メモ帳

自分用のメモです。

後天性血栓性血小板減少性紫斑病に対するCaplacizumabのプラセボ対照ランダム化比較試験

Caplacizumab Treatment for Acquired Thrombotic Thrombocytopenic Purpura.

N Engl J Med. 2019 Jan 24;380(4):335-346.

PMID: 30625070, DOI: 10.1056/NEJMoa1806311

背景

後天性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,von Willebrand因子を切断するプロテアーゼであるADAMTS13が免疫学的機序により欠乏する結果,von Willebrand因子の血小板や微小血栓への接着が制御できず,血小板減少,溶血性貧血,組織虚血に至る。Caplacizumabはヒト化抗von Willebrand因子抗体であり,2価の単一可変ドメイン免疫グロブリン断片で,von Willebrandマルチマーと血小板の相互作用を抑制する。

方法

今回の研究は二重盲検化比較試験であり,著者らはTTP患者145人をランダムに2群に割り付け,血漿交換中とその後30日間の期間にcaplacizumab(ローディングとして10 mgを経静脈的にボーラス投与,その後1日10 mgを皮下投与)またはプラセボのいずれかを投与した。プライマリアウトカムは血小板数が正常化(かつ5日以内に血漿交換を中止)するまでの期間とした。主要なセカンダリアウトカムはTTP関連死亡,TTP再発,または試験治療期間中の血小板血栓イベントの複合,試験期間中のTTP再発,治療抵抗性TTP,臓器傷害マーカーの正常化とした。

結果

血小板数が正常化するまでの期間はcaplacizumab群の方がプラセボ群よりも有意に短く(2.69日[95%信頼区間 1.89〜2.83] vs 2.88日[2.68〜3.56],P=0.01),caplacizumabを投与された患者は血小板数が正常化した割合がプラセボの1.55倍だった。複合イベントのいずれかがみられた患者の割合はcaplacizumab群の方がプラセボ群よりも74%低かった(12% vs 49%,P<0.001)。試験期間中にTTPが再発した患者の割合は,caplacizumab群の方が67%低かった(12% vs 38%,P<0.001)。治療抵抗性となった患者は,caplacizumabではおらず,プラセボ群で3人だった。caplacizumab群ではプラセボ群と比較して血漿交換の回数が少なく,入院期間が短かった。最も多かった有害事象は皮膚粘膜の出血で,caplacizumab群では65%,プラセボ群では48%で報告された。試験の治療期間中に,プラセボ群の3人が死亡した。治療期間が終わった後,caplacizumab群の1人が脳虚血で死亡した。

結論

TTP患者において,caplacizumabを使って治療することで血小板数が正常化するまでの期間が短縮された。また,プラセボと比較して治療期間中のTTP関連死亡・TTP再発・血栓塞栓イベントの頻度が低く,試験期間中のTTP再発率が低かった。

(Funded by Ablynx; HERCULES ClinicalTrials.gov number, NCT02553317)

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高齢の未治療CLL患者における,イブルチニブレジメンと免疫化学療法の比較

Ibrutinib Regimens versus Chemoimmunotherapy in Older Patients with Untreated CLL.

(N Engl J Med. 2018 Dec 27;379(26):2517-2528.)

PMID: 30501481, PMCID: PMC6325637 [Available on 2019-06-27]

DOI: 10.1056/NEJMoa1812836

 

背景

イブルチニブは2016年に未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療薬としてFDAから承認されたが,免疫化学療法との比較は行われていない。著者らは,イブルチニブ単剤またはリツキシマブとの併用の有効性を免疫化学療法と比較するため,第3相試験を実施した。

方法

65歳以上の未治療CLL患者をベンダムスチン+リツキシマブ,イブルチニブ,またはイブルチニブ+リツキシマブのいずれかでの治療にランダムに割り付けた。主要評価項目は無増悪生存とした。プロトコルで指定された有効性の基準を満たした後,The Alliance Data and Safety Monitoring Boardがデータをリリースすると決定した。

