫が増悪した時点から計測された。全生存率は年齢、性別、国を一致させた一般人口と比較した。

結果
775人が研究に登録され、診断時の年齢の中央値は64歳で63%が男性だった。結果はsimilar cohortとreplication cohortで類似しており、統合解析を実施した。患者の64%は24ヶ月以内にリンパ腫が増悪しており、subsequent OSの中央値は4.9ヶ月(5年全生存率 11%)だった。対称的に、EFS24を達成した患者の23%で達成後5年以内にリンパ腫が再発したが、EFS24を達成した後の全生存率は中央値に到達しなかった(5年全生存率 78%)。60歳以下の若年者では、EFS24達成後の予後はさらに良かった(5年全生存率 91%)。

結論
PTCLにおいて、EFS24は引き続く予後を層別した。最初の治療に抵抗性、または早期に再発したPTCL患者は非常に予後が悪かった。しかし、PTCL患者の3分の1以上は診断後2年間寛解を維持し、引き続く全生存率も有望であり、特に若年者では予後が良かった。このような予後の顕著な違いはPTCLについて患者と話をする際、研究をデザインする際、リスクを層別化する際にEFS24が有用であることを示唆している。

 

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中枢神経原発リンパ腫に対する地固め療法としての全脳照射と自家幹細胞移植の成績

Whole-brain radiotherapy or autologous stem-cell transplantation as consolidation strategies after high-dose methotrexate-based chemoimmunotherapy in patients with primary CNS lymphoma: results of the second randomisation of the International Extranodal Lymphoma Study Group-32 phase 2 trial

Lancet Haematology 2017;4:e510-e523

PMID: 29054815, DOI: dx.doi.org/10.1016/S2352-3026(17)30174-6

背景

International Extranodal Lymphoma Study Group-32 (IELSG32) 試験は国際共同第2相試験であり,新たに中枢神経(CNS)原発リンパ腫と診断された患者の治療における2つの鍵となるクリニカルクエスチョンを扱った試験である。1つ目無作為化の結果は,メトトレキサート,シタラビン,チオテパ,リツキシマブの併用レジメン(MATRixレジメン)が他の併用療法と比べて,導入療法としての治療成績が優れていることが示された。今回著者らは,全脳照射(WBRT)の代わりに(大量メトトレキサート投与をベースとした免疫化学療法を行った後の)地固め療法として実施した自家幹細胞移植併用骨髄破壊的化学療法の有効性を報告する。

方法

新たにCNS原発リンパ腫と診断されたHIV陰性,ECOG-PS 0〜3の患者(18〜70歳)を無作為に3群(group A, B, C)に割り付けた。

group A: メトトレキサート(3.5 g/m2,day1),シタラビン(2 g/m2,1日2回,day 2,3)

group B: group Aのレジメンに加えて,リツキシマブ(375 mg/m2,day -5, 0)

group C: group Bのレジメンに加えてチオテパ(30 mg/m2,day4)

各群とも3週サイクルで4コースの治療を受けた。

導入療法で効果があったか病勢に変化がみられなかった患者で,かつ適切に末梢血造血幹細胞採取ができ,持続的な医原性の副作用がみられなかった患者は2回目の無作為割付で2群に割り付けられた(group D, E)

group D: 全脳照射(WBRT。4〜10 MeV。1週間に5回照射。1回の照射線量は180 cGy。導入療法の最後のコースから4週間以内に開始)

group E: carmustineとチオテパで前処置を行う自家幹細胞移植(carmustine 400 mg/m2 day-6,チオテパ 5 mg/kg 12時間毎,day-5, -4)

どちらの無作為化も,置換ブロック法が用いられ,各階層でコンピュータが生成した無作為化リストが使用された。割付後のマスキングは行われなかった。

主要評価項目は導入療法群毎と,導入療法の奏功毎の2年無増悪生存率とした。解析はmodified intention-to-treatにより行われた。

結果

2010年2月19日から2014年8月27日までの間に5カ国53施設の227人が候補となった。227人の参加者のうち,219人が評価可能だった。2回目の無作為割付の対象となった122人のうち,118人がWBRTまたはASCTに割り付けられた(各群 59人)。WBRTとASCTはいずれも有効で,両群とも事前に定められた有効性の閾値(各群最初の52人のうち,2年後無増悪生存者が40人以上)を達成した。WBRTとASCTの間に2年無増悪生存率の有意な差はみられず,group D(WBRT)群が80%(95% CI 70-90),group E(ASCT)が69%(59-79),ハザード比は1.50 (95% CI 0.83-2.71; p=0.17)だった。どちらの地固め療法も,有害事象は許容可能だった。grade 4の非血液毒性は多くなかった一方,血液毒性は予想された通りASCTの方がWBRTより多かった。毒性による死は2例あり,いずれも感染症によるものでASCT群だった。

