メモ帳

血液内科関連の論文について,主にアブストラクトの日本語訳を載せています.基本は自分用メモですので,ご利用の際はその点ご了承ください.

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中枢神経原発DLBCLの診断と管理に関するガイドライン

Guidelines for the diagnosis and management of primary central nervous system diffuse large B-cell lymphoma

Br J Haematol. 2019 Feb;184(3):348-363.

PMID: 30467845, doi: 10.1111/bjh.15661.

 

中枢神経原発リンパ腫(primary CNS lymphoma, PCNSL)の診断と治療に関するガイドラインです。対象は中枢神経(脳,脊髄,脳神経,眼,髄膜)原発のDLBCLで,二次性CNSリンパ腫(secondary CNS lymphoma),免疫不全関連リンパ腫,DLBCL以外の組織型は本ガイドラインの対象外です。

 

診断と画像検査 Diagnosis and imaging

1. PCNSLが疑われる患者については,遅れを最小限にするために早い段階で専門家とディスカッションを行うべきである。(1C)

 

2. PCNSLの確定診断には組織診または細胞診が必要である; MRIの所見のみでは不十分である。診断は,専門家が血液病理学的検討により確認するべきである。(1B)

 

3. 生検前に副腎皮質ステロイドを投与することは避けるべきである。(1A)

 a. 既にステロイドが投与されていて尚も造影される病変が残っている場合には,診断内容を改善するために,緊急生検の前にステロイドを中止するべきである。(1B)

 b. PCNSLを疑われていた病変がステロイドで消えた場合には,病変が再増大している場合に緊急の生検を行うため,短い間隔を置いてからMRI検査を再度行うべきである。(1B)

 

4. 組織診を行う場合のアプローチとして脳の定位生検が推奨される。不必要な外科的切除を避けるため,細胞診と凍結切片を用いた術中迅速診断が推奨される。(1B)

 

5. 眼内原発リンパ腫(primary intraocular lymphoma, PIOL)の診断を確定させるため,理想的には硝子体生検と,網膜下吸引subretinal aspirationまたは脈絡網膜生検を組み合わせるべきである。(1B)

 

6. 生検ができない状況では,MRIの特徴的な所見と臨床徴候に加えて(AND),マルチパラメータフローサイトメトリーと(and/or)PCRによるIGHV遺伝子再構成の検出により脳脊髄液または硝子体液中にクローナルなB細胞が多数存在することを示すことで,PCNSLの診断を支持し得る。(1B)

 

7. 治療前,治療効果の評価に用いる画像検査としては,造影MRI(diffusion seqenceを含む)が推奨される。専門のneuroradiologistがneuroaxis imaging(脳と全脊髄)をレビューするべきである。(1B)

 

8. 眼内病変を除外するため,全ての患者に細隙灯検査を含む綿密な眼科的評価を行うべきである。(1B)

 

9. 全身病変を除外するため,全ての患者に横断的画像診断cross-sectional imagingを行うべきである。(1A)

 a. FDG PET-CTが推奨される。PET-CTが実施できない場合には,頚部,胸部,腹部,骨盤の造影CTを行うべきである。(1B)

 b. 男性には精巣の超音波検査を行うべきである。(1B)

 

10. 診断が確定したPCNSLの症例は全て,MDT(multidisciplinary team)においてディスカッションされるべきである。患者は可能な限り速やかに,理想的には診断から14日以内に,PCNSLに関する複数領域の専門家が集まる施設において治療(definitive treatment)を受けるべきである。(1B)

 

中枢神経原発リンパ腫の治療 Treatment of primary CNS lymphoma

寛解導入療法 Remission induction

1. 化学療法の適格性は,実際の年齢よりも身体的な状態により決定されるべきである。(1A)

 

2. 可能であれば,随時臨床試験に参加するべきである。(1A)

 

3. 大量メトトレキサート(HD-MTX)を組み込んだレジメンに適応がある患者について:

 a. 強力な治療への適格性があれば,4サイクルのMATRix(HD-MTX,シタラビン,チオテパ,リツキシマブ)を提示する。(1A)

  i. 初診時にパフォーマンスステータスが損なわれている場合,並存疾患がある場合,過去にMATRixによる重大な毒性が生じた場合には減量を考慮するべきである。(2C)

  ii. G-CSFや日和見感染症予防を行うべきである。(2C)

  iii. 自家幹細胞移植を併用した大量化学療法(HDT-ASCT)を計画している患者においては,実施可能であれば2サイクル目の後に末梢血幹細胞(PBSC)採取を試みるべきである。(1B)

 b. 強力な化学療法が適応とならない場合,HD-MTX,リツキシマブ,経口アルキル化剤を用いた確立したレジメンを提示する(e.g. R-MP[リツキシマブ,メトトレキサート,プロカルバジン])。(1B)

 c. HD-MTXは少なくとも3 g/m2を2〜4時間かけて投与し,これを2〜3週間毎に4サイクル以上繰り返すべきである。(1B)

 d. リツキシマブは375 mg/m2を8サイクル投与する(MATRixレジメンでは1サイクルで2回投与する)。(1A)