結果

183人がベンダムスチン+リツキシマブ,182人がイブルチニブ,182がイブルチニブ+リツキシマブでの治療にそれぞれ割り付けられた。無増悪生存期間の中央値が到達したのはベンダムスチン+リツキシマブ群のみだった。2年時点での無増悪生存率の推定値は,ベンダムスチン+リツキシマブ群で74%で,イブルチニブ単剤群(87%; CLL増悪または死亡に関するhazard ratio 0.39,95%信頼区間 0.26-0.58,P<0.001),イブルチニブ+リツキシマブ群(88%,0.39,0.25-0.59,P<0.001)の方が高かった。イブルチニブ+リツキシマブ群とイブルチニブ群の間で,無増悪生存に差はみられなかった(hazard ratio 1.00,95%信頼区間 0.62-1.62,P=0.49)。フォローアップ期間の中央値は38ヶ月で,全生存に関しては3群間で差がみられなかった。grade 3〜5の血液学的有害事象の頻度はベンダムスチン+リツキシマブ群(61%)の方がイブルチニブ群(41%)やイブルチニブ+リツキシマブ群(39%)よりも高く,grade 3〜5の非血液学的有害事象の頻度はベンダムスチン+リツキシマブ群(63%)の方がイブルチニブを含むレジメンよりも低かった(各群74%)。

結論

高齢の未治療CLL患者においては,イブルチニブによる治療の方がベンダムスチン+リツキシマブと比較して無増悪生存で優れていた。イブルチニブ単剤とイブルチニブ+リツキシマブの間で無増悪生存に関して有意な差はみられなかった。

(Funded by the National Cancer Institute and Pharmacyclics; ClinicalTrials.gov number, NCT01886872 .).

MYC再構成を伴う未治療アグレッシブB細胞リンパ腫患者に対する,用量調整EPOCH-Rの第2相試験

Dose-adjusted EPOCH-R (etoposide, prednisone, vincristine, cyclophosphamide, doxorubicin, and rituximab) in untreated aggressive diffuse large B-cell lymphoma with MYC rearrangement: a prospective, multicentre, single-arm phase 2 study.

(Lancet Haematol. 2018 Dec;5(12):e609-e617.)

PMID: 30501868, DOI: 10.1016/S2352-3026(18)30177-7

 

背景

MYC遺伝子の再構成はアグレッシブB細胞リンパ腫の約10%にみられ,このうち半数はBCL2遺伝子の再構成を伴っている。MYCの再構成がみられる患者は,BCL2またはBCL6の再構成の有無にかかわらず,MYCの再構成がみられない患者と比較して予後が悪いことがR-CHOPに関する多くの後ろ向き研究で示されており,より強力な治療によって治療成績が改善することが示唆されている。著者らは未治療の,MYC再構成を伴うアグレッシブB細胞リンパ腫患者を対象に,強力な点滴治療レジメンである用量調整EPOCH-R(dose-adjusted EPOCH-R,以下DA-EPOCH-R)の治療成績を見極めることを目的とした。

方法

未治療の,MYC再構成を伴うアグレッシブB細胞リンパ腫を対象とした,DA-EPOCH-Rの多施設参加,前向き第2相シングルアーム試験の最終解析結果を示す。DA-EPOCH-Rは中枢神経予防とセットで合計6サイクル実施するよう設定された。主要評価項目はむイベント生存と全生存とした。この試験はClinicalTrials.gov (NCT01092182)に登録されている。

結果

53人が登録された。年齢の中央値は61歳(range 29-80; IQR 50-70)で,43人(81%)がstage IIIまたはIV,26人(49%)がinternational prognostic index (IPI)でhigh-intermediateまたはhighに相当した。MYC再構成単独(single-hit)の患者が19人,BCL2またはBCL6の再構成も伴っていた(double-hit)患者が24人で,両群の患者背景はよく似ていた。