解釈

WBRTとASCTはいずれも,新たに診断された70歳以下のCNS原発リンパ腫患者において,大量メトトレキサートを含んだ化学免疫療法を行った後の地固め療法として実施可能でかつ有効だった。治療法を決定する際には,WBRT後の認知機能障害のリスクと影響について考慮されるべきである。

 

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R-CHOP、R-CVP、R-FMで治療された進行期濾胞性リンパ腫の長期予後

Long-Term Results of the FOLL05 Trial Comparing R-CVP Versus R-CHOP Versus R-FM for the Initial Treatment of Patients With Advanced-Stage Symptomatic Follicular Lymphoma

J Clin Oncol. 2017

PMID: 29095677, DOI: 10.1200/JCO.2017.74.1652

目的

FOLL05試験は、進行期の濾胞性リンパ腫(FL)に対する初回治療としてR-CVP (リツキシマブ + シクロフォスファミド + ビンクリスチン + プレドニゾロン)、R-CHOP (リツキシマブ + シクロフォスファミド + ドキソルビシン + ビンクリスチン + プレドニゾロン)、R-FM (リツキシマブ + フルダラビン + ミトキサントロン)の3レジメンを比較した試験である(リツキシマブの維持療法は無し)。以前の解析(観察期間中央値 34ヶ月)では、主要評価項目である3年治療成功率はR-CHOPとR-FMがR-CVPよりも優れており、毒性を考慮したリスクーベネフィット比ではR-CHOPがR-FMよりも優れていた。著者らは今回、観察期間が中央値で7年経過した時点でのpost hoc 解析の結果を報告する。

 

患者と方法

534人の参加者のうち、504人が評価可能だった。解析時点で、観察期間の中央値は84ヶ月(1〜119ヶ月)だった。

 

結果

8年時点での治療成功率と無増悪生存率はそれぞれ44%(95%信頼区間 39〜49%)と48%(43〜53%)だった。FLIPI2で調整した無増悪生存のハザード比は、R-CHOPがR-CVPに対して0.73(0.54〜0.98、P = 0.037)、R-FMはR-CVPに対して0.67(0.50〜0.91、P = 0.009)だった。8年全生存率(OS)は83%(79〜87%)で、治療レジメン間で有意な差はみられなかった。全体として、R-FMはR-CVPと比較してリンパ腫増悪に関係しない死亡のリスクが高かった。

 

結論

FOLL05試験の8年全生存率は83%で、免疫化学療法で治療された進行期FL患者の治療成績が良いことが確認された。3つのレジメンで全生存率の差はみられなかったが、活動性と毒性のプロフィールは異なっていた。最初にR-CVPで治療された患者はR-CHOPで治療された患者と比較して追加治療が必要になるリスクだけでなく、リンパ腫が増悪するリスクも高かった。

 

非ホジキンリンパ腫サバイバーにおける、治療開始時点の心血管リスク因子と、治療開始後に起こる心不全の関連

Preexisting Cardiovascular Risk and Subsequent Heart Failure Among Non-Hodgkin Lymphoma Survivors.

J Clin Oncol. 2017

PMID 28922087

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【目的】アントラサイクリンを使用した化学療法は非ホジキンリンパ腫(NHL)サバイバーの心不全と関連している。著者らは、化学療法前からあった心血管リスク因子の、NHLサバイバーの心不全リスクへの寄与を理解することを目的とした。

【方法】著者らは、2000年から2010年までの間にアグレッシブNHLと診断された成人患者群と、性別と年齢を調整した対照群を設定した。診断9か月後から2012年まで心不全を評価した。NHLサバイバーと対照群の間で心不全のリスクに差があるかどうかを評価するために、Cox回帰分析を行った。サバイバー群においてのみ、化学療法前からあった心血管リスク因子(高血圧、脂質異常症、糖尿病)と心血管疾患を確認した。化学療法前の心血管の状態とその後起こった心不全との関連をモデル化するために多変量Cox回帰分析を行った。

【結果】2,508人のNHLサバイバー群と7,399人の対照群が評価対象となり、サバイバー群では対照群と比較して心不全のリスクが42%高かった(hazard ratio [HR] 1.42; 95% CI, 1.07-1.88)。サバイバー群(診断時年齢中央値 62歳、男性 56%)において、115人がフォローアップ中に心不全と診断された(フォローアップ期間中央値 2.5年)。NHLと診断される前の時点で、39%が1つ以上の心血管リスクを持っていた。また、サバイバーの92%がアントラサイクリンを含んだレジメンで治療されていた。