 

4. HD-MTXの適応が無い患者については,以下のいずれか1つ,または2つ以上を組み合わせた治療を考慮する。(2C)

 a. 経口化学療法(テモゾロミドなど)。

 b. 全脳照射(WBRT; 1回線量1.8〜4 Gy,合計20〜30 Gy。パフォーマンスステータスに応,治療目的,生命予後に応じて調整する)と,眼病変がある場合には眼窩への照射。

 c. 副腎皮質ステロイド(デキサメタゾンがよく用いられる)。

 

5. 抗癌剤の髄腔内投与は,中枢神経の治療を意図した全身化学療法との併用は推奨しない(1A)が,全身治療の適応がない患者において軟膜病変の症状をコントロールする場合には考慮しても良い。(2C)

 

6. 治療効果の評価は,造影MRIで行うべきである。

 a. PBSC採取のタイミングを伝えるために,1サイクル終了時点で考慮する。(2C)

 b. HD-MTXベースの化学療法においては,2サイクル毎と,寛解導入療法終了時に実施する。(1B)

 

地固め療法 Consolidation treatment

1. 地固め療法は,導入療法後にリンパ腫が増悪していない患者全てで考慮するべきである。実施するかは並存症,パフォーマンスステータス,認知機能,患者の希望を踏まえて判断するべきである。(1B)

 

2. 適応のある患者全てで,大量チオテパをベースとしたASCT併用化学療法を地固め療法の1st lineとして考慮するべきである。(1B)

 a. HD-MTXベースの1st line化学療法を行なった後にstable disease以上の状態のCNS原発リンパ腫患者はASCT併用大量化学療法(HDT-ASCT)を考慮するべきである。(1B)

 b. CNS原発リンパ腫におけるHDT-ASCTの前処置として,BEAM(carmustine,エトポシド,シタラビン,メルファラン)を用いるべきではない。(1A)

 

3. 以下の場合には地固め全脳照射(WBRT) +/- ブーストを考慮するべきである

 a. 導入免疫化学療法後に残存病変があるが,HDT-ASCTが不適格な患者。(1B)

 b. チオテパベースのASCT後に残存病変がある患者。(1B)

 

4. 眼病変が並存している患者については,HDT-ASCTが不適格な場合,あるいはチオテパベースのASCT後に完全奏効(CR)が得られない場合には両眼窩への放射線治療も検討するべきである。(2B)

 

5. HD-MTXレジメンでCRが得られ,HDT-ASCTが不適格な患者については,地固めWBRTは議論の余地がある。

 a. 各患者毎に,無増悪生存を改善する可能性と,認知機能についての毒性リスクとを慎重に天秤に掛けるべきである。(1B)

 b. HD-MTXで寛解が得られた60歳以上の患者については,認知機能への毒性のリスクがより高いことを踏まえて,WBRTを省略するべきか,あるいはより低線量の地固めWBRTを考慮しても良い。(2B)

 

6. WBRTを行う場合,用量とスケジュールは年齢,並存症,導入療法に応じて推奨される。

 a. 36 Gyを20分割。(1B)

 b. 神経毒性のリスクが高い場合には23.4 Gy (1回線量1.8または2 Gy)に減量する。(2C)

 c. WBRTを行う時点で残存している造影病変に対しては1〜2 cmのマージンで9 Gyのブースト照射を考慮する(total 45 Gy/25分割)。

 d. 30 Gy照射した後は眼窩を遮蔽する(眼病変があった症例では36 Gy照射後)。

 

フォローアップ Follow-up

1. 地固め療法が終了してから1〜2ヶ月後に,造影MRIで治療効果を評価する。(1B)

 

2. 治療後最初の2年間,救援療法の適応がある患者については造影MRIでのフォローアップを検討しても良い。治療終了から2年間,3〜4ヶ月毎に検査を行うのが一案である。それ以上のMRIでの監視は,個々の症例毎に判断する。(2B)