観察期間の中央値は55.6ヶ月(IQR 50.5-61.1)で,48ヶ月時点における無イベント生存率は71.0%(95% CI 56.5-81.4),48ヶ月全生存率は76.7%(62.6-86.1)だった。毒性については,grade 4の好中球減少が301サイクル中160サイクル(53%)でみられ,grade 4の血小板減少が40サイクル(13%),好中球減少を伴う発熱(全grade)が56サイクル(19%)でみられた。治療関連しは3例で,全例が感染症による死亡だった。

考察

今回の試験で,DA-EPOCH-RはMYC再構成を伴うアグレッシブB細胞リンパ腫患者に持続的な寛解をもたらし,これらの疾患の治療法として考慮すべきと考えられた。

 

FUNDING:
Cancer Trials Support Unit and Center for Cancer Research of the National Cancer Institute and Genentech.

 

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多発性骨髄腫に対するエロツズマブ,ポマリドミド,デキサメタゾンの併用療法

Elotuzumab plus Pomalidomide and Dexamethasone for Multiple Myeloma.

N Engl J Med. 2018 Nov 8;379(19):1811-1822

PMID: 30403938, doi: 10.1056/NEJMoa1805762.

 

背景

免疫賦活性モノクローナル抗体であるエロツズマブにレナリドミドとデキサメタゾンを加えたレジメンは,再発・難治性の多発性骨髄腫患者に有効だった。免疫調節薬であるポマリドミドとデキサメタゾンを併用したレジメンは,レナリドミドやプロテアソーム阻害剤に抵抗性の多発性骨髄腫患者に有効だった。

方法

再発・難治性でレナリドミドとプロテアソーム阻害剤に抵抗性の多発性骨髄腫患者を,エロツズマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(エロツズマブ群)またはポマリドミド+デキサメタゾンのみ(対照群)のいずれかの群にランダムに割り付けた。責任医師が評価した無増悪生存を主要評価項目とした。

結果

117人の患者がエロツズマブ群(60人)または対照群(57人)にランダムに割り付けられた。フォローアップ期間は最短で9.1ヶ月で,無増悪生存期間の中央値はエロツズマブ群で10.3ヶ月,対照群で4.7ヶ月だった。骨髄腫の増悪または死亡についての(エロツズマブ群の対照群と比較しての)ハザード比は,0.54(95%信頼区間[CI] 0.34〜0.86; P=0.008)だった。全奏効率はエロツズマブ群で53%,対照群で26%で,オッズ比は3.25(95% CI 1.49〜7.11)だった。grade 3または4の有害事象で最も多かったのは好中球減少(エロツズマブ群 13% vs. 対照群 27%),貧血(10% vs. 20%),高血糖(8% vs. 7%)だった。両群で65%の患者が感染症を合併した。投与時反応はエロツズマブ群の3人(5%)でみられた。

結論

レナリドミドとプロテアソーム阻害剤での治療が失敗した多発性骨髄腫患者において,エロツズマブ+ポマリドミド+デキサメタゾンで治療された患者はポマリドミド+デキサメタゾンだけで治療された患者と比較して骨髄腫の増悪リスクと死亡リスクが低かった。

(Funded by Bristol-Myers Squibb and AbbVie Biotherapeutics; ELOQUENT-3 ClinicalTrials.gov number, NCT02654132 .).

 

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同種造血幹細胞移植前処置の強度に関する第3相試験(強度減弱前処置 vs 骨髄破壊的前処置)

Reduced-intensity conditioning versus standard conditioning before allogeneic haemopoietic cell transplantation in patients with acute myeloid leukaemia in first complete remission: a prospective, open-label randomised phase 3 trial.

Lancet Oncol. 2012 Oct;13(10):1035-44. doi: 10.1016/S1470-2045(12)70349-2. 