多変量解析では、治療前に診断されていた心疾患が心不全のリスク増加と関連しており(HR 2.71; 95% CI, 1.15-6.36)、一方で血管疾患は心不全と関連していなかった(P > 0.05)。心血管リスク因子のあるサバイバーはリスク因子のないサバイバーと比較して心不全のリスクが高かった(1個 vs 0個: HR 1.63, 95% CI, 1.07-2.47。2個以上 vs 0個: HR 2.86, 95% CI, 1.56-5.23; joint P < 0.01)。

【結論】NHLサバイバーを対象とした大規模な(population-based)コホート研究において、化学療法開始前の心血管状態は心不全リスク増加と関連していた。心不全を回避するためには、治療開始前の心血管の状態を考慮に入れなければならない。

骨髄異形性症候群の同種移植後予後に影響する遺伝子変異

Prognostic Mutations in Myelodysplastic Syndrome after Stem-Cell Transplantation

N Engl J Med. 2017;376:536-547.

PMID: 28177873, DOI: 10.1056/NEJMoa1611604

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背景

遺伝子変異は骨髄異形性症候群(MDS)の病因であり、臨床病型と密接に関連している。そのため、遺伝子変異が同種造血幹細胞移植後の臨床的予後を予測する可能性がある。

方法

著者らは、2005年から2014年までの間にCenter for International Blood and Marrow Transplant Research Repositoryに登録された1,514例のMDS症例から移植前に得られたサンプルについて、変異解析を行った。変異と移植予後の関連について、全生存、再発、非再発死亡を評価した。

結果

TP53変異は19%にみられ、生存期間の短さと再発までの期間の短さと関連していた(P<0.001)。TP53変異のない40歳以上の症例の中で、RAS pathwayの変異は生存期間の短さと関連し(P=0.004)、これは再発リスクが高いためと考えられた。また、JAK2変異が存在する場合も生存期間が短く(P=0.001)、これは非再発死亡リスクが高いためと考えられた。TP53変異が予後に与える悪影響は、毒性を軽減した前処置(RIC)と骨髄破壊的前処置で類似していた。対照的に、RAS pathwayの変異が再発リスクに与える悪影響は、明らかにRICにおいてのみ認められた(P<0.001)。若年成人症例の4%がShwachman–Diamond症候群に関連したCBDS遺伝子の複合ヘテロ接合体変異とTP53変異を併せ持っており、予後が悪かった。p53の制御因子であるPPM1Dの変異は治療関連MDSにおいてprimary MDSよりも多く見られた(15% vs 3%, P<0.001)。

結論

遺伝子プロファイリングによって、同種造血幹細胞移植を受けた患者の分子的サブグループが予後の層別化や移植前処置レジメンの選択についての情報を与える可能性が示された。

大量化学療法の適応がない骨髄腫症例に対するベンダムスチン、ボルテゾミブ、デキサメタゾン併用レジメンの第2相試験

Phase II study of bendamustine, bortezomib and dexamethasone (BBD) in the first-line treatment of patients with multiple myeloma who are not candidates for high dose chemotherapy.

Br J Haematology 2017

PMID: 28169430, DOI: 10.1111/bjh.14536

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ベンダムスチン、ボルテゾミブ、デキサメタゾンの併用療法(BBD)を、多発性骨髄腫の1st line治療として評価した。オリジナルの治療レジメンはベンダムスチン 80 mg/m^2 day1,4、ボルテゾミブ 1.3 mg/m^2 day1,4,8,11、デキサメタゾン 40 mg day1,2,3,4を28日サイクルで最大8サイクルまで繰り返すというもので、中間解析において効果が認められたものの比較的毒性が強いとされた。レジメンは、ベンダムスチン 80 mg/m^2 day1,2、ボルテゾミブ 1.3 mg/m^2 day1,8,15、デキサメタゾン 20 mg day1,2,8,9,15,16を28日サイクルで最大8サイクルまで繰り返し、その後ボルテゾミブ 1.3 mg/m^2(静注)を2週間毎に投与する維持療法を行う、という内容に修正された。

59例が登録された。主要評価項目は完全奏功率(CR)と設定された。修正前の治療レジメンの実施サイクル数中央値は7 (range 1-8)、修正レジメンは8 (1-8) + 維持療法だった。

全奏功率は91%で、CRは9%だった。観察期間中央値は19.1ヶ月で、無増悪生存期間中央値は修正前レジメンで11.1ヶ月、修正レジメンで18.9ヶ月だった。grade 3/4の有害事象で最も多かったのは倦怠感と神経障害だった。

BBDレジメンはこのような患者集団において忍容性があり、有効である。治療強度を軽減しつつ治療期間を伸ばすことがより良い治療成績につながったと考えられた。