メモ帳

自分用のメモです。

初回化学療法が奏功した後histologic transformationを来した濾胞性リンパ腫症例の予後

Risk Factors and Outcomes for Patients With Follicular Lymphoma Who Had Histologic Transformation After Response to First-Line Immunochemotherapy in the PRIMA Trial.
J Clin Oncol. 2016 Jun 13. pii: JCO657163. [Epub ahead of print], PMID 27298402

 

目的

免疫化学療法が奏功した濾胞性リンパ腫 (follicular lymphoma, FL)患者を対象とした大規模な前向きコホート試験における、histologic transformation (HT)の予後を調べた。

患者と方法

PRIMA trialから無作為に割り当てられた1,018例を中央値で6年間にわたって観察したところ、463例で疾患の増悪がみられ、そのうち194例で組織学的な根拠があった。

結果

40例がHTとして矛盾せず、154例はtransformしていないFLだった。再燃までの期間は、それぞれ9.6ヶ月と22.8ヶ月だった(p=0.018)。経過観察期間の最初の1年間に実施された生検の37%がHTの58%に該当していた。診断時点でのperformance statusの変化、貧血、高LDH血症、B症状、histologic grade 3a、Follicular lymphoma International Prognostic Index高値、がHTのリスク因子と同定された。免疫化学療法やリツキシマブ維持療法に対する反応性の違い(完全奏功 vs 部分奏功)はHTのリスクに影響していなかった。救援療法の後、HTがみられた症例ではみられなかった症例と比較して完全奏効率が低く(50.3% vs 67.4%; p=0.03)、増悪率が高かった(28.2% vs 9.6%; p<0.001)。HT群の推定全生存期間は非HT群よりも短かった(中央値 3.8年 vs 6.4年、hazard ratio 3.9; 95% CI, 2.2-6.9)。自家幹細胞移植はHT群の予後を改善させたが(全生存期間中央値 未到達 vs 1.7年)、非HT群では改善させなかった。

結論

免疫化学療法が奏功したFLにおけるHTは早期のイベントであり、予後の悪さと関連していた。この予後の悪さを考えると、自家幹細胞移植を併用した強力な救援療法を実施した方が良いかもしれない。これらのデータから、FLの初回再燃時における生検の必要性が強調される。

再発濾胞性リンパ腫に対するレナリドマイド・リツキシマブ併用療法とレナリドマイド単独療法の比較試験(CALGB 50401 trial)

Randomized Trial of Lenalidomide Alone Versus Lenalidomide Plus Rituximab in Patients With Recurrent Follicular Lymphoma: CALGB 50401 (Alliance)

[JCO 2015;33:3635-3640]

目的 レナリドマイドとリツキシマブの併用(LR)は濾胞性リンパ腫(FL)に効果がある。この併用レジメンは、これまでに無作為化試験で評価されたことはない。

患者・方法 Cancer and Leukemia Group B (Alliance) 50401試験はリツキシマブ単独(375mg/m2 週1回投与を4週間)、レナリドマイド単独(1サイクル目は15mg/日 day1-21、day22-28は休薬。2〜12サイクル目は20mg/日 day1-21、day22-28は休薬)、リツキシマブ+レナリドマイド(LR)を比較した無作為化第2相試験である。ただしリツキシマブ単独群は症例集積不良(poor accrual)のため中止された。リツキシマブ投与歴のある再発濾胞性リンパ腫で、最後の投与から病勢増悪まで6ヶ月以上経過しているものが適格条件とされた。血栓症のリスクが高い患者では、アスピリンまたはヘパリンが推奨された。

結果 91例(レナリドマイド単独45例、LR 46例)が治療を受けた。年齢の中央値は63歳(34-89歳)で、58%がFLIPIのintermediateかhigh risk群に該当した。grade3/4の有害事象はレナリドマイド(L)群で58%、LR群で53%に発生し、grade4の有害事象は9%、11%でそれぞれみられた。grade3/4の有害事象には好中球減少(L群16% vs LR群20%)、疲労感(9% vs 13%)、血栓症(16% vs 4%, p=0.157)などがみられた。L群では36%、LR群では63で12サイクルの治療が完遂された。L単独は治療失敗と関連しており、22%が有害事象のために治療を中止した。両群とも、80%で治療強度が過剰だった。前奏効率は53%(CR 20%)、76%(CR 39%)だった(p=0.029)。中央値2.5年のフォローアップで、病勢増悪までの期間の中央値はL群が1.1年、LR群が2年だった(p=0.0023)。

結論 再発濾胞性リンパ腫において、LRはL単独よりも高い効果を示し毒性に差はみられなかった。

 

同種造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルス活性化は、急性骨髄性白血病再発リスクの低下と関連している。

Cytomegalovirus Reactivation after Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation is Associated with a Reduced Risk of Relapse in Patients with Acute Myeloid Leukemia Who Survived to Day 100 after Transplantation: The Japan Society for Hematopoietic Cell Transplantation Transplantation-related Complication Working Group.