 

眼内原発リンパ腫 Primary intraocular lymphoma (PIOL)

1. PIOLはHD-MTXをベースとした化学療法とリツキシマブを併用して治療する。適応のある患者に対しては,MATRixレジメンのような,エビデンスに基づいたPCNSLの導入プロトコルを用いることを検討する。(1C)

 

2. MTXの硝子体内投与(習熟した眼科医によって行う)は,高齢で全身化学療法の適応がない孤発性PIOL患者に対して考慮しても良い。

 

3. HD-MTXレジメンで全身化学療法を受ける患者に対する硝子体内治療の併用は,ルーチンには推奨されない。(2C)

 

4. 強力な全身化学療法が奏功したPIOL患者については,以下の地固め療法のオプションを検討する。

 a. 適応のある患者については,大量チオテパをベースとした化学療法とASCT。

 b. 両眼窩への放射線治療(最大36 Gyを1.8〜2 Gyに分割)。WBRT(23.4〜30 Gyを1.8〜2 Gyに分割)の同時併用も検討するが,認知機能への毒性のリスクを患者毎に慎重に天秤に掛けるべきである。(2B)

 

再発・難治性PCNSL Relapsed and refractory PCNSL

1. PCNSLの再発が疑われる患者は全て,地域のMDT会議で直ちに再検討する。最初に治療を行った血液-腫瘍チームに適切な情報提供を行う。(1C)

 

2. MRIの所見が非典型的な場合や,前回の治療から2年以上経過した後に新たな病変が見られた場合には,再生検が推奨される。強力な救援療法が計画されている場合には,特に推奨される。(2C)

 

3. PCNSLの再発が確定した患者は,さらに治療を行う計画がある場合には再ステージングを行う。1st lineの治療に抵抗性の場合,再ステージングは通常必要ではない。

 

4. 可能な時は随時,臨床試験への参加を提示する。

 

5. 臨床試験以外では,以下の項目を考慮した上で,可能性のある治療オプションを個別化して実施する。(1C)

 a. 身体的な健康状態,パフォーマンスステータス,認知機能

 b. これまでに行った治療と奏功期間

 c. 患者自身の選択

 

6. 強力な治療の適応がある患者の場合

 a. 治療抵抗性,あるいはMTXベースの免疫化学療法を行った後早期に再発した場合は特に,イホスファミドベースの免疫化学療法を検討する。(2B)

 b. HD-MTXベースの治療を行なって最初の寛解が得られてから2年を超えた後に再発した場合には,HD-MTXベースの免疫化学療法を検討する。(2B)

 

7. 救援化学療法後の地固め療法

 a. 過去にHDT-ASCTを行なっていない患者については,2回目以降の奏功がみられた際にチオテパベースのHDT-ASCTを検討する。

 b. HDT-ASCTの適応がないか,あるいは過去に行なったことがあり,かつ過去にWBRTを行なっていない患者については,WBRTを単独で行うか,あるいは救援化学療法後に行うことを検討する(23.4〜36 Gyを1.8〜2 Gyに分割)。

 

 8. 強力な治療に適応がない患者の場合

 a. 緩和的な治療を提示する。WBRT(23.4〜36 Gyを1.8〜2 Gyに分割),副腎皮質ステロイドと(and/or)経口テモゾロミドなど。(2C)

 b. ベストサポーティブケアを行い適切な場面で緩和ケアも取り入れる。(1B)

 

神経心理学的評価 neuropsychological assessments

1. PCNSL患者においては,長期のモニタリングで治療前後の認知機能とQOLに関するアウトカムを評価する。

2. PCNSLの治療を受けた患者は,治療の前後で最低でも認知ドメインcongnitive domains,処理速度,運動速度,実行機能,記憶を評価する。

 

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後天性血栓性血小板減少性紫斑病に対するCaplacizumabのプラセボ対照ランダム化比較試験

Caplacizumab Treatment for Acquired Thrombotic Thrombocytopenic Purpura.

N Engl J Med. 2019 Jan 24;380(4):335-346.