 

背景

強度減弱前処置は,同種造血幹細胞移植後早期の毒性と死亡を最小化するために開発されてきた。しかし,これらのレジメンの有効性について,ランダム化試験での評価は行われていなかった。今回の前方視的,オープンラベル第3相試験において,著者らはフルダラビンをベースにした強度減弱前処置と標準的な前処置を,第1寛解期の急性骨髄性白血病患者を対象として比較した。

 

方法

18歳から60歳までの,中間リスクまたは高リスクの急性骨髄性白血病患者で,かつ第一寛解期にある患者を対象とした。HLAが9/10アレル以上合致した血縁または非血縁ドナーから移植可能であり,適切な腎臓,心臓,肺,神経の機能が保たれていることも適格条件とした。2004年11月15日から2009年12月31日までの間に,患者を強度減弱前処置(フルダラビン 150 mg/m2+TBI 2 Gy x 4)または標準的前処置(シクロフォスファミド 120 mg/kg + TBI 2Gy x 6)のいずれかにランダムに割り付けた(患者の年齢,細胞遺伝学的リスク,導入療法,ドナータイプについてコンピュータを用いた最小化法で調整し,1:1の比で割り付けた)。

全ての患者に,GVHD予防のためシクロスポリンとメトトレキサートを投与した。研究担当者と患者のいずれも,どちらの治療を行うかは知らされなかった。primary endpointは非再発死亡率とし,intention-to-treat populationで解析した。この研究はClinicalTrials.govにNCT00150878として登録されている。

 

結果

この研究は,患者の集まるペースが緩やかだったため,2009年12月31日に早期中止された。99人が強度減弱前処置,96人が標準的前処置にランダムに割り付けられた。非再発死亡率に差はみられなかった(3年累積 13%[95% CI 6〜21] vs 18%[10〜26]; HR 0.62 [95% CI 0.30〜1.31])。再発率(3年累積 28% [19〜38] vs 26% [17〜36]; HR 1.10 [0.63〜1.90]),無病生存率(3年累積 58% [49〜70] vs 56% [46〜67]; HR 0.85 [0.55〜1.32]),全生存率(3年累積 61% [50〜74] vs 58% [47〜70]; HR 0·77 [0·48〜1·25])に関しても,2群間で差がみられなかった。

grade 3〜4の口腔粘膜炎は,強度減弱前処置群で少なかった(50人 vs 73人); GVHDや,ビリルビン,クレアチニンの上昇といった他の副作用の頻度については,両群で差がみられなかった。

 

考察

強度減弱前処置は,標準的な前処置と比較して非再発死亡率に差がなく,生存率に影響することなく毒性を軽減するという結果に終わった。それゆえに,第1寛解期に移植を受ける60歳未満の急性骨髄性白血病患者において,優先的に使用される可能性がある。

 

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同種造血幹細胞移植における,強度減弱前処置と骨髄破壊的前処置の比較。長期フォローアップの結果。

Long-term efficacy of reduced-intensity versus myeloablative conditioning before allogeneic haemopoietic cell transplantation in patients with acute myeloid leukaemia in first complete remission: retrospective follow-up of an open-label, randomised phase 3 trial.

Lancet Haematol. 2018 Apr;5(4):e161-e169. doi: 10.1016/S2352-3026(18)30022-X.

 

背景

同種造血幹細胞移植(HCT)の前処置の強度がもたらす影響を調べるため,第1寛解期の骨髄性白血病患者を対象に,強度を減弱した前処置と骨髄破壊的前処置を比較する第3相試験を実施した。元々の試験はフォローアップ期間が短かっため,強度を減弱した前処置が骨髄破壊的前処置と比較して晩期再発のリスクが高まるか否かについては不明だった。この疑問に取り組むため,著者らはこの試験の10年間の後方視的フォローアップを行い,晩期再発に焦点を当てた。

 

方法

オリジナルのランダム化第3相試験は,18歳から60歳までの,中間リスクまたは高リスクに該当する急性骨髄性白血病患者のうち,適切な臓器機能が保たれ,HLAが9/10以上合致した同胞または非血縁ドナーから移植可能な患者を対象とした。

患者はランダムに1:1の割合で,フルダラビン 120 mg/m2+TBI 2 Gy x 4 (強度減弱前処置)またはシクロフォスファミド 120 mg/kg + TBI 2Gy x 6 (骨髄破壊的前処置)のいずれかのレジメンに割り付けられた。この研究のprimary efficacy endpoint,secondary efficacy endpointは既に論文化されている。