(Biol Blood Marrow Transplant. 2015 Nov;21(11):2008-16.)

 

サイトメガロウイルス cytomegalovirus (CMV)感染症は同種造血幹細胞移植 allogeneic hematopoietic cell transplantation (allo-HSCT)後に合併する主要な感染症の一つである。近年、CMVの再活性化が急性骨髄性白血病 acute myeloid leukemia (AML)患者における再発リスクの低下と関連していると報告された。今回の研究の目的は、大規模な患者コホートを対象に、早期のCMV再活性化がallo-HSCT後の疾患再発の頻度に与える影響を評価することである。
著者らは、日本造血細胞移植学会の移植登録一元管理プログラムに登録されたデータベースを後方視的に調査した。2000年から2009年までの間にHLAが一致した血縁または非血縁ドナーから初めてのallo-HSCTを受けた患者で、かつ移植後100日まで再発なく生存した患者を対象とした。疾患の内訳は、AMLが1836人、急性リンパ性白血病 acute lymphoblastic leukemia (ALL)が911人、慢性骨髄性白血病 chronic myeloid leukemia (CML)が223人、骨髄異形成症候群 myelodysplastic syndrome (MDS)が569人だった。臍帯血移植を受けた患者は含まれていない。
生着時点からpp65アンチゲネミアを用いてモニターし、先制攻撃的治療preemptive therapyの開始をCMV再活性化と定義した。再発、非再発、全死亡に関するリスク因子の評価にはコックス比例ハザードモデルを用いた。CMV再活性化と急性または慢性GVHDは時間依存性の共変量として評価した。
CMV再活性化はAML患者において再発率低下と関連していた(20.3% vs 26.4%, P = 0.027)が、ALL、CML、MDS患者では関連がみられなかった。AML患者1836人の中で、CMV再活性化は795人(43.3%)でみられ、allo-HSCTから再活性化までの日数の中央値は42日だった。また、436人(23.7%)でAMLが再発し、再発までの日数の中央値は221日だった。grade II〜IVの急性GVHDは630人(34.3%)でみられた。その他のリスク因子も考慮した多変量解析で、3つの因子がAML再発リスクの低下と有意に関連しており、1つの因子が再発リスクの増加と関連していた。CMV再活性化(ハザード比[HR] 0.77; 95%信頼区間[CI] 0.59〜0.99)、非血縁ドナーからの移植(0.59; 0.42〜0.84)、慢性GVHD(0.77; 0.60〜0.99)が再発リスクの低下と関連しており、より進行した病状が再発リスクの増加と関連していた(HR 1.99; 95% CI 1.56〜2.52)。しかし、CMV再活性化は非再発死亡(HR 1.60; 95% CI 1.18〜2.17)、全死亡(1.37; 1.11〜1.69)の増加と関連していた。
原疾患の再発に対するCMV再活性化の有益な効果はAML患者で観察されたが、他の血液腫瘍患者では確認されなかった。しかし、この有益性は非再発死亡の増加により打ち消された。機序については不明であるが、CMV再活性化に対する免疫の活性化がこの関連において重要な役割を果たしている。それゆえに、ワクチンやT細胞の輸注など、免疫を増強するような治療が、非再発死亡率を最小化しつつCMV再活性化の効果を利用するのに役立つかもしれない。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

血清ビタミンD低値は濾胞性リンパ腫の予後不良因子かもしれない

Low Serum Vitamin D Levels Are Associated With Inferior Survival in Follicular Lymphoma: A Prospective Evaluation in SWOG and LYSA Studies

(JCO 2015;33:1482-1490)

目的 近年、ビタミンD高値がリンパ腫の予後を改善する可能性が報告されている。著者らは治療開始前のビタミンD濃度が濾胞性リンパ腫(FL)の予後に与える影響を評価した。

 