PMID: 30625070, DOI: 10.1056/NEJMoa1806311

背景

後天性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,von Willebrand因子を切断するプロテアーゼであるADAMTS13が免疫学的機序により欠乏する結果,von Willebrand因子の血小板や微小血栓への接着が制御できず,血小板減少,溶血性貧血,組織虚血に至る。Caplacizumabはヒト化抗von Willebrand因子抗体であり,2価の単一可変ドメイン免疫グロブリン断片で,von Willebrandマルチマーと血小板の相互作用を抑制する。

方法

今回の研究は二重盲検化比較試験であり,著者らはTTP患者145人をランダムに2群に割り付け,血漿交換中とその後30日間の期間にcaplacizumab(ローディングとして10 mgを経静脈的にボーラス投与,その後1日10 mgを皮下投与)またはプラセボのいずれかを投与した。プライマリアウトカムは血小板数が正常化(かつ5日以内に血漿交換を中止)するまでの期間とした。主要なセカンダリアウトカムはTTP関連死亡,TTP再発,または試験治療期間中の血小板血栓イベントの複合,試験期間中のTTP再発,治療抵抗性TTP,臓器傷害マーカーの正常化とした。

結果

血小板数が正常化するまでの期間はcaplacizumab群の方がプラセボ群よりも有意に短く(2.69日[95%信頼区間 1.89〜2.83] vs 2.88日[2.68〜3.56],P=0.01),caplacizumabを投与された患者は血小板数が正常化した割合がプラセボの1.55倍だった。複合イベントのいずれかがみられた患者の割合はcaplacizumab群の方がプラセボ群よりも74%低かった(12% vs 49%,P<0.001)。試験期間中にTTPが再発した患者の割合は,caplacizumab群の方が67%低かった(12% vs 38%,P<0.001)。治療抵抗性となった患者は,caplacizumabではおらず,プラセボ群で3人だった。caplacizumab群ではプラセボ群と比較して血漿交換の回数が少なく,入院期間が短かった。最も多かった有害事象は皮膚粘膜の出血で,caplacizumab群では65%,プラセボ群では48%で報告された。試験の治療期間中に,プラセボ群の3人が死亡した。治療期間が終わった後,caplacizumab群の1人が脳虚血で死亡した。

結論

TTP患者において,caplacizumabを使って治療することで血小板数が正常化するまでの期間が短縮された。また,プラセボと比較して治療期間中のTTP関連死亡・TTP再発・血栓塞栓イベントの頻度が低く,試験期間中のTTP再発率が低かった。

(Funded by Ablynx; HERCULES ClinicalTrials.gov number, NCT02553317)

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高齢の未治療CLL患者における,イブルチニブレジメンと免疫化学療法の比較

Ibrutinib Regimens versus Chemoimmunotherapy in Older Patients with Untreated CLL.

(N Engl J Med. 2018 Dec 27;379(26):2517-2528.)

PMID: 30501481, PMCID: PMC6325637 [Available on 2019-06-27]

DOI: 10.1056/NEJMoa1812836

 

背景

イブルチニブは2016年に未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療薬としてFDAから承認されたが,免疫化学療法との比較は行われていない。著者らは,イブルチニブ単剤またはリツキシマブとの併用の有効性を免疫化学療法と比較するため,第3相試験を実施した。

方法

65歳以上の未治療CLL患者をベンダムスチン+リツキシマブ,イブルチニブ,またはイブルチニブ+リツキシマブのいずれかでの治療にランダムに割り付けた。主要評価項目は無増悪生存とした。プロトコルで指定された有効性の基準を満たした後,The Alliance Data and Safety Monitoring Boardがデータをリリースすると決定した。

結果

183人がベンダムスチン+リツキシマブ,182人がイブルチニブ,182がイブルチニブ+リツキシマブでの治療にそれぞれ割り付けられた。無増悪生存期間の中央値が到達したのはベンダムスチン+リツキシマブ群のみだった。2年時点での無増悪生存率の推定値は,ベンダムスチン+リツキシマブ群で74%で,イブルチニブ単剤群(87%; CLL増悪または死亡に関するhazard ratio 0.39,95%信頼区間 0.26-0.58,P<0.001),イブルチニブ+リツキシマブ群(88%,0.39,0.25-0.59,P<0.001)の方が高かった。イブルチニブ+リツキシマブ群とイブルチニブ群の間で,無増悪生存に差はみられなかった(hazard ratio 1.00,95%信頼区間 0.62-1.62,P=0.49)。フォローアップ期間の中央値は38ヶ月で,全生存に関しては3群間で差がみられなかった。grade 3〜5の血液学的有害事象の頻度はベンダムスチン+リツキシマブ群(61%)の方がイブルチニブ群(41%)やイブルチニブ+リツキシマブ群(39%)よりも高く,grade 3〜5の非血液学的有害事象の頻度はベンダムスチン+リツキシマブ群(63%)の方がイブルチニブを含むレジメンよりも低かった(各群74%)。

結論

高齢の未治療CLL患者においては,イブルチニブによる治療の方がベンダムスチン+リツキシマブと比較して無増悪生存で優れていた。イブルチニブ単剤とイブルチニブ+リツキシマブの間で無増悪生存に関して有意な差はみられなかった。

(Funded by the National Cancer Institute and Pharmacyclics; ClinicalTrials.gov number, NCT01886872 .).