今回の後方視的長期フォローアップでは,各参加施設からのmedical reportと,医師,患者へのインタビューからデータを集めた。今回の解析におけるendpointは,累積再発率,全生存率,無病生存率,非再発死亡率とし,オリジナルの研究参加者全体についての解析と,HCT後12ヶ月時点で再発なく生存していた患者を対象としたランドマーク解析を行った。イベント発生率はintention-to-treat populationに基づいて計算し,Gray testで比較した。この試験はClinicalTrials.gov, number NCT00150878.に登録された。

 

結果

オリジナルの研究では,195人の患者がランダムに強度減弱前処置(n = 99)または骨髄破壊的前処置(n = 96)のいずれかに割り付けられた。今回の後方視的解析では,データは完全なフォローアップに近い形で収集できた(completeness index 99%)。生存患者のフォローアップ期間中央値は9.9年(IQR[四分位範囲] 8.5-11.4)で,研究を完遂できた集団における累積再発率は両群で一致していた(強度減弱前処置群 30% [95% CI 20〜39] vs 骨髄破壊的前処置 30% [21〜40]; Gray test p = 0.99)。再発までの期間の中央値は強度減弱前処置群で5.0ヶ月(IQR 3.0〜8.8)だったのに対して,骨髄破壊的前処置群では9.5ヶ月(4.5〜20.5)だった。10年時点での無病生存率は強度減弱前処置群で55%(45〜66),骨髄破壊的前処置群で43%(34〜55),ハザード比(HR)は0.76(0.51〜1.14; p = 0.19)だった。また,非再発死亡率は16%(8〜24)と26%(17〜36)で,subdistribution HRは0.60(0.32〜1.11; Gray test p = 0.10)だった。TBIに関連した長期毒性は同等で,二次発癌が強度減弱前処置94人中6人(6%)と骨髄破壊的前処置90人中5人(6%)でみられた(p = 1.00)。

 

考察

強度減弱前処置が骨髄破壊的前処置比べて晩期再発のリスクを増やすというエビデンスはない。オリジナルの研究において,強度減弱前処置群が早期死亡や毒性の低さと関連していたことを考慮すると,適度にTBIを減弱した強度減弱前処置は,60歳未満で第1寛解期に移植を受ける急性骨髄性白血病患者に対する好ましい前処置戦略である可能性がある。

 

FUNDING:
None.

 

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未治療の進行期濾胞性リンパ腫に対するリツキシマブとレナリドミドの併用療法

Rituximab plus Lenalidomide in Advanced Untreated Follicular Lymphoma.

N Engl J Med. 2018 Sep 6;379(10):934-947.

背景

リツキシマブと化学療法の併用は,治療歴が無い進行期の濾胞性リンパ腫に有効であることが示されている。それにもかかわらず,ほとんどの患者が再発してしまう。レナリドミドとリツキシマブの併用は低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫患者に対して有望な効果を示した。

方法

著者らは,多施設共同国際第3相試験を実施し,治療歴の無い濾胞性リンパ腫患者を対象に,リツキシマブとレナリドミドの併用療法の,リツキシマブと化学療法に対する優越性を評価した。患者は2つのレジメンのいずれかに無作為に割り付けられ,引き続きリツキシマブ単剤による維持療法を受けた。リツキシマブとレナリドミドによる治療はこの2剤で18サイクル行われ,引き続きリツキシマブによる維持療法が8週間毎に12サイクル(6サイクルの追加投与)行われた。リツキシマブと化学療法の併用治療は,3種類のリツキシマブ併用レジメンから参加研究者が選択したものを実施し,その後で引き続きリツキシマブ単剤による維持療法を8週間毎に12サイクル行った。プライマリーエンドポイントは120週時点での完全奏功(confirmedまたはunconfirmed)と無増悪生存とした。