患者・方法 一つ目のコホートはSWOGコホートで、1998年から2008年までの間にSWOGの臨床試験(S9800、S9911、S0016)に参加した未治療のFL症例を対象とした。これらの臨床試験では、CHOPと抗CD20抗体(リツキシマブ、またはiodine-131 tositumomab)を併用した治療が行われた。もう一つのコホートはLYSAコホートで、2004年から2007年までの間にLYSA PRIMA試験に登録された未治療のFL患者が対象となった。これはリツキシマブを併用した化学療法の試験で、無作為にリツキシマブ維持療法群と無治療観察群への割付が行われた。ゴールドスタンダードの液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法を用いて、25-hydroxyvitamin Dを測定した。測定には、治療前に保存しておいた血清を使用した。主要評価項目は無増悪生存率(PFS)とした。

結果 SWOGコホートにおける観察期間の中央値は5.4年で、ビタミンD欠乏群(<20 ng/mL、コホート全体の15%)と比較した調整PFSと全生存率のハザード比は、1.97 (95%CI, 1.10-3.53)と4.16 (1.66-10.44)だった。LYSAコホートにおける観察期間の中央値は6.6年で、調整PFSと全生存率はビタミンD欠乏群(<10 ng/mL、コホート全体の25%)と比較してそれぞれ1.50 (0.93-2.42)と1.92 (0.72-5.13)だった。

結論 LYSAコホートでは統計学的有意差がみられなかったが、ビタミンD低値とFLの予後の関連が2つの独立したコホートで矛盾なく推定されたことにより、、血清ビタミンDがFLの生存率に関連する初めての調整可能な因子である可能性が示唆された。このようなセッティングでビタミン補充に効果があるかどうかを決定するためには、さらなる研究が必要である。

 

表在静脈血栓症患者における深部静脈・動脈血栓症リスクの検討

Risk of venous and arterial thrombotic events in patients diagnosed with superficial vein thrombosis: a nationwide cohort study

(Blood 2015;125:229-235)

近年、表在静脈血栓症(superficial vein thrombosis; SVT)は重篤な合併症であるかもしれないことが明らかとなってきた。しかし、深部静脈あるいは動脈血栓症が続発するリスクの大きさについては明らかでなかった。著者らはこの点について、SVTがルーチンに抗凝固薬で治療されていなかった時期を対象としたpopulation-based studyを行った。

デンマークの全ての病院をカバーしているDanish National Registry of Patientsを用いて、1980年から2012年までに初めてSVTと診断された患者10973例を同定した。年齢、性別、暦年の一致した515067人からなる対照コホートがデンマークの一般人口から選ばれた。深部静脈血栓塞栓症、急性心筋梗塞、脳梗塞、死亡をoutcomeとした。

観察期間の中央値は7年で、深部静脈血栓塞栓症の頻度は18.0/1000人・年(95% CI, 17.2-18.9)だった。最初の3ヶ月が最もリスクが高かった(3.4%; 95% CI, 3.0-3.7)。一般人口と比較すると、この期間のhazard ratioは71.4 (95% CI, 60.2-84.7)で、その後は減少し続けSVT発症から5年後には5.1(4.6-5.5)だった。急性心筋梗塞、脳梗塞、死亡のhazard ratioはそれぞれ1.2 (1.1-1.3)、1.3 (1.2-1.4)、1.3 (1.2-1.3)で、SVT発症後早期が最も高かった。これらのデータはSVTが予後に重大な影響を与えることを示しており、抗凝固療法に関する臨床判断の基礎を形作るかもしれない。

多発性骨髄腫の同種造血幹細胞移植後に生じる二次性MGUSについての検討

Secondary monoclonal gammopathy of undetermined significance after allogeneic stem cell transplantation in multiple myeloma

(Haematologica 2014;99:1846-1853)

多発性骨髄腫の経過において、初発時と異なるM蛋白のバンド:二次性のMGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)が生じるかもしれない。この単施設後ろ向き解析で、著者らは同種造血幹細胞移植後の二次性MGUS(移植後MGUS)の発生と 臨床的な関連について記述した。この研究には138例が登録され、延べ139回の同種造血細胞移植が実施された(39.6%がupfrontで、 60.4%が再発後に実施された)。