MYC再構成を伴う未治療アグレッシブB細胞リンパ腫患者に対する,用量調整EPOCH-Rの第2相試験

Dose-adjusted EPOCH-R (etoposide, prednisone, vincristine, cyclophosphamide, doxorubicin, and rituximab) in untreated aggressive diffuse large B-cell lymphoma with MYC rearrangement: a prospective, multicentre, single-arm phase 2 study.

(Lancet Haematol. 2018 Dec;5(12):e609-e617.)

PMID: 30501868, DOI: 10.1016/S2352-3026(18)30177-7

 

背景

MYC遺伝子の再構成はアグレッシブB細胞リンパ腫の約10%にみられ,このうち半数はBCL2遺伝子の再構成を伴っている。MYCの再構成がみられる患者は,BCL2またはBCL6の再構成の有無にかかわらず,MYCの再構成がみられない患者と比較して予後が悪いことがR-CHOPに関する多くの後ろ向き研究で示されており,より強力な治療によって治療成績が改善することが示唆されている。著者らは未治療の,MYC再構成を伴うアグレッシブB細胞リンパ腫患者を対象に,強力な点滴治療レジメンである用量調整EPOCH-R(dose-adjusted EPOCH-R,以下DA-EPOCH-R)の治療成績を見極めることを目的とした。

方法

未治療の,MYC再構成を伴うアグレッシブB細胞リンパ腫を対象とした,DA-EPOCH-Rの多施設参加,前向き第2相シングルアーム試験の最終解析結果を示す。DA-EPOCH-Rは中枢神経予防とセットで合計6サイクル実施するよう設定された。主要評価項目はむイベント生存と全生存とした。この試験はClinicalTrials.gov (NCT01092182)に登録されている。

結果

53人が登録された。年齢の中央値は61歳(range 29-80; IQR 50-70)で,43人(81%)がstage IIIまたはIV,26人(49%)がinternational prognostic index (IPI)でhigh-intermediateまたはhighに相当した。MYC再構成単独(single-hit)の患者が19人,BCL2またはBCL6の再構成も伴っていた(double-hit)患者が24人で,両群の患者背景はよく似ていた。

観察期間の中央値は55.6ヶ月(IQR 50.5-61.1)で,48ヶ月時点における無イベント生存率は71.0%(95% CI 56.5-81.4),48ヶ月全生存率は76.7%(62.6-86.1)だった。毒性については,grade 4の好中球減少が301サイクル中160サイクル(53%)でみられ,grade 4の血小板減少が40サイクル(13%),好中球減少を伴う発熱(全grade)が56サイクル(19%)でみられた。治療関連しは3例で,全例が感染症による死亡だった。

考察

今回の試験で,DA-EPOCH-RはMYC再構成を伴うアグレッシブB細胞リンパ腫患者に持続的な寛解をもたらし,これらの疾患の治療法として考慮すべきと考えられた。

 

FUNDING:
Cancer Trials Support Unit and Center for Cancer Research of the National Cancer Institute and Genentech.

 

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多発性骨髄腫に対するエロツズマブ,ポマリドミド,デキサメタゾンの併用療法

Elotuzumab plus Pomalidomide and Dexamethasone for Multiple Myeloma.

N Engl J Med. 2018 Nov 8;379(19):1811-1822

PMID: 30403938, doi: 10.1056/NEJMoa1805762.