結果

合計1,030人の患者が,リツキシマブ+レナリドミド(513人)またはリツキシマブ+化学療法(517人)のいずれかにランダムに割り付けられた。120週時点での完全奏効率は両群で差がみられなかった: リツキシマブ+レナリドミド群 48% (95%信頼区間[CI],44 - 53),リツキシマブ+化学療法群 53%(49 - 57) (P=0.13)。3年時点での無増悪生存率は77%(95% CI 72 - 80),78%(74 - 82)だった。有害事象のうち,リツキシマブ+化学療法群で頻度が高かったのはgrade 3または4の好中球減少(32% vs 50%)と全gradeの発熱性好中球減少症(2% vs 7%)で,リツキシマブ+レナリドミド群で頻度が高かったのはgrade 3または4の皮膚反応(7% vs 1%)だった。

結論

治療歴のない濾胞性リンパ腫患者において,リツキシマブとレナリドミドの併用は,リツキシマブと化学療法の併用と類似した効果を示した。安全性プロファイルは両群で違いがみられた。

(Funded by Celgene; RELEVANCE ClinicalTrials.gov numbers, NCT01476787 and NCT01650701 , and EudraCT number, 2011-002792-42 .).

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小児の急性ITPに対する免疫グロブリン静注と経過観察の比較試験

Intravenous immunoglobulin vs observation in childhood immune thrombocytopenia: a randomized controlled trial

(Blood. 2018;132:883-891)

PMID: 29945954, doi: 10.1182/blood-2018-02-830844

免疫性血小板減少症immune thrombocytopenia (ITP)と診断した小児の対応には,注意深い経過観察か,免疫調整療法immunomodulatory treatmentがある。観察研究の結果,免疫グロブリンを静注投与(IVIg)した小児では慢性ITPのリスクが低くなることが示唆されている。

今回の多施設共同試験では,新たにITPと診断された小児(生後3ヶ月から16歳まで)のうち,血小板数が2.0万/μLで,出血の程度が軽度から中等度までの患児をランダムに2群に割り付け,一方の群には0.8 g/kgの免疫グロブリンを静注で単回投与し,もう一方の群は慎重に経過観察した。プライマリアウトカムは慢性ITPへの移行とし,6ヶ月後以降も血小板数が15万/μLの状態を慢性ITPと定義した。

206人がIVIg群(n = 102)または慎重経過観察群(n = 104)に割り付けられた。慢性ITPはIVIg群の18.6%,経過観察群の28.9%でみられた(relative risk [RR], 0.64; 95% 信頼区間 [CI], 0.38-1.08)。12ヶ月時点で血小板数が10万/μL未満(現在の慢性ITPの定義)だったケースはIVIg群の10%,経過観察群の12%でみられた(RR, 0.83; 95% CI, 0.38-1.84)。3ヶ月以内の完全奏功率はIVIg群の方が有意に高かった。両群ともに,IgGのFc受容体IIbの遺伝子変異が早期の完全奏功と関連していた。グレード4または5の出血は経過観察群で9%,IVIg群で1%にみられた。

 

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リツキシマブと濾胞性リンパ腫の形質転換リスクとの関係

Rituximab and the risk of transformation of follicular lymphoma: a retrospective pooled analysis.

(Lancet Haematol. 2018 Aug;5(8):e359-e367.)

PMID: 30078408 DOI: 10.1016/S2352-3026(18)30090-5

 

背景

濾胞性リンパ腫からアグレッシブリンパ腫への形質転換は,患者の予後に重大な影響を及ぼす深刻なイベントである。Aristotle studyの目的は,リツキシマブが形質転換とその予後に及ぼす影響を評価することである。

方法

ヨーロッパの11の共同グループや施設が今回の研究にデータを提供した。1997年1月2日から2013年12月20日までの間に濾胞性リンパ腫(grade 1, 2, 3a)と診断された18歳以上の患者を適格とした。first lineの治療後に起きた最初のイベントが生検によるアグレッシブリンパ腫との診断だった場合を,形質転換と定義した。主要評価項目は形質転換の累積ハザードと転換後の生存とした。