67例(48.2%)で二次性MGUSがみられ、発生までの期間中央値は6.9ヶ月だった。二次性MGUSの発生率は、同種移植後にvery good partial response以上の奏功がみられた症例の方が、partial response以下の症例よりも有意に高かった(54.8% vs 26.5%; p=0.005)。また、upfrontに移植を実施した場合の方が再発時に実施した場合よりも発生率が高く、血縁者ドナーから移植された症例の方が非血縁者ドナーの場合よりも 二次性MGUSの発生率が高かったが、T細胞除去を行った症例では発生率が低かった。移植後MGUSが発生した症例では無増悪生存期間、全生存期間が有意に優れていた(無増悪生存期間中央値 37.5ヶ月 vs 6.3ヶ月, p<0.001; 全生存期間中央値 115.3ヶ月 vs 31.0ヶ月; p=0.004)。

臨床医は、この現象が持つ良性の性質について知っておくべきであり、二次性MGUSは疾患の再発や増悪と混同されてはならない。

IPIスコアと胸水・心嚢液の有無が縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の予後に影響している可能性がある

Prognostic significance of pleural or pericardial effusion and the implication of optimal treatment in primary mediastinal large B-cell lymphoma: a multicenter retrospective study in Japan

(Haematologica 2014;99:1817-1825)

近年、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(mediastinal large B-cell lymphoma; PMLBCL)の予後は改善されてきた。しかし、放射線治療を含めて最適な治療戦略は未だ明らかではない。著者らは日本において新規にPMLBCLと診断された345例の臨床成績を後ろ向きに解析した。

観察期間の中央値は48ヶ月で、4年時点の全生存率はR-CHOP(n=187)、CHOP(n=44)、DA-EPOCH-R(n=9)、第2あるいは第3世代化学療法(n=45)、自家幹細胞移植併用化学療法(n=57)で治療された群でそれぞれ90%、67%、100%、91%、92%だった。R-CHOPで治療された群についてみると、IPIスコアが高いことと、胸水あるいは心嚢液貯留があることが、地固放射線療法を行わずR-CHOPのみで治療された症例の全生存率について予後不良因子であることが同定された(IPI: HR 4.23, 95% CI 1.48-12.13, p=0.007; 胸水・心嚢液: HR 4.93, 95% CI 1.37-17.69, p=0.015)。放射線治療を行わずR-CHOPのみで治療された症例をIPIスコアと胸水・心嚢液の有無を組み合わせて層別化すると、IPIスコアが低く胸水・心嚢液貯留がない症例が約半数で、治癒可能群と同定された(4年全生存率95%)。DA-EPOCH-Rレジメンはこれらの予後不良因子を克服するかもしれない。

IPIスコアと胸水・心嚢液貯留の存在というシンプルな予後予測因子がPMLBCLを層別化し、治療法選択の助けとなる可能性がある。

成人バーキットリンパ腫に対する短期大量化学療法の有効性:多施設参加前向き試験

Improved outcome of adult Burkitt lymphoma/leukemia with rituximab and chemotherapy: report of a large prospective multicenter trial

(Blood 2014;124:3870-3879)

この最大の前向き多施設参加臨床試験は成人のバーキットリンパ腫/白血病を対象として、抗CD20抗体rituximabを併用した短期間の強力な化学療法の有効性と実行可能性を改善することを目的とした。 2002年から2011年までに、98施設で16歳から85歳までの363例が登録された。治療は65日サイクルの多剤併用療法(大量methotrexate、大量cytosine arabinoside、cyclophosphamide、etoposide、ifosphamide、cortixosteroidd)と3剤の髄腔内投与から構成されている。55歳を超える患者は減量された治療を受けた。rituximabは各サイクルの前と、維持療法として2回の合計8回投与された。完全奏功率は88%(319/363)、5年全生存率は80%、5年無生存率は71%で、若年者(16歳〜25歳)、成人(26歳〜55歳)、高齢者(56歳〜)で有意な差がみられた(5年全生存率90% vs 84% vs 62%)。治療完遂率は86%だった。予後に影響した重要な因子はIPI(0-2 vs 3-5; p = 0.0005)、年齢調整IPI(0-1 vs 2-3; p = 0.0001)、性別(男性 vs 女性; p = 0.004)だった。多数の施設が参加した前向き試験における高い治癒率は、高齢患者においても、高い有効性と実行可能性を示した。

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この臨床試験で用いられた治療プロトコール(GMALL B-ALL/NHL 2002 protocol)については2013年にイタリアのグループがバーキットリンパ腫/白血病を対象とした試験の成績を報告しています。

Haematologica 2013;98:1718-1725, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23753030