 

背景

免疫賦活性モノクローナル抗体であるエロツズマブにレナリドミドとデキサメタゾンを加えたレジメンは,再発・難治性の多発性骨髄腫患者に有効だった。免疫調節薬であるポマリドミドとデキサメタゾンを併用したレジメンは,レナリドミドやプロテアソーム阻害剤に抵抗性の多発性骨髄腫患者に有効だった。

方法

再発・難治性でレナリドミドとプロテアソーム阻害剤に抵抗性の多発性骨髄腫患者を,エロツズマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(エロツズマブ群)またはポマリドミド+デキサメタゾンのみ(対照群)のいずれかの群にランダムに割り付けた。責任医師が評価した無増悪生存を主要評価項目とした。

結果

117人の患者がエロツズマブ群(60人)または対照群(57人)にランダムに割り付けられた。フォローアップ期間は最短で9.1ヶ月で,無増悪生存期間の中央値はエロツズマブ群で10.3ヶ月,対照群で4.7ヶ月だった。骨髄腫の増悪または死亡についての(エロツズマブ群の対照群と比較しての)ハザード比は,0.54(95%信頼区間[CI] 0.34〜0.86; P=0.008)だった。全奏効率はエロツズマブ群で53%,対照群で26%で,オッズ比は3.25(95% CI 1.49〜7.11)だった。grade 3または4の有害事象で最も多かったのは好中球減少(エロツズマブ群 13% vs. 対照群 27%),貧血(10% vs. 20%),高血糖(8% vs. 7%)だった。両群で65%の患者が感染症を合併した。投与時反応はエロツズマブ群の3人(5%)でみられた。

結論

レナリドミドとプロテアソーム阻害剤での治療が失敗した多発性骨髄腫患者において,エロツズマブ+ポマリドミド+デキサメタゾンで治療された患者はポマリドミド+デキサメタゾンだけで治療された患者と比較して骨髄腫の増悪リスクと死亡リスクが低かった。

(Funded by Bristol-Myers Squibb and AbbVie Biotherapeutics; ELOQUENT-3 ClinicalTrials.gov number, NCT02654132 .).

 

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同種造血幹細胞移植前処置の強度に関する第3相試験(強度減弱前処置 vs 骨髄破壊的前処置)

Reduced-intensity conditioning versus standard conditioning before allogeneic haemopoietic cell transplantation in patients with acute myeloid leukaemia in first complete remission: a prospective, open-label randomised phase 3 trial.

Lancet Oncol. 2012 Oct;13(10):1035-44. doi: 10.1016/S1470-2045(12)70349-2. 

 

背景

強度減弱前処置は,同種造血幹細胞移植後早期の毒性と死亡を最小化するために開発されてきた。しかし,これらのレジメンの有効性について,ランダム化試験での評価は行われていなかった。今回の前方視的,オープンラベル第3相試験において,著者らはフルダラビンをベースにした強度減弱前処置と標準的な前処置を,第1寛解期の急性骨髄性白血病患者を対象として比較した。

 

方法

18歳から60歳までの,中間リスクまたは高リスクの急性骨髄性白血病患者で,かつ第一寛解期にある患者を対象とした。HLAが9/10アレル以上合致した血縁または非血縁ドナーから移植可能であり,適切な腎臓,心臓,肺,神経の機能が保たれていることも適格条件とした。2004年11月15日から2009年12月31日までの間に,患者を強度減弱前処置(フルダラビン 150 mg/m2+TBI 2 Gy x 4)または標準的前処置(シクロフォスファミド 120 mg/kg + TBI 2Gy x 6)のいずれかにランダムに割り付けた(患者の年齢,細胞遺伝学的リスク,導入療法,ドナータイプについてコンピュータを用いた最小化法で調整し,1:1の比で割り付けた)。

全ての患者に,GVHD予防のためシクロスポリンとメトトレキサートを投与した。研究担当者と患者のいずれも,どちらの治療を行うかは知らされなかった。primary endpointは非再発死亡率とし,intention-to-treat populationで解析した。この研究はClinicalTrials.govにNCT00150878として登録されている。

 

結果

この研究は,患者の集まるペースが緩やかだったため,2009年12月31日に早期中止された。99人が強度減弱前処置,96人が標準的前処置にランダムに割り付けられた。非再発死亡率に差はみられなかった(3年累積 13%[95% CI 6〜21] vs 18%[10〜26]; HR 0.62 [95% CI 0.30〜1.31])。再発率(3年累積 28% [19〜38] vs 26% [17〜36]; HR 1.10 [0.63〜1.90]),無病生存率(3年累積 58% [49〜70] vs 56% [46〜67]; HR 0.85 [0.55〜1.32]),全生存率(3年累積 61% [50〜74] vs 58% [47〜70]; HR 0·77 [0·48〜1·25])に関しても,2群間で差がみられなかった。

grade 3〜4の口腔粘膜炎は,強度減弱前処置群で少なかった(50人 vs 73人); GVHDや,ビリルビン,クレアチニンの上昇といった他の副作用の頻度については,両群で差がみられなかった。