結果

濾胞性リンパ腫患者10,001人について情報が利用可能であり,このうち8,116人が解析可能だった。509件の形質転換が報告された。追跡期間の中央値は87ヶ月(range 1–221; 2.5–97.5th percentile 5–160)で,形質転換の10年間累積ハザードは7.7% (95% CI 6.9–8.5)だった。リツキシマブを投与された患者における10年間累積ハザードは5.2% (95% CI 4.5–6.2)で,投与されていない患者では8.7% (7.2–10.6),ハザード比は0.73(95% CI 0.58–0.90; p=0.004)だった。また,導入療法でのみリツキシマブを投与された患者では5.9%(95% CI 5.0–7.0),導入療法と維持療法でリツキシマブを投与された患者では3.6%(95% CI 2.3–5.5),ハザード比は0.55(95% CI 0.37–0.81; p=0.003)だった。この結果は多変量解析でも確認された(P=0.016)。形質転換した509人中287人の死亡が記録されており,形質転換後の10年生存率は32%(95%CI 26-38)だった。形質転換後の生存に関して,リツキシマブを投与されなかった患者,導入療法でのみ投与された患者(HR 0.94, 95% CI 0.69–1.28; p=0.70),導入療法と維持療法で投与された患者(0.96, 0.58–1.61; p=0.88)の間に差はみられなかった。

考察

リツキシマブを使うことで,最初のイベントとしての形質転換のリスクを減らせる可能性がある。今回の結果は,現在リツキシマブを使っている患者に対して,リツキシマブ導入前と比較して形質転換のリスクが低くなっていることを伝える必要があるということを支持する。

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PETの結果に基づいたアグレッシブ非ホジキンリンパ腫の治療に関する第3相試験

Positron Emission Tomography–Guided Therapy of Aggressive Non-Hodgkin Lymphomas (PETAL): A Multicenter, Randomized Phase III Trial

PMID: 29750632, DOI: 10.1200/JCO.2017.76.8093

目的

[18F]fluorodeoxyglucoseをトレーサーに用いたinterim positron emission tomography (PET)は,アグレッシブ非ホジキンリンパ腫患者の治療結果を予測できる可能性がある。著者らは,PETがCHOPで治療される患者の治療方針をガイドできるかどうかを評価した。

患者と方法

新たにCD20陽性リンパ腫と診断され,R-CHOPを2サイクル受けた患者にPETを行い,ΔSUVmax法で評価した。PET陽性患者は,6サイクルのR-CHOPを追加する群または強力なバーキットリンパ腫プロトコールを6ブロック受ける群のいずれかにランダムに割り付けられた。PET陰性のCD20陽性リンパ腫患者は,R-CHOPを4サイクル追加する群またはR-CHOPを4サイクル追加しさらにリツキシマブを2回追加投与する群のいずれかにランダムに割り付けられるか割り当てられた。主要評価項目は無イベント生存で,ログランク検定で評価した。

結果

治療を受けた患者862人のうち,interim PETが陽性の患者は108人(12.5%),陰性の患者は754人(87.5%)で,無イベント生存と全生存に統計学的有意差があった。PET陽性患者のうち,52人はR-CHOP群に,56人はバーキットプロトコール群に無作為に割り付けられ,2年時点での無イベント生存率はそれぞれ42.0% (95% CI, 28.2% to 55.2%)と31.6% (95% CI, 19.3% to 44.6%),ハザード比は1.501 (95% CI, 0.896 to 2.514); P = .1229だった。バーキットプロトコール群では毒性が有意に多かった。PET陰性患者754人のうち,255人がランダムに割り付けられた(R-CHOP群に129人,R-CHOPとリツキシマブ追加群に126人)。無イベント生存率は76.4% (95% CI, 68.0% to 82.8%)と73.5% (95% CI, 64.8% to 80.4%)で,ハザード比は1.048 (95% CI, 0.684 to 1.606); P = .8305だった。PETによる予後予測は,International Prognostic Indexと独立していた。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫における結果は,全体の結果と類似していた。

結論

interim PETはR-CHOPで治療されたアグレッシブリンパ腫患者の予後を予測していた。PETに基づいた治療強化は結果を改善しなかった。

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