当ブログでの該当記事 →


バーキットリンパ腫/白血病に対する短期高強度化学療法の治療成績 - メモ帳

rituximab曝露時間を延長することで予後不良因子を多く持つ高齢者DLBCLの治療成績が改善するかもしれない

Optimization of Rituximab for the Treatment of Diffuse Large B-Cell Lymphoma (II): Extended Rituximab Exposure Time in the SMARTE-R-CHOP-14 Trial of the German High-Grade Non-Hodgkin Lymphoma Study Group

(JCO 2014;32:4127-4133)

【目的】高齢DLBCLにおいて、rituximabへの曝露時間を延長した際の薬物動態、毒性、効果について検討する。

【患者・方法】SMARTE-R-CHOP-14試験において、rituximab 375mg/m^2を14日毎のCHOP(6コース)と併用して投与した。ただしrituximabはday -4、0、10、29、57、99、155、239に投与した。薬物動態と治療効果はRICOVER-60試験においてR-CHOP x 6 (14日毎) + rituximab x 8 (14日毎)で治療された群と比較した。

【結果】評価可能な189例において、CR/CRu達成率は85%、IPIが1または2の予後良好群90例においては90%、IPIが3〜5の予後不良群99例では81%だった。また、3年無イベント生存率はそれぞれ71%、75%、67%、3年全生存率は84%、88%、80%で、男女間に差はみられなかった。事前に計画されたRICOVER-60試験306例(予後良好群183例、予後不良群123例)との比較では、予後良好群については差はみられなかった。しかし予後不良群ではSMARTE-R-CHOP-14における長時間曝露が良好な3年無イベント生存率(67% vs 54%)、3年全生存率(80% vs 67%)と関連していた。

【結論】R-CHOP-14 x 6 + rituximab x 8 (14日毎)との比較で、rituximab曝露時間を延長することで高齢DLBCLの治療成績が予後不良群で改善し、毒性の増加はみられなかった。著者らの知る限りにおいて、SMARTE-R-CHOP-14で得られた結果は今日までに報告された高齢者DLBCLの治療成績の中で最も良かった。rituximab曝露時間を延長して治療された予後不良群については、その治療成績はR-CHOP-14 x 6 + 2-week rituximabで治療された同様のコホートの成績よりも優れており、かつ毒性は同等だった。2つの治療スケジュールを無作為化して比較する試験が是認される。

メトホルミンはMGUSから骨髄腫への移行リスクを軽減するかもしれない

Association between metformin use and progression of monoclonal gammopathy of undetermined significance to multiple myeloma in US veterans with diabetes mellitus: a population-based retrospective cohort study

(Lancet Haematol 2015;2:e30-36)

背景 多発性骨髄腫は米国において最も多い血液悪性腫瘍の一つであり、一定の割合でmonoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS)から移行する。著者らはメトホルミン使用とMGUSから骨髄腫への移行の関連について評価した。

方法 米国退役軍人保健局データベースに登録され1999年10月1日から2009年12月31日までの間にMGUSと診断された症例を対象として、後ろ向きコホート研究を実施した。MGUSと診断される前に少なくとも1つ以上糖尿病のICD-9コードがつけられ1つ以上の糖尿病治療を受けた症例(年齢>18歳)を対象とした。著者らは症例レベルで臨床データを調べ、診断を確認し、ベースラインのM蛋白量とMGUSの種類についてのデータを抽出した。糖尿病があり、糖尿病の診断から骨髄腫への進展、死亡、追跡打ち切りまでの間に4年間メトホルミンを投与された症例をメトホルミン投与症例と定義した。主要評価項目はMGUSの診断から骨髄腫へ移行するまでの期間とした。カプランマイヤー曲線とCoxモデルを用いてメトホルミン投与とMGUS増悪の関連について解析した。

結果 3287例のデータが得られ、最終的な解析コホートには2003例(61%)が登録された。追跡期間の中央値は69ヶ月(IQR 49-96)で、463例(23%)がメトホルミン使用症例、1540例(77%)がメトホルミン非使用症例だった。メトホルミン使用症例のうち13例(3%)、非使用症例のうち74例(5%)がそれぞれ骨髄腫に移行した。調整後、メトホルミン使用は骨髄腫への移行のリスク軽減と関連していた(hazard ratio 0.47, 95% CI 0.25-0.87)。

解釈 MGUSと診断された糖尿病患者について、メトホルミンの4年以上の使用はMGUSから骨髄腫への移行リスクを減じた。この関連が偶然なのか、この結果を糖尿病のない人に外挿できるのかを明確にするため、前向き試験が必要である。