 

考察

強度減弱前処置は,標準的な前処置と比較して非再発死亡率に差がなく,生存率に影響することなく毒性を軽減するという結果に終わった。それゆえに,第1寛解期に移植を受ける60歳未満の急性骨髄性白血病患者において,優先的に使用される可能性がある。

 

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同種造血幹細胞移植における,強度減弱前処置と骨髄破壊的前処置の比較。長期フォローアップの結果。

Long-term efficacy of reduced-intensity versus myeloablative conditioning before allogeneic haemopoietic cell transplantation in patients with acute myeloid leukaemia in first complete remission: retrospective follow-up of an open-label, randomised phase 3 trial.

Lancet Haematol. 2018 Apr;5(4):e161-e169. doi: 10.1016/S2352-3026(18)30022-X.

 

背景

同種造血幹細胞移植(HCT)の前処置の強度がもたらす影響を調べるため,第1寛解期の骨髄性白血病患者を対象に,強度を減弱した前処置と骨髄破壊的前処置を比較する第3相試験を実施した。元々の試験はフォローアップ期間が短かっため,強度を減弱した前処置が骨髄破壊的前処置と比較して晩期再発のリスクが高まるか否かについては不明だった。この疑問に取り組むため,著者らはこの試験の10年間の後方視的フォローアップを行い,晩期再発に焦点を当てた。

 

方法

オリジナルのランダム化第3相試験は,18歳から60歳までの,中間リスクまたは高リスクに該当する急性骨髄性白血病患者のうち,適切な臓器機能が保たれ,HLAが9/10以上合致した同胞または非血縁ドナーから移植可能な患者を対象とした。

患者はランダムに1:1の割合で,フルダラビン 120 mg/m2+TBI 2 Gy x 4 (強度減弱前処置)またはシクロフォスファミド 120 mg/kg + TBI 2Gy x 6 (骨髄破壊的前処置)のいずれかのレジメンに割り付けられた。この研究のprimary efficacy endpoint,secondary efficacy endpointは既に論文化されている。

今回の後方視的長期フォローアップでは,各参加施設からのmedical reportと,医師,患者へのインタビューからデータを集めた。今回の解析におけるendpointは,累積再発率,全生存率,無病生存率,非再発死亡率とし,オリジナルの研究参加者全体についての解析と,HCT後12ヶ月時点で再発なく生存していた患者を対象としたランドマーク解析を行った。イベント発生率はintention-to-treat populationに基づいて計算し,Gray testで比較した。この試験はClinicalTrials.gov, number NCT00150878.に登録された。

 

結果

オリジナルの研究では,195人の患者がランダムに強度減弱前処置(n = 99)または骨髄破壊的前処置(n = 96)のいずれかに割り付けられた。今回の後方視的解析では,データは完全なフォローアップに近い形で収集できた(completeness index 99%)。生存患者のフォローアップ期間中央値は9.9年(IQR[四分位範囲] 8.5-11.4)で,研究を完遂できた集団における累積再発率は両群で一致していた(強度減弱前処置群 30% [95% CI 20〜39] vs 骨髄破壊的前処置 30% [21〜40]; Gray test p = 0.99)。再発までの期間の中央値は強度減弱前処置群で5.0ヶ月(IQR 3.0〜8.8)だったのに対して,骨髄破壊的前処置群では9.5ヶ月(4.5〜20.5)だった。10年時点での無病生存率は強度減弱前処置群で55%(45〜66),骨髄破壊的前処置群で43%(34〜55),ハザード比(HR)は0.76(0.51〜1.14; p = 0.19)だった。また,非再発死亡率は16%(8〜24)と26%(17〜36)で,subdistribution HRは0.60(0.32〜1.11; Gray test p = 0.10)だった。TBIに関連した長期毒性は同等で,二次発癌が強度減弱前処置94人中6人(6%)と骨髄破壊的前処置90人中5人(6%)でみられた(p = 1.00)。

 

考察

強度減弱前処置が骨髄破壊的前処置比べて晩期再発のリスクを増やすというエビデンスはない。オリジナルの研究において,強度減弱前処置群が早期死亡や毒性の低さと関連していたことを考慮すると,適度にTBIを減弱した強度減弱前処置は,60歳未満で第1寛解期に移植を受ける急性骨髄性白血病患者に対する好ましい前処置戦略である可能性がある。

 

FUNDING:
None.

 

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未治療の進行期濾胞性リンパ腫に対するリツキシマブとレナリドミドの併用療法

Rituximab plus Lenalidomide in Advanced Untreated Follicular Lymphoma.

N Engl J Med. 2018 Sep 6;379(10):934-947.

背景

リツキシマブと化学療法の併用は,治療歴が無い進行期の濾胞性リンパ腫に有効であることが示されている。それにもかかわらず,ほとんどの患者が再発してしまう。レナリドミドとリツキシマブの併用は低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫患者に対して有望な効果を示した。

方法

著者らは,多施設共同国際第3相試験を実施し,治療歴の無い濾胞性リンパ腫患者を対象に,リツキシマブとレナリドミドの併用療法の,リツキシマブと化学療法に対する優越性を評価した。患者は2つのレジメンのいずれかに無作為に割り付けられ,引き続きリツキシマブ単剤による維持療法を受けた。リツキシマブとレナリドミドによる治療はこの2剤で18サイクル行われ,引き続きリツキシマブによる維持療法が8週間毎に12サイクル(6サイクルの追加投与)行われた。リツキシマブと化学療法の併用治療は,3種類のリツキシマブ併用レジメンから参加研究者が選択したものを実施し,その後で引き続きリツキシマブ単剤による維持療法を8週間毎に12サイクル行った。プライマリーエンドポイントは120週時点での完全奏功(confirmedまたはunconfirmed)と無増悪生存とした。

結果

合計1,030人の患者が,リツキシマブ+レナリドミド(513人)またはリツキシマブ+化学療法(517人)のいずれかにランダムに割り付けられた。120週時点での完全奏効率は両群で差がみられなかった: リツキシマブ+レナリドミド群 48% (95%信頼区間[CI],44 - 53),リツキシマブ+化学療法群 53%(49 - 57) (P=0.13)。3年時点での無増悪生存率は77%(95% CI 72 - 80),78%(74 - 82)だった。有害事象のうち,リツキシマブ+化学療法群で頻度が高かったのはgrade 3または4の好中球減少(32% vs 50%)と全gradeの発熱性好中球減少症(2% vs 7%)で,リツキシマブ+レナリドミド群で頻度が高かったのはgrade 3または4の皮膚反応(7% vs 1%)だった。

結論

治療歴のない濾胞性リンパ腫患者において,リツキシマブとレナリドミドの併用は,リツキシマブと化学療法の併用と類似した効果を示した。安全性プロファイルは両群で違いがみられた。

(Funded by Celgene; RELEVANCE ClinicalTrials.gov numbers, NCT01476787 and NCT01650701 , and EudraCT number, 2011-002792-42 .).

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小児の急性ITPに対する免疫グロブリン静注と経過観察の比較試験

Intravenous immunoglobulin vs observation in childhood immune thrombocytopenia: a randomized controlled trial

(Blood. 2018;132:883-891)

PMID: 29945954, doi: 10.1182/blood-2018-02-830844

免疫性血小板減少症immune thrombocytopenia (ITP)と診断した小児の対応には,注意深い経過観察か,免疫調整療法immunomodulatory treatmentがある。観察研究の結果,免疫グロブリンを静注投与(IVIg)した小児では慢性ITPのリスクが低くなることが示唆されている。

今回の多施設共同試験では,新たにITPと診断された小児(生後3ヶ月から16歳まで)のうち,血小板数が2.0万/μLで,出血の程度が軽度から中等度までの患児をランダムに2群に割り付け,一方の群には0.8 g/kgの免疫グロブリンを静注で単回投与し,もう一方の群は慎重に経過観察した。プライマリアウトカムは慢性ITPへの移行とし,6ヶ月後以降も血小板数が15万/μLの状態を慢性ITPと定義した。

206人がIVIg群(n = 102)または慎重経過観察群(n = 104)に割り付けられた。慢性ITPはIVIg群の18.6%,経過観察群の28.9%でみられた(relative risk [RR], 0.64; 95% 信頼区間 [CI], 0.38-1.08)。12ヶ月時点で血小板数が10万/μL未満(現在の慢性ITPの定義)だったケースはIVIg群の10%,経過観察群の12%でみられた(RR, 0.83; 95% CI, 0.38-1.84)。3ヶ月以内の完全奏功率はIVIg群の方が有意に高かった。両群ともに,IgGのFc受容体IIbの遺伝子変異が早期の完全奏功と関連していた。グレード4または5の出血は経過観察群で9%,IVIg群で1%にみられた。

 